« June 2009 | Main | August 2009 »

July 29, 2009

限りなく大きなテーマ『ZOOKEEPER 』

 青木幸子『ZOOKEEPER 』が全八巻(2006年~2009年講談社、各514円~533円+税、amazonbk1)で完結しました。最後まで全力で走りきりましたね。

       

 同じ講談社「イブニング」の『もやしもん』も最初は、菌を見る超能力を持った主人公が農大でおこる珍事件・難事件をたちどころに解決! という設定だったのでしょうか。最近は主人公のカゲがすっかり薄くなってますねー。

 『ZOOKEEPER 』も似た設定で始まりました。温度を目視する超能力を持った動物園の新米飼育員(♀)が、動物や人間たちのさまざまな事件をその能力で解決してゆく。

 ただしこの能力、ずいぶん地味でして、要は赤外線カメラ/サーモグラフィみたいなもの。主人公の能力でハデな結果を得ることもたまにありますが、通常は動物の病気を早期発見したり、ヒトがウソついてるかとか怒ってるとかを判断できるぐらい。まあ言ってみれば「観察力が鋭い」程度の能力です。

 主人公が観察力を発揮して問題点を明らかにするのですが、実際に問題を解決するのは彼女の能力というより、登場人物たちの知識と知恵の結集によります。各エピソードのお話がおもしろいだけでなく、この解決法がすがすがしい。

 いかに動かないコアラの人気を上げるか。発見されたオオタカやヤマネをどのように保護するか。動物園でチーターを全力疾走させられるか。チンパンジーの群れのボス争いをやめさせられるか。

 本作は動物をテーマにした作品であるのに、人物描写がすばらしい。個性豊かな飼育員たちのキャラクターが陰影深く描きこまれています。なかでも名物園長であるクマ園長は、そとづらは良いのに職員にはキビシく、腹芸多く清濁を合わせ飲むけど芯の通った動物園哲学を持つ人物、というチョー複雑な人物造形で、このひとを眺めてるだけで楽しいったらありません。

 そして動物園を舞台にするからには、作品のテーマは限りなく大きなものになります。

 動物園は娯楽施設なのか、研究施設なのか、教育施設なのか。動物園の存在意義とは何か。人間と野生動物の共生が動物園という形でなされてよいのか。そもそも動物園は必要なのかという問い直し。まさに真っ正面からの挑戦です。

 ヒト/動物は動物を食べて生きる。ヒトそして動物は死んで土に戻る。生きるとはどういうことか。命とは何か。これを考えさせる作品なのです。

そもそも「動物園」は「命の博物館」そのものなのだ

 本書では動物園とはこのようなものであると宣言されます。

 深遠な問題提起とすぐれた娯楽作品が両立。渾身の傑作でした。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

July 24, 2009

80年代サンデー

 週刊少年サンデー増刊号『少年サンデー1983 』(2009年小学館、600円+税、amazon)という雑誌が発売されてますが、これがなかなか楽しかった。

 少年サンデー1983 2009年 8/15号 [雑誌]

 週刊少年サンデーの部数が最も多かったという1983年を回顧したもので、あまりこういう企画をしない小学館としてはめずらしい。

 当時の雑誌からスキャンしたマンガ、連載1回ぶんずつが9作。それぞれ作者が自薦した回です。あだち充『タッチ』、高橋留美子『うる星やつら』、村上もとか『六三四の剣』、島本和彦『炎の転校生』、原秀則『さよなら三角』、細野不二彦『GU-GU ガンモ』、石渡治『火の玉ボーイ』、岡崎つぐお『ただいま授業中!』、新谷かおる『ふたり鷹』。

 さらに作者インタビュー+その作品が好きなマンガ家のコメント。おまけとしてライバルのマガジンで描いてた小林まことのインタビュー。その他当時の記事や表紙、次号予告などを収録。

 作者インタビューがそうとうにいいデキでして、ふりかえって今だから話せる、という感じの心情の吐露。インタビュアーがいい仕事してます。唐澤和也というかた。

 このころのサンデーといえば、やっぱ『タッチ』と『うる星やつら』ですね。

 わたし当時大学生でしたが、サンデーを立ち読みしてきた友人がわざわざわたしのところに、上杉和也が死んだっ、と伝えに来た。わたしもあわてて立ち読みに行きましたよー。

 それから次の号が出るまで、あだち充なんだからあれはギャグにちがいない、いやホントに亡くなったはずだ、と論争してました(わたしの意見は後者ね)。

 ま、いい歳をしたお兄ちゃんたちにとっても、それほど衝撃であったと。

 その後の展開を見て、おお「タッチ」とはそういう意味の「タッチ」であったのか、とこれも感心しながら読んでました。

 『うる星やつら』はTVアニメが絶賛放映中。のちに伝説となる劇場版第二作、押井守監督「ビューティフル・ドリーマー」の公開は1984年です。今大騒ぎになってる涼宮ハルヒ「エンドレスエイト」のモトネタのひとつです。

 失礼ながら笑ったのが安永航一郎。

 表紙掲載の9つのマンガには数えられていないのですが、サンデー本誌に前後篇で発表されたマンガ、『うで立て一代男』の前編が収録されてます。

 ところが、36ページのマンガを4ページにムリヤリ詰め込んじゃうという掲載方法。1ページに16ページぶんが並べられては、はっきり言って読めやしません。掲載すること自体がギャグです。当然作者インタビューもなくて、短い作者コメントだけ。

 作者紹介欄では「代表作を語ろうにも現在入手可能な著作無し」という自虐(?)ギャグ爆発してます。わはは。

 安永航一郎については、島本和彦がインタビューで「増刊サンデーで連載していた『県立地球防衛軍』の安永航一郎が一番恐ろしかったですね。彼は東宝系の怪獣ものギャグだったんですけど、先にやられてしまうかもという恐怖がありました」と語ってます。わたしも彼の下品ギャグが大好きで、単行本は全部持ってるはず。

 今、同人誌活動のほうはどうなってんのかな、と、今年の夏コミのカタログをめくってみますと、安永氏の「沖縄体液軍人会」は三日目、東Z-04で出展してました。

| | TrackBack (1)

July 22, 2009

卑弥呼と日食

 皆既日食でしたね。テレビで特集してましたが、あんなに暗くなるものなのか。そして気温も下がるものなのか。

 マンガに登場する日食といえば、手塚治虫『火の鳥黎明編』が思いうかびます。

 日食におどろいた卑弥呼が、天の岩戸に閉じこもってしまう。この騒動に乗じて、主人公が邪馬台国を逃げ出す、という展開。

 マンガの中では、日食の最中には地面に映った木漏れ日が三日月状に見える、という描写もあります。手塚先生、正確。

 これはピンホールカメラと同じ原理でおこるので、逆に枝葉を見上げても、光が三日月型に見えるわけではありません。でも手塚先生、そういうふうにも描いちゃってまして、こっちはちょっとダメ。

 さて卑弥呼の時代、日本で皆既日食はあったのか。こちらのサイトで調べてみました。

 Wikipedia の記述によると、卑弥呼が生きていたのが西暦175年ごろから248年ごろ。日本でこの時代、皆既日食は西暦247年3月24日にあったようです。おお、これなら卑弥呼の晩年だし、マンガの展開にも合うじゃないですか。

 でもこのときの日食は九州では皆既にならず。奈良ならかろうじてOKです。最大食分が1.007といいますから、みごとな皆既日食。

 しかし、太陽のかけ始めが17時36分でもう夕暮れ。皆既になるはずなのが18時32分で、とっくに日没後。日没後の日食って理屈がよくわかりませんが、計算上はこうなるのね。

 というわけで、卑弥呼の時代、マンガにぴったりの日食は畿内や九州にはありませんでした。なかなかうまくいかないものですねえ。

火の鳥 1・黎明編

| | Comments (3) | TrackBack (0)

July 19, 2009

フランスアマゾンでお買い物

 日本にアマゾンがまだなかったころ、アメリカアマゾンから本を買っていた時期がありました。送料は今とあまり変わりませんが、なんせ時間がかかること。

 アメリカの倉庫からトラックで大陸を横断し西海岸へ、さらに船便で日本へ、というコースだろうと想像してましたが、注文してから到着まで、ひと月以上かかってアタリマエ。だいたい忘れたころに届きます。

 日本アマゾンが洋書を扱うようになってからは、1500円以上送料無料だし、到着は早いし、日本で買うことが多くなりました。

 しかし洋書はおおむねアメリカアマゾンのほうが値引きがいい。送料を含めても日本で買うよりアメリカアマゾンのほうが安くなることもあって、そういうときは今もアメリカアマゾンを利用してます。

 現在のアメリカから日本への送料は、一回の注文で4.99ドル+一つのアイテムにつき3.99ドル。つまり三冊の本なら送料16.96ドル。1ドル=100円として1700円です。

 この送料の場合、到着まで「18 to 32 business days 」と書かれてますが、ふつうもっと早くて、最近は10日から14日ぐらいでしょうか。

 で、英語の本ならこれでなんとかなるのですが、問題は現在の世界マンガ三極のうち、もうひとつ。日本、アメリカ、ときて残るフランスですね。

 なぜ読めもしないフランス語のマンガを買うのか、と問われると困りますが、まあそこに山があるから、ということでひとつ。

 日本アマゾンでも、アステリックスなどの超有名作品ならフランス語版ベーデーも手にはいります。でもこういうのは英語版が現役で買えますので、あえてフランス語版に手を出すこともありません。

 たとえばメビウス作品などは、今は英語版も古書でしか手にはいらず、スペイン語版、ドイツ語版などは日本でも買うことができますが、本国ではいっぱい出版されているはずのフランス語版は日本アマゾンにもありません。

 かつてアメリカアマゾン経由でフランス語のマンガを買ったこともありましたが、最近ではアメリカアマゾンもフランス語の本自体あんまり扱ってませんしねえ。

 ネット上には海外発送もしてくれるフランスのベーデー専門店もありますが、そういうところはたいてい注意事項とかすべてフランス語なので、読めやしません。注文するのには敷居が高いったら。

 わたしにとってフランス語のマンガは、空白地帯でありました。

 ところが、最近フランスアマゾンを訪れてみると、以前はなかったはずの英語のヘルプ欄とかできてるじゃないですか。

 ここがありがたいのはサイトのレイアウトが日本やアメリカアマゾンと同じなので、このあたりをクリックすれば、きっとこうなるだろうと予測できる(ような気がする)。いちいちフランス語の辞書を開かなくても、だいたいの見当がつくところですね。

 それじゃあ、というわけで、住所とかクレジットカード番号とかを打ち込んで、フランスアマゾンにマンガを注文してしまいました。

 買ったのはこの三冊↓。

L'Incal, Tome 1 : L'incal noir (Broché) Blueberry, tome 11 : La Mine de l'Allemand perdu (Cartonné) Blueberry, tome 12 : Le Spectre aux balles d'or (Cartonné)

 左は、メビウス『アンカル1巻:黒のアンカル』です。かつて講談社が1986年に『謎の生命体アンカル』のタイトルで邦訳したものの原著。

 右のふたつはメビウスがジャン・ジロー名義で描いてる西部劇『ブルーベリー』シリーズの11巻と12巻。

 『アンカル』が12.26ユーロで『ブルーベリー』が9.88ユーロ。1ユーロが135円ぐらいとして、一冊1300円から1600円というところでしょうか。

 送料は一回の注文で13ユーロ+ひとつのアイテムごとに1.90ユーロ。三冊の本なら送料が計18.7ユーロ。1ユーロ=135円として約2500円となります。

 日本に到着するまで12から15日とありますが、今回は9日で到着しました。

 このくらいの手軽さでベーデーが手にはいるなら、またフランスアマゾンを利用しようかな。ただし問題は、わたしフランス語がまったくわからないので、マンガを「読む」わけでなく「見る」だけになっちゃってる点であります。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 17, 2009

ドラクエに関するつぶやき

 わたしが人生でいちばん忙しく仕事してた30才過ぎのころ。連日の残業で仕事にも煮つまってたのですが、人間追い詰められると何をするかわからない。わたしの場合、ファミコンとドラクエの1作目を買ってきてしまいました。何を考えてたのでしょうか。

 さあそれからは狂ったようにドラクエの日々。昼間はもちろん仕事ですし残業もあるのに、家に帰ればひたすらドラクエで、毎日毎日、半徹夜状態。一週間でドラクエ1が終了。太陽の石を探してどれほどさまよったか。

 続いてドラクエ2と3もプレイし、三作を三週間で終了させました。当時は3までしか発売されてなかったのですね。しかし初期三部作でぐるりひとまわりする構成には感心しましたねえ。

 以後ドラクエは発売するたびにプレイしてます。というか、ドラクエをするためにゲーム機を買ってます。

 4では最後の闘いで、トルネコがすべって転んだ拍子にしょってた武器がとんでって、ラスボスを倒してしまうという情けない終わりかたをしました。7の壮大な世界とか、好きでしたよ。

 で、ドラクエ9。さすがに今回はパスしようかと思った。DSはねー、画面小さいしねー。

 発売日は横目で見てただけ。きっと売り切れたんだろうなあ、と思いながら一昨日、近所のショッピングセンターにあるおもちゃ屋の前を通りかかると、あれれ、普通に売ってました。

 というわけで買ってしまいましたドラクエ9。ウチの子のもう使ってない古いDSを引っぱり出してきて、ゲーム始めちゃったのですね。ところが突然画面がブラックアウト。ゲーム機の充電が切れたらしい。

 さあところが。家じゅう探してもDS用の充電コネクターが見つからないじゃないですか。電源がはいらないゲーム機は単なる箱です。

 こうなると物欲がむくむく盛り上がってきてしまいます。翌日、もう新しいDSiを買うっ、と宣言して家を出て、おもちゃ屋に向かっておりますと、妻からケータイに電話。待てーっ、買うなーっ、コネクター見つかったーっ。

 というわけで、古いDSでしこしことドラクエ進めております。それなりにおもしろいのですが、やっぱ画面が小さくて。老眼にはきついです。

ドラゴンクエストIX 星空の守り人

| | Comments (4) | TrackBack (0)

July 15, 2009

犬に感謝『星守る犬』

 村上たかしのマンガはあまり好きじゃありませんでした。『ナマケモノが見てた』(1986年~)という動物ギャグマンガはかなり評判になりわたしも単行本をいくつか持ってるのですが、その絵とギャグの泥臭さにどうしてもついてゆけず、それきり。

 ですから、これはわたしにとってずいぶんひさしぶりの村上たかし作品です。

●村上たかし『星守る犬』(2009年双葉社、762円+税、amazon

星守る犬

 オープニング、原野に放置された自動車内で死後一年以上たった男性と犬の遺骸が発見されます。

 第一話は、生前の彼らがいかに生きて死ぬことになったかの物語。第二話は、その遺体の処理をまかされた福祉事務所の職員の物語。

 ともにヒトと犬のかかわりを描いたもの。あいかわらず著者の絵は泥臭く、演出もうまいとはいえない。

 しかし犬を飼ったことがある人間なら、犬を飼うという行為にある種の後悔があるはずです。彼らが飼い主に対してあらわしてくれた無限の愛情に自分は答えられたのかしら。せめてもっと散歩とかつき合ってやったら良かったのかなあ。

 このマンガはそのあたりをぐさりとえぐるのですね。

 わたし猫マンガにはあまり思い入れがないのですが、犬マンガはあきませんのですよ。谷口ジロー『犬を飼う』なんか反則だよなあ。

 本書はヒトがいかに犬に救われているかを感謝したマンガです。書影に描かれているのは、地平線まで広がるヒマワリの花と一匹の犬。この絵が何を描いているのかは、本書を最後まで読んではじめてわかるようになっています。

| | Comments (1) | TrackBack (1)

July 12, 2009

狼と赤毛の踊り子

 宝島社のこれを買ってきて、家族で見てました。

●「ドルーピー DVD BOX」(2009年宝島社、933円+税、amazon

ドルーピー DVD BOX (DVD付)

 宝島社からは「トムとジェリー」「ポパイ」「ウッディー・ウッドペッカー」「ルーニー・テューンズ」「ベティ・ブープ」などの著作権保護期間切れのアニメーション・シリーズがいろいろと発売されてますが、これもそのひとつ。

 ドルーピーは、テックス・アヴェリーがMGM時代につくったキャラクターです。

 この2枚組DVDでは、27本の短編アニメが見られます。画質は悪いのですが、まあ安いからしょうがないか。

 「ドルーピー」というタイトルですが、ドルーピーのシリーズは半分だけで、あとはノンシリーズのMGMアニメーション。27本中26本がテックス・アヴェリー監督作品です。

 かつて30分番組「トムとジェリー」というのがありました。三本の短編アニメーションが放送されて、最初と最後が「トムとジェリー」、真ん中がそれ以外のMGMアニメーションでした。ここで見られたのが「ドルーピー」を含めたテックス・アヴェリー作品。会話の中で「トムとジェリーの真ん中」といえば、たいていはアヴェリー作品のことですね。

 テックス・アヴェリーがMGM時代につくったアニメーションは、性格の悪い登場人物たちがくりひろげる、狂騒的なギャグとシュールな肉体変形が特徴。「カフカを読んだディズニー」と呼ばれたこともありました。

 子どもたちも喜んでましたが、続けて見てると密度の濃さにもうへとへと。

 実はMGM時代のアヴェリー作品は、現在ネット上ですべて見ることが可能です。

 アヴェリーのMGM作品は、シネマスコープによるリメイクをのぞくと65本。今回のDVDで見られるのが26本。「Tex Avery's Screwball Classics 」という全四巻のVHSもウチにありますが、DVDとのダブリ以外が11本で計37本。

 はずみがついてしまい、ええい、残りの28本も見てしまえ。というわけで、ここ数日間、ネット上のアヴェリー作品をえんえんと見続けておりました。バカですねえ。

 で、わたしが好きで好きでたまらんのが、狼と赤毛の踊り子のお話です。色っぽいなあ。

 ジム・キャリーの映画「マスク」で、ナイトクラブで歌うキャメロン・ディアスを見たジム・キャリーの目が飛び出て、アゴが落ち、心臓が(文字どおり)飛び出る、というギャグがあります。そのモトネタがこれ。

 狼と赤毛の踊り子が登場するアヴェリー作品は全部で六つあります。

●おかしな赤頭巾 Red Hot Riding Hood (1943)

 「Little Red Riding Hood 」とは赤ずきんちゃんのことですが、ここに「Hot 」がはいると何やらすごくエッチな感触のタイトルになりますな。すべての原点がこれ。赤ずきんだから赤毛なのね。

 歌は「ダディ」にいろんなプレゼントおねだりするというもの。歌のとちゅうで「ウルフィ(狼さん)」とよびかけられた狼が舞い上がってます。

●アラスカの拳銃使い The Shooting of Dan McGoo (1945)

 ドルーピーシリーズの一篇。歌は「キュートな狼さん、わたしを強く抱いて。海軍よりも陸軍よりも海兵隊よりもあなたはステキ」というもので、軍隊慰問ショーふう。時代ですなあ。

●狼とシンデレラ Swing Shift Cinderella (1945)

 シンデレラなのにオープニングは赤頭巾で始まるという、セルフ・パロディみたいな作品。ミュージカルシーンは最も長くてデキがいい。「女の子はみんな狼さんに夢中」と歌ってます。

 この作品のオチも、シンデレラは夜の12時に航空機工場に急いで行かなきゃならない、というものですから、おそらく戦争中の作品。

●迷探偵ドルーピー西部の早射ち Wild and Woolfy (1945)

 ドルーピー・シリーズ。1945年につくられた狼と踊り子としては三作目。当時から人気あったのかな。今回はウエスタンショーで歌ってます。最後まで続くウエイターのギャグが最高。

●うそつきトム Uncle Tom's Cabaña (1947)

 アンクル・トムがナイトクラブをつくって、そこで色っぽいリトル・エヴァが歌うというとんでもないパロディ。さすがに肌の露出はひかえめ。狼ふうに耳が立ってるキャラは、「アンクル・トムの小屋」に登場するサイモン・リグリーという悪役です。

●田舎狼と都会狼 Little Rural Riding Hood (1949)

 最後はこれ。歌とダンスのシーンは「狼とシンデレラ」からの流用です。それでも都会狼と田舎狼の対比がおもしろい。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

July 08, 2009

メビウスのこと

 「ユリイカ」2009年7月号「特集・メビウスと日本マンガ」(青土社、1238円+税、amazon)を買ってきて、ひと晩で読んでしまいました。おもしろかった!

ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ

 タイトルどおり、メビウス本人の仕事と、日本マンガに対する影響を多方面から解明しようと試みた特集。あと、先日メビウスが来日したときの講演の記録です。あれは日本マンガにとってもみずからを見直すいいきっかけになりましたねえ。

 個人的には竹熊健太郎氏による、劇画が袋小路に入りマニエリスム化→新しい絵としてメビウスのブーム、という解説がツボに入りまくりでした。あと原正人氏による「ブルーベリー」シリーズの解説がありがたいったら。

 なんにしてもメビウスという作家は日本でもあれほど有名なのに、雑誌で紹介されたのは別にして、単著として邦訳されたのはこれまで一回きりでした。ですから日本読者は、メビウスのことを知ってるような知らないような。

 日本ではマンガは「読む」ものであって「見る」ものではありません。「物語性」という部分が希薄な、あるいは難解なメビウス作品は、日本人にとって相当にキツイのです。

 今回邦訳されたメビウス『B砂漠の40日間』(2009年飛鳥新社、5000円+税、amazon)にしても、下描きなし、モノクロ線画の一発描きという、奇跡のような本ではありますが、1ページヒトコマ。連続したコマからなんらかのストーリーを読みとるのはたいへん困難。

B砂漠の40日間

 つまりマンガを「読む」ようには読めないのがメビウス作品です。

 日本でメビウスに衝撃を受けたのは、読者よりもマンガ家だった、と今回の特集でくり返し語られています。日本読者は、メビウスに影響された大友克洋、谷口ジロー、藤原カムイ、宮崎駿、そしてバロン吉元(←このことはユリイカの特集で初めて知りました。そう言われれば、なるほどそうだよなあ)らをとおしてメビウスを見ていたことになります。

 日本マンガの変革はメビウスの影響を無視しては語れない、ということなのですね。

 さて、わたし自身のことを書きますと、わたしも他の多くの人と同じように、メビウスのことはツルモトルームから発行されていた旧「スターログ」誌で知りました。

 「スターログ」誌はスター・ウォーズ以後の海外のビジュアルSFを紹介する雑誌でしたが、当時のニューウェーブマンガはSFと親和性が高く、マンガやイラストについての記事も多かったのです。幸い今も書庫に全冊そろってます。

 この「スターログ」誌がメビウスを精力的に紹介しました。

 そしてルネ・ラルー監督がメビウスの絵を動かしたアニメーション映画「時の支配者」(1982年製作)が1983年日本公開され、その後1986年になって講談社がメビウス作品を刊行しました。

 「アンカル」シリーズの第一巻『L'INCAL NOIR 』の邦訳です。「アンカル」シリーズは当時まだ完結していませんでしたからなかなか意欲的な出版。邦訳されたメビウスの書籍として『B砂漠の40日間』以前では唯一のものです。『謎の生命体アンカル』というタイトル、「コミック界のニューウェーブ ヨーロッパベストコミック」というシリーズ名でした。

 オビを書いてるのが手塚治虫でして、「日本につぐ第二のマンガ大国、フランス。そのコミック集成は日本の一部の人々にとって秘められた宝だった。今こそ、その宝が全国のヤングの所有物になる。こんなすばらしい宝物はないと思う」

 でもねー、当時のヤングであるわたし、このメビウス作品買いのがしてるんですよ。このとき講談社は大判でハードな表紙、カバーなし、オールカラー、というBDのアルバムタイプの本を四冊同時に出版しました。ほかのはタンブリーニ/リベラトーレ『ランゼロックス』、ブルジョン『風の漂流者 館長室にひそむ女』(各1900円)。

 あと『時の支配者メイキングブック&アニメコミック』というのも出してて、これだけ3500円とお高い。これはメビウスによるストーリーボードや設定資料、インタビューなどをいろいろと収録したもの。アニメーションの画面をマンガふうに再構成した、いわゆるアニメ・コミックがついてました。

 こんなのまで持ってるわたしが、なぜ『アンカル』を買わなかったのか自分でもよくわかりませんが、おそらく単に近所の書店になかったのでしょう。

 当然、といってはなんですが、講談社のこのシリーズは続いて刊行されることはありませんでした。

 1980年代、洋書はまだまだ遠い存在でした。わたしのような一般読者が次にメビウスのマンガを読むのは、ずーっと間があいて1996年、小学館プロダクションが出したアメコミ雑誌「マーヴルクロス」1号にメビウス版「シルバーサーファー」が掲載されたときになります。

| | Comments (3) | TrackBack (0)

July 05, 2009

妻が人気らしい『うちの妻ってどうでしょう?』

 居間のソファに寝ころんでいると妻がやってきて、「僕の小規模ななんとか」はどこにあるのかと聞く。なんとかというのは「生活」か「失敗」かと問いますと、古いほう、と言うので、『僕の小規模の失敗』なら書庫の真ん中あたりじゃなかったかな、と答えました。しばらくするとまたやってきて、ない、と言う。

 しょうがないのでわたしもいっしょに書庫のあちこちを探しましたが、これがなかなか見つからない。ついに妻が、なぜお前はきちんと整理をしないか、とか怒り出すわけです。

 はいはいごめんごめんわるいわるいいつかちゃんとするから、とか受け流しさらに探していると、やっぱり書庫の真ん中のあたりで見つかるじゃないか。これはわたしが自分のために買った本だよ、なぜこんなことで文句を言われなければならないのか。ふんっ。

●福満しげゆき『僕の小規模な失敗』(2005年青林工藝舎、amazonbk1
●福満しげゆき『僕の小規模な生活』1・2巻(2007~2008年講談社、amazonbk1
●福満しげゆき『うちの妻ってどうでしょう?』1・2巻(2008~2009年双葉社、各743円+税、amazonbk1

    

 買ってきた新刊の『うちの妻ってどうでしょう?』2巻をそのあたりに置いておいたら、なぜかわが家の女性陣に人気で、いつも誰かが読んでいる。

 どこがおもしろいのかと聞くと、「妻」がカワイイと言う。

 えーっ、そうなのか。わたし自身はあの「妻」の言動にはムッとくることが多いので、カワイイと言いきることができるかというと、たいへん微妙です。ああいう理不尽なことを言ったり怒ったりするのが女性であるとわかっているつもりではありますが(以下略)

 いっぽうで主人公が辛気くさくてイヤ、などと言う。

 こらっ。人間はああいうふうに考えこんだり行動に出せなくてうじうじしたりさらにやってしまったことをいつまでも後悔するのがアタリマエなのであってあれは読者自身の姿でもあるのだからそれをきちんと表現している作者がエライとなぜ考えないのかお前たちは人間というものが男というものが(以下略)

 とまあ、家庭内不和の原因になりかねないマンガ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 01, 2009

「COM」についての雑誌記事

 手塚治虫がらみの話題ばっかり続いてもうしわけありませんが、もひとつ。

 不定期刊の雑誌「スペクテイター」20号(2009年エディトリアル・デパートメント、952円+税、amazonbk1)に、虫プロの雑誌「COM」についての記事が掲載されています。

 「『COM』の時代 あるマンガ雑誌の回想」というタイトルで、分量は25ページ、取材・文章は赤田祐一。

 「COM」はわたしにとっても思い入れのある雑誌です。以下は「漫画の手帖 TOKUMARU 」3号に寄稿させていただいたわたしの文章より。

 1966年12月25日クリスマス、虫プロ商事から新しい雑誌が創刊されました。誌名は「COM」。
 今の目から見ますと「COM」は、オルタナ系のマンガを掲載するマニア向け雑誌、というくくりになるのかな。しかも出版されていたのは実質五年間と、短命に終わりました。ではありながら、「COM」は日本のマンガ史に大きな足跡を残した雑誌です。
 創刊時の表紙には「まんがエリートのためのまんが専門誌」というコピーがありました。今でこそ「エリート」には「エリート主義」のようにネガティブなイメージありますが、当時はまだ新鮮なことばでした。これを見た読者は、何か新しいものが始まったと感じたのです。

 多くのマンガ家やマンガ関係者がこの雑誌から巣立っており、作り手も読者も熱い雑誌でした。最近では浦沢直樹がマンガ『20世紀少年』内でちらっと話題に出したりしてましたね(10巻10話)。

 記事で証言しているひとびとは、石井文男、大塚豊、校條満、野口勲、山田幸旺、萩原洋子、水谷光作、故・岡田史子、山口芳則、秋山満、飯田耕一郎、金子博亘、塩野米松の各氏。

 選ばれてるのは手塚治虫のマル秘エピソードが多いようですが、ほかの作家の話など、もっと読みたいなあ。

 今回は第一部ということになってまして、あと数回連載されるみたいです。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

« June 2009 | Main | August 2009 »