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April 15, 2010

筒井康隆をみんなで描く

 今の子どもたちについてはよくわかんないけど、かつての少年少女たちが必ず読んでいたのが、星新一。そしてちょっとヒネた少年少女たちが必ず読んでいたのが、筒井康隆、だったんじゃないかな。

 1995年にいろんなマンガ家が筒井作品をマンガ化する、という企画本が刊行されました。これは個人的にヒット。作家側にも読者側にもなじみ深い作品が多くて、楽しい企画でした。

●『筒井漫画涜本』(1995年実業之日本社、951円+税、amazon

筒井漫画涜本

 で、同じ企画で15年ぶりの続編が刊行されました。

●『筒井漫画涜本ふたたび』(2010年実業之日本社、1600円+税、amazon

筒井漫画涜本ふたたび

 えっとこういうのはですね、まず、どのマンガ家を選んで描かせているのかという意外な人選を楽しむ。次に作品のデキを楽しむ、わけです。

 かつての1995年版に描いてたのは、内田春菊、相原コージ、南伸坊、喜国雅彦、蛭子能収、清水ミチコ、まつざきあけみ、しりあがり寿、けらえいこ、吾妻ひでお、矢萩貴子、ふくやまけいこ、山浦章、三条友美、とり・みき、加藤礼次朗、いしいひさいち。

 なんつっても三条友美が登場してたのが衝撃でした(作品は「亭主調理法」)。びっくしりしたのがとり・みき「万延元年のラグビー」。筒井作品を使ってマンガ史を早送りしてみせるというとんでもないものでした。

 2010年版に登場したのは以下のかたがた。いがらしみきお、大地丙太郎、折原みと、高橋葉介、菊池直恵、竹本健治、明智抄、Moo.念平、田亀源五郎、伊藤伸平、鈴木みそ、とり・みき、雷門獅篭、荻原玲二、畑中純、みずしな孝之。

 この中では、『鉄子の旅』の菊池直恵が描く「熊の木本線」や、田亀源五郎の「恋とは何でしょう」(えー、男どうしの愛の話)が、まんまのキャスティングで楽しい。
 
 1995年版では筒井作品の破壊と暴力のエスカレーションを描いたマンガが多かったのですが、本書2010年版ではそっち系は少なくて、詩情性や奇妙な味をもった作品が多くなってます。

 なかでも筒井作品と相性が良かったのが、いがらしみきお「北極王」と畑中純「遠い座敷」。とくに前者はその叙情性が絶品。原作を読んでいなかったので、ちょっとぼうぜんとしてしまいました。後者は原作がそうとうに怖いのですが、マンガのほうはコワイというより『まんだら屋の良太』みたいな畑中ワールドに引き寄せて描いてて、これがなかなか。

 そして、再度登場しているのがとり・みき「わが良き狼(ウルフ)」。かつての西部劇ヒーローが帰郷してくるという、わたし大好きな話なんですよ。原作には書かれてない、ヒーローが若いときの活躍シーンを、かつてドタバタギャグ中心だった時代の「漫画映画」=カートゥーン・タッチで描いてます。こういうカートゥーンはすでに失われたものですから、ノスタルジーが二乗されてるわけですな。

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Comments

きゃいん!!
またもど真ん中ストライク!!!

そーですか、1995年版の続編。
「ちょっとヒネた少年」だった私が、これを読まずにおれようか。

Posted by: トロ~ロ | April 17, 2010 01:24 AM

昔親しんだ筒井作品の文庫本が、いま調べてみるとことごとく品切れなのに驚かされます。
現代のちょっとヒネた少年少女たちはいったい何を読んでいるのでしょうか。
それよりなにより出版社はいったい何をしているのだ!(笑)

Posted by: かくた | April 19, 2010 07:21 PM

「わが良き狼」ですが、とり・みきが自身のブログで執筆の契機について触れています。
http://www.torimiki.com/2010/06/blog-post_05.html
そーか、アヴェリーか。
読んだほういいかな。

Posted by: かくた | June 26, 2010 12:08 AM

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