『キャラクターとは何か』とは何か
小田切博『キャラクターとは何か』(2010年ちくま新書、700円+税、amazon)読みました。
章立ては四つからなります。
第一章「キャラクタービジネスの近代史」、第二章「キャラクタービジネスという問題」、第三章「キャラクターの起源と構造」、第四章「日本型キャラクタービジネス」。
第一章で日本の戦後キャラクタービジネスを振り返り、文化と市場が不可分であることを示す。第二章では国際著作権をめぐる世界の状況変化を語り、日本ローカルで定義された「メディア芸術」という言葉や国内で語られるコンテンツ論の不備をつく。
第四章では日本市場の特殊性を語り、日本発のキャラクターが世界進出するに当たっての歴史や現状認識の不足を指摘しています。
どの部分もドメスティックな論を廃するための啓蒙書です。要は海外の状況を知らず、あるいは恣意的な現状分析をもとにして、日本発のコンテンツやキャラクターを語るなということですね。いつもながらごもっともです。
ただし本書の第三章は他の部分と違ってて、書名の「キャラクターとは何か」に直接つながる、(マンガやアニメにおける)キャラクター論になってます。ここがすばらしい。
この章で著者は、E・M・フォースターのキャラクター分類や、伊藤剛の「キャラ/キャラクター」論を下敷きに、キャラクターは「意味」「内面」「図像」の三要素より構成されると説きます。この場合、「意味」は「役割」と言い換えることも可能でしょう。
これはじつにすっきりしたキャラクター論です。理解しやすいし、ひとにも伝えやすい。この部分、分量的にもあっさりと触れられているだけですが、もっと細かく解説してほしかった。
もしかしたらこの本のうち将来的にもっともリファレンスされるのは、このキャラクターの三要素を提示した部分になるんじゃないかしら。
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Comments
>もしかしたらこの本のうち将来的にもっともリファレンスされるのは、このキャラクターの三要素を提示した部分になるんじゃないかしら。
私もそうじゃないかと思います。講義でぜひ紹介しなきゃ、と思ったのもこの部分でした。全体にとても読みやすい本です。小田切さん、文章うまい…。
Posted by: ハニー | January 12, 2010 08:31 PM