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August 05, 2009

『ザワさん』が気になる

 西東京の高校野球部(強豪)に属する唯一の女子一年生、都澤さん(通称「ザワ」)。彼女の日常を描いたマンガ。

●三島衛里子『高校球児 ザワさん』1・2巻(2009年小学館、各524円+税、amazonbk1

 

 ザワさんは背が高くてスタイル良くてちょっと美人。ですから同級のチームメイトは彼女を意識しまくっているのですが。

 ザワさん自身は野球にしか興味がない。どこまでも野球中心の生活。下校中、傘でバッティングフォームをチェックする。掃除中、ホウキでバッティングフォームをチェックする。腹筋のキレ具合を気にする。正月早々ガッツリ走り込み。プロテインマニア。授業中はひたすら寝ている。

 というわけで本作は、ザワさんを意識しまくる同級生たちと、それにまったく気づかないザワさんの、すれちがいというか、むずがゆいというか、そういう日常を描くマンガです。

 彼女はいわゆる「紅一点」です。日本製フィクション内における紅一点はある役目があって、彼女はチーム内におけるヒロイン。性格上は妹であったり姉であったりもするのですが、チームメンバーたちの精神的(もしかしたら肉体的にも)性的対象であることは避けられません。

 あばしり菊の助とか白鳥ジュンをイメージしてください。ところが、体育会系女子の多くはそうかもしれませんが、自分がセックス的な意味で男性的物語上のヒロインであるという自覚がない。というかあまりに無自覚。ザワさんこそ、これを体現する存在です。

 実際、現代の男女共学校にザワさんのようなひとがいるとして、男性同級生と性的に無自覚につき合い、学校内の女性コミュニティと無関係に生活できる、彼女のようなひとが存在できるのか。

 これは地域や年齢、さらに時代でちょっとずつ違うはず。だからこそ、『ザワさん』は現代のファンタジーとしてぎりぎり成立するのです。

 すっごく微妙な心の問題を、すっごく微妙な表現で描いたマンガです。野球部の練習で、フツーに男子を背負って神社の階段を登るザワさんを見よ。

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Comments

>野球部の練習で、フツーに男子を背負って神社の階段を登るザワさん
当時の自分が背負われていたら無意識にたってしまうのであります。
いまはむかしのはなし・・・・・・

Posted by: トロ~ロ | August 06, 2009 06:16 PM

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