あなたを守りたい『相羽奈美の犬』
昨年の夏に発売になってたのを買いのがしてて、最近読んだ作品。
●松田洋子『相羽奈美の犬』1巻(2009年ぶんか社、1200円+税、amazon)
なんつーかもう、著者はいじけた人間を描かせたら日本一。『薫の秘話』も『まほおつかいミミッチ』も主人公がいじけてましたが、本作はさらにいじけかたが突き抜けてます。
主人公は両親に見放されたニートの青年。いじけた性格で、しかもそれを自虐的に受け入れています。彼は街で見かけた美少女を好きになりますが、だからといって話がしたいとか恋人になりたいとか思ってるわけではない。彼女をただただ見守るために、正しくストーカーしているうちに、自動車事故で死んでしまう。
ところが、ある犬の霊に導かれ、主人公は犬として生まれ変わることになります。美少女に飼われ、さずかった魔法を使い悪人たちから彼女を守る!
というようなイキオイのよい話ではなく、犬になっても主人公はいじけまくってます。魔法持ってるくせに。ちょっとやなことがあるとすぐ逃げるし。いじけ界の巨人であります。
ヒロインに対抗する悪人たちが、これがまたしょぼい。ヒロインをいじめる高校の同級生(♀)。横恋慕する教育実習生(♂)。愛犬を愛せないオバサン。子どもをだまして生活するホームレス(♂)。
毎回、小悪党たちが犬の魔法で成敗されるというお話がくりかえされるのですが、意外なほど読後感がいい。なぜかといいますと、悪人たちも主人公に成敗されることで救われているからです。袋小路にはいってしまいどうしようもなくなった彼らの人生をすっぱりと(マンガ的に)解決してくれる。
イタイ登場人物たちによる自虐系ギャグが詰め込まれたご近所ホラー。おもしろいなあ。
読みにくいタイトルですが、「あいわなみのいぬ」と読みます。「アイワナビーの犬」にひっかけてあるのかな?
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Comments
いやー、漫棚通信さんほどの教養人にそんなことを言われても……。
「洋楽ファンには有名」と書くべきでした。
ところで『相羽奈美の犬』、第2巻で完結したのですが、作者のTwitterによりますと、これは「電子貸本」だけでしか読めないそうです。
http://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/4889/
唐沢なをきの『電脳なをさん Ver.1.0』もあっという間に品切れで増刷される気配がありませんし、ちょっとマイナー系の単行本出版は本当に厳しい状況のようです……。
Posted by: すたたん | September 29, 2010 06:00 PM
なるほどー。「I wanna be your dog」という曲は初めて聞きました。こういうところで教養がないのがバレてしまいますね。
Posted by: 漫棚通信 | April 26, 2010 09:53 PM
タイトルの由来ですが、作者のブログで種明かしされていました。
http://matsuda39.exblog.jp/9508163/
「I wanna be your dog」のもじりだそうです。
このフレーズ、元祖パンクのストゥージズの曲名としても有名です。
元ストゥージズのイギー・ポップもよく歌ってます。
試聴はYouTubeでどうぞ。
Posted by: すたたん | April 26, 2010 12:34 AM