オタで地方再生『限界集落温泉』
創作は時代を映す鏡。創作物を見ればその時代の空気、匂い、というものがわかるはずです。
世間では、不況で貧困で少子化で地方の疲弊でと、良い話をあんまり聞きませんが、こういうテーマを作品の背景としてじゃなく、正面からとりあげるマンガも出てきました。
●鈴木みそ『限界集落(ギリギリ)温泉』1巻(2010年エンターブレイン、660円+税、amazon)
ルポルタージュマンガの名手が挑んだ新境地! と大きくあおっておきましょう。
限界集落とは人口の50%が65歳以上の高齢者になった集落で、そこでは「共同体の機能維持が限界に達している状態」となっているそうです。
お話の舞台は伊豆の山奥。廃業し立ち退きを迫られている温泉旅館に住む父(作家志望のダメ人間)と小学生の息子。そこにやってきたのが東京から逃げてホームレスになっているゲームプロデューサー(ウソつきのダメ人間)と、トウのたった自殺志願のネットアイドル(もちろんダメ人間)。彼らが出会ったとき、限界集落の温泉旅館再生の一大プロジェクトが始まる!
疲弊した地方再生に、ネットとオタクを利用しようというアイデアにまずぶっとびました。ホラ吹きゲームプロデューサーが出すいろんなアイデアが現実化されていくところなどわくわくします。
このプロデューサーのキャラクターが抜群にいい。「ウソで飯くってたんだ」と自負する男。口八丁手八丁で能力もあるのに、プレッシャーに弱くすぐに胸や胃を痛くしてしまう。憎めないんだなあ。
なんつってもこの男が物語の本筋にからんできたとき、そのバックに舞い落ちてくるのが天使の羽根なんですから、期待するでしょ。
1巻の終わりのモノローグは、
このあとに起こる奇跡を
このときのぼくはまだ知らなかった
というもので、いや超強力なヒキ。次巻を刮目して待て!
(今回は作中人物ふうにちょっと勢いよく書いてみましたが、やっぱむずかしいわ)
Comments
>限界集落とは人口の50%が65歳以上の高齢者になった集落で、そこでは「共同体の機能維持が限界に達している状態」となっているそうです
なんてこった、まちなかだけど、うちの町内会、とっくに限界集落だ~~。いやはや。もう解散かなぁ。
Posted by: トロ~ロ | March 09, 2010 09:08 AM