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January 22, 2010

最近読んだマンガから

●山本英夫『ホムンクルス』11巻(2009年小学館、514円+税、amazon

ホムンクルス 11(ビッグコミックス)

 12巻は本年2月発売予定だそうですが、すべてがモノローグと会話だけで説明されるというグダグダの終盤(←なのかな?)。さらに、ホムンクルスの能力を持っている女性がほかにいることが突然明かされたりするし。

 この作品、わたしは最初から批判的に読んでましたが、読み進めてもやっぱりがっかり感が。まあトレパネーションは疑似科学ですらないし、それで見えるようになるホムンクルスがあんなにわかりやすい絵解きでは。ひとの心はもっと複雑で一筋縄ではいかないものだと思いますよ。


●井上雄彦『バガボンド』32巻(2010年講談社、533円+税、amazon

バガボンド 32 (モーニングKC)

 本年中に完結するそうです。となると吉川英治の原作の後半をすっとばしちゃって、一乗寺下り松からイッキに巌流島へ行くのですね。これは正解。正直、原作後半は現代の読者にとってはおもしろくもなんともない展開ですから。たしか東映の内田吐夢+中村錦之助の映画もそういう脚色だったっけ。

 巌流島は、聾唖の小次郎と足が動かなくなった武蔵という、ハンディキャップを背負ったふたりが闘うことになります。すでに原作から遠く離れて、井上武蔵となってます。

 ただし32巻では、一刀斎のセリフ「0点だ」にずっこけました。戦国末期に「0=零」という概念が日本の算術にあったのかどうか。


●高野文子/アンデルセン/赤木かん子『火打ち箱』(2006年フェリシモ、1238円+税、amazon

火打ち箱 (こんなアンデルセン知ってた?)

 マンガじゃなくて絵本です。2006年に発行されたもの。

 あの高野文子が絵を描いてます、と言いたいところですが、絵を描いてるだけじゃないのですね。

 高野文子が絵を描いて、それを自分で切ったり折ったりして立体のペーパークラフトを作り、それをまた自分でライティングして自分でデジカメで撮影。これを絵本にしたもの。「水車くらいある目玉の犬」がどのように表現されているかをご覧あれ。

 彼女の趣味の延長なんだそうで、たいへん楽しい本になってます。でも、お願いですからマンガ描いてくださいよー。

 高野文子は最近、『こどものとも年少版2010年2月号 しきぶとんさんかけぶとんさんまくらさん』(2010年福音館書店、390円+税)という絵本も出してます。こっちは絵です。→福音館書店のサイト


●小玉ユキ『坂道のアポロン』5巻(2010年小学館、400円+税、amazon

坂道のアポロン 5 (フラワーコミックスアルファ)

 ちょっと不満があって、端役にいたるまでみんな八頭身とか九等身なんだよね。顔が小さいんだよね。でもここは1966年の田舎の高校。その匂いが感じられず残念。ごめんなさい少女マンガに対してムチャ言ってるのは承知してます。

 あとわが家ではこの先、百合香さんと淳兄が心中未遂をおこすと予測してますがどうなりますか。

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Comments

ご教授ありがとうございます。錦之助版武蔵は全部見てるはずですが、第五部は巌流島のシーンしか記憶にありませんでした。

Posted by: 漫棚通信 | February 22, 2010 10:10 PM

>たしか東映の内田吐夢+中村錦之助の映画もそういう脚色だったっけ。

いえ違います。錦之助版の第五部『巌流島の決斗』では、熊本
で野盗と闘う話や、江戸へ出て将軍家指南役の話を柳生但馬守
(田村高廣)から持ちかけられる話が描かれて、最後に巌流島
です。浪花千栄子のお杉婆が武蔵にエールを贈るシーンは感動
ものでした。

古い記事へのコメントで申し訳ありません。

Posted by: nyann | February 21, 2010 02:57 AM

『坂道のアポロン』は、ジャズをモチーフにしているわりには、ジャズへの愛があまり感じられないのが不満です。

「Moanin 」が作品中重要な曲であるのはわかるけれど、「My Favorite Things」「Someday My Prince will Come」ときて、最後を「Moanin 」で締めるメドレーっていうのは、1960年代後半をリアルタイムで過ごしたジャズファンであれば「あり得ないっ」ていうはず。

『のだめカンタービレ』とさそうあきらのいくつかの音楽マンガのおかげで、音楽マンガのレベルはかなり高くなっていて、『坂道のアポロン』あたりの音楽描写ではどうしてももの足りなく感じてしまいます。

Posted by: natunohi69 | January 24, 2010 03:52 AM

「零」=「0」ではないですが、「ごく微少の量」という意味での「零」という単位は、その当時既にあったみたいです。
「零」=「0」という空位を表す算術記号となり、その概念と定義が日本に入って来た時期は、ちょっとわかりませんでした。

Posted by: ivan | January 24, 2010 01:52 AM

>百合香さんと淳兄が心中未遂

それはあまりにも「太宰中毒」な気が。

書いてしまって、すみません・・・・・

Posted by: トロ~ロ | January 23, 2010 01:33 AM

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