ガンガン系ミステリ
ガンガン系雑誌に連載されていたホラー風味ミステリ二作がともに完結。
●外海良基『Doubt ダウト』全四巻(2007年~2009年スクウェア・エニックス、各562円~581円+税、amazon、
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●三部けい『鬼燈の島 ホオズキノシマ』全四巻(2008年~2009年スクウェア・エニックス、各514円+税、amazon、
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この二作品、同時に発売されることが多く、書店では二冊が並んで平積みにされてて、黒いオーラに包まれてました。
『ダウト』のほうは、ある建物に閉じこめられたグループ内でおこる連続殺人事件。密室となる建物にはいろいろと仕掛けが……という映画「ソウ」系のお話。月刊少年ガンガン連載。
限られた空間が舞台なのに、登場人物がいったいどこにいるのか読者にはよくわかんない、という最大の欠点がありますし、ラストは腰くだけ。
ま、この分野にはクリスティ「そして誰もいなくなった」というオリジナルかつ偉大な先行作品がありますからねえ。でも建物の仕掛けはよく考えられてたし、途中の展開はなかなか怖がらせてくれましたよ。
『鬼燈の島』も孤島が舞台。そこには特殊な学校があり小学生たちが閉じこめられている。いろいろと不審な事件が起こり、彼らは教師たちの手を逃れ学校から脱走しようとする、というお話。ヤングガンガン連載。
サスペンスフルな展開はけっこうでした。ただしミステリ的にはちょっと弱い。最近の読者はミスリーディングに敏感ですからね。殺人の実行犯は意外にも○○だったという最大の謎も、あれだけ手がかりを与えてくれてたら途中でわかっちゃうでしょ。
しかしこの作品も魅力的な設定が物語をひっぱります。学校や島の空間的位置的描写がしっかりしていて、こちらは安心して読めました。
二作とも四巻できちんと完結しました。ちょうど映画一本ぶんぐらいの長さでしょうか。これが一ないし二年かけて連載され、順にのんびりと単行本が発売されるという形。こういうのはいいですね。
ミステリではじめに魅力的な設定や謎が提出されたら、それだけで読んでみようという読者はけっこういると思います。ラストにたどりついて満足できるかどうかはまた別ですが、読者としては今度こそ大当たりかもしれない、とやっぱり手を伸ばしてしまいますね。
わたしもそういうのに弱くて、このタイプの作品が発売されたら、また買っちゃいそうです。
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