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January 04, 2010

『バクマン。』サイコーの病名は何だろうか

 あけましておめでとうございます。

 さて新年最初に買ってきたマンガは、小畑健/大場つぐみ『バクマン。』6巻(2010年集英社、400円+税、amazon)です。

バクマン。 6 (ジャンプコミックス)

 前巻の発売から二か月。週刊連載は続きが出るのが早いですね。

【以下ネタバレします】

 この巻ではマンガ家と編集者の対立などが描かれてて、現実と(ちょっとだけ)リンクしてるような展開をおもしろく読みました。ちゃぶ台返しにならないのがジャンプクオリティなんでしょうけど。

 ただし大きく気になるところがあって、どうしてものりきれない部分が。

 このマンガ、主人公たちのまんが道につぎつぎと障害が立ちはだかるのですが、今回の敵は「病気」。そしてそれを乗りこえるのが「根性」でした。

 入院中の主人公が一所懸命マンガ描くというのはどうなのか。

 病院でもマンガを書き続けようとする主人公に対し、友人たちも編集者もそれを応援するか、やめさせるか、悩むわけです。

 ま、ここは休ませるよな、それが当然だよな、と思っておったら、なんと。登場人物のほとんど全員が主人公を応援するじゃないですか。これには驚いた。

 ただひとり編集長だけが、主人公が高校卒業するまでの休載を決定します。ところがみんなこれに反対。「めちゃくちゃだ」「ひどい話だな」「大人の事情」「不当な事」

 編集長、えらい言われようです。いやいや、編集長、あなた正しいですよ。入院中のひとは、仕事や夢よりも、まず身体を治すことが一番。3か月の入院てのは大病です。

 さて主人公、サイコーの病気は何か。

 「肝臓が弱ってる上にバイ菌が入っていて そこを摘出しないと」「手術して肝臓の一部 取らなきゃいけない」「退院は早くて3か月後」というセリフが手がかり。

 バイ菌が悪さをしてるのですから感染症です。肝臓周囲の感染症として一番よくあるのが、胆のうに石ができる「胆石症」が原因となる「胆のう炎」です。

 ただしこれは胆のうを切り取る手術をしますから、肝臓そのものにはメスを入れない。さらに入院期間が3か月ってありえません。

 肝臓内の感染症なら、肝臓のなかにウミがたまってしまう「肝膿瘍」があります。これなら肝臓を切り取ることもありますが、まず最初は膿瘍の中にしばらくのあいだ管を入れてウミを出す処置をします。でもマンガ内にそういうシーンはない。

 あと、生まれつき胆道の走行に異常があっても胆道に炎症を起こします。これも手術をすることがありますが、ふつう肝臓は切り取らない。

 となるとサイコーの病気は、肝臓の中で結石ができる「肝内結石」でしょう。

 聞くところによると、これなかなか面倒な病気で、たかが「石」なのに、治療としては結石ができる周囲の肝臓を切り取ってしまう大きな手術が必要になるらしい。さらにその後も肝臓の別のところに石ができてしまって、再手術が必要になることもあるそうです。

 だいたい肝臓の部分切除自体、身体にそうとう負担をかける手術です。入院中にマンガなんか描いてちゃだめでしょっ。週刊連載ってすごく過酷と聞きますので、退院してからも療養しなさいっ。

 主人公より、主人公のお母さんに年代の近いわたしなんぞは、そう思うわけです。

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Comments

福音館書店の「たくさんのふしぎ」2月号が回収になると聞いたので、書店に現物を見に行ったところ、同じ福音館の「こどものとも 年少版」で、高野文子さんの「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」という絵本が出ていました。ひさしぶりの高野さんの新刊です。マンガではないですが、新年最初に買った本です。

Posted by: misao | January 06, 2010 08:54 AM

しかしこれのせいで人気落ちて打ち切りになったし
編集長の通りにやってたらなおさら。
言ってみれば首になるようなものな訳で
実際現実にあったらデスク系の仕事であれば
病院ででもやるって人は珍しくはないと思います。

編集長の言ってることは
「すぐにじゃないが多分退院後に首にすると思うが
体の方が大事なんだから仕事はさせない」
と言ってるようなモノなので全面的に正しいなんて
ことはないですし、酷い話しではあるかと。
このご時世(というか漫画なら時世問わずでしょうが)
首になったらまた復活できるとは限らないわけで
どちらであれ一生に影響を与えることなのですから。
「100%体を壊すor治らない」のでもない限り
仕事を任せてみるのも十分一考の余地はあるでしょう。

Posted by: kkrk | January 06, 2010 02:45 PM

それで死なせたら元も子もない
死んでしまったら読者も作者も編集も大損こくだけ
大げさじゃなく漫画だから、主人公補正だから生きてるに過ぎない。
青春少年マガジンと言う前例が漫画界に有る以上、あんな描き方はハッキリ言うと恐ろしい。
大体冨樫、萩原両先生みたいな作家が居て星野先生みたいな例が有る以上
休載したから打ち切りになった。は、言い訳に過ぎんでしょう

Posted by:   | January 06, 2010 11:39 PM

どうもはじめまして。偶然この記事を見つけ、気になったのでコメントさせていただきます。

僕は「『バクマン』はスポーツ漫画だ」という話を聞いてから、そう思って読むことにしています。
そうしてみると、この場面、パンチドランカーにかかりながら最後まで戦い抜いた「あしたのジョー」のジョーをほうふつとさせます。
「ジョー」は作中でも何回か話にでてきていますね。

「血の汗流せ、涙をふくな」、スポーツ根性物語の美学といったところでしょうか。

Posted by: 桂馬 | January 07, 2010 12:15 AM

 そうですねえ。「ベルばら」を描いてた頃の池田理代子さんが腎臓を壊して入院したら、編集長はおろか集英社の役員までがやってきて、「お願いだからベッドで連載を描いてくれ、落とさないでくれ」とそろって土下座したという話もありますからねえ。入院中に描かせるのはないわけじゃないと思うけど、病気が何かが気にかかる。

Posted by: ハニー | January 16, 2010 12:29 PM

バトルマンガでは体を痛めるのが当たり前ですし、スポーツマンガでもケガをしますから、病気もそういう扱いなのでしょう。すべては「巨人の星」の飛雄馬が悪い。

Posted by: 漫棚通信 | January 17, 2010 09:56 PM

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