« グレイトな一冊『定本アニメーションのギャグ世界』 | Main | 中島くんと花沢さん »

May 23, 2009

「メディア芸術」ちゃあなんぞ

 文化庁から、お台場に「国立メディア芸術総合センター(仮)」を作っちゃおうという計画が発表されたのが4月28日。で、2009年度補正予算案が5月13日に衆院通過するとともに、その建設費として117億円を投じることがあっさり決まってしまったわけですが。

 景気対策のための補正予算で文化施設をつくるというのがなんだかなあ。ハコモノかよー、というのが最初の印象です。

 で、文化庁のサイトに行って、

●「メディア芸術の国際的な拠点の整備について(報告)」概要(PDF
●「メディア芸術の国際的な拠点の整備について(報告)」報告書(PDF

を読んでみました。

 まず、文化庁が開催してる「メディア芸術祭」というのがあって、毎年マンガその他に賞をあたえてるのは、わたしも知ってました。でもこれ、「メディア」+「芸術祭」だと思っておったのですよ。ところがホントは「メディア芸術」+「祭」だったのですね。

 文化芸術振興基本法の第9条にこうあります。

国は、映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術(以下「メディア芸術」という。)の振興を図るため、メディア芸術の製作、上映等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

 というわけで「メディア芸術」とは、日本においてはお国が定めた法律用語でありました。いやー、わたし無知でした。

 文化庁の文書によりますと、

我が国は、マンガ、アニメ、ゲーム等、欧米中心の芸術観ではとらえ切れなかった分野の作品を「メディア芸術」と宣言した。この「メディア芸術」という我が国初の芸術の概念を世界に発信し、浸透させていくことで、我が国が、新たな芸術の歴史を作っていくことができる。

のだそうです。日本発の用語だったのでね。すみません、きょう初めて知りました。

 「メディア芸術」=「media arts 」ですよね。しかしこの言葉、「映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術」の意味として、今、世界で通用するのかしら。マンガだけ他のものとちょっと違うような気もしますが、まあマンガも紙の印刷物からデジタルに移行しつつあるから、これでいいんでしょう。

 さて、「国立メディア芸術総合センター(仮)」です。施設の目的は、(1)文化の振興、(2)観光の振興、(3)産業の振興、ということになってますが、文書を読むと、まずは外国人向けの観光施設として考えられてるようです。

 すでに設計案までできています。地上5階、地下1階、上から見ると正方形の建物で、土地面積2500m2、延べ床面積1000m2。

 施設で何をするのかというと。

 (1)作品展示、(2)作品・資料の収集・保管、(3)情報の収集・提供、(4)調査研究、(5)人材育成と普及啓発活動、(6)関連施設間の連携・協力。

 おそらく村上隆の作品なんかが、どーんと展示されるのかな。

 ちょっと脱力したのが目標入場者数で、これが年間60万人。

 その根拠は、平成20年度の第12回メディア芸術祭のとき、11日の開催期間で5万5000人が来場したそうです。一日あたり5000人だから、その半分を目安として(なぜ半分)一日2500人が目標。年間250日(これまた週休2日で計算するところがいかにもお役所ですが)をかけて、年間60万人なんだそうです。

 入場料が250円として、年間の入場料収入が1億5000万円。まあ国立の施設ですから採算などは考えなくていいのでしょうが、入場者予測にはもう少しマーケティングというものを (ry

 昨年「上野の森美術館」で開催された「井上雄彦・最後のマンガ展」。あの大人気展示の入場者が45日間で10万人ちょっと。一日2300人。「国立メディア芸術総合センター(仮)」は連日これよりも入場者が多いだろうという計画です。

 ちなみに京都国際マンガミュージアムが地道な努力で累計入場者数50万人を突破するのに、まる二年かかってます。

 文化庁が施設の参考としているのはオーストリア、リンツ市のアルス・エレクトロニカ・センターです。

 アルス・エレクトロニカなみにかっこいいものが作れたら、そりゃまけっこうなことですが、そこまでの見識とやる気があるのかしら。

|

« グレイトな一冊『定本アニメーションのギャグ世界』 | Main | 中島くんと花沢さん »

Comments

米沢嘉博記念図書館が何のための施設かはっきりしているのに対し、国立メディア芸術総合センター(仮)は賛成するひとたちですら、どういう活動をする施設になるのかわかってないようです。同床異夢とはこのこと。

Posted by: 漫棚通信 | July 04, 2009 11:21 AM

ぜんぜん知らなかったんですが、すごい企画が実現するんですね。
・米沢嘉博記念図書館
http://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/index.html

これと内記コレクションがあればマンガに関しては他にいらんでしょ。

お台場の方は、24時間営業にして派遣切りされたワーキングプアの人々の宿泊所として有効活用するんであれば、私は両手を挙げて賛成します(笑)。

Posted by: かくた | July 03, 2009 10:55 PM

漫画・アニメ・ゲーム・デジタルアートに価値があるのなら誰が所蔵してもいいじゃん。
児童文学図書館の問題は所蔵品を国立メディア芸術総合センター(仮)に寄贈すれば解決します。
批判するだけなら唐沢俊一にも出来ること、収蔵物や企画の提案を行うのが正しい事だと自分は思います。
「完成したらゲームのイベントを主催したいので、セガの体感ゲームを所蔵してください」とか。
「エスカレーターはあの会社以外のものでお願いします」など。
「ハコモノ」もオタク色に染め直せばいいんですよ。

Posted by: 米 | May 28, 2009 03:46 PM

>三田さん。
大阪万博!
ダイタラザウルスでのテスト走行同乗!
有りましたね。

橋下知事は「文化」を「財政」視点からしか
考えられなかった。
「劇画」「赤本」の歴史において、大阪の
資料は、京都なんかには及びもつかぬモノを
持ってるんですよね。そこに眼を向ける
ココロが無い。
金勘定。
「儲かりまっか!?」
「ぼちぼちですわ」
の大阪伝統ですが、
マンガ&SFにおいて、関西の果たした役割は
実に大きいです。


Posted by: 長谷邦夫 | May 24, 2009 09:47 AM

>児童文学図書館の、全てを保護買い取りすべき!
ありがとうございます。

ただ、僕は、日本の行政にそれほど期待しておりません。

1 万博公園管理を放り投げたこと。
2 一番期待すべき施設(児童文学図書館)をまっさきに廃止決定したこと。
3 『メディア芸術』という新語をつくるほど見識がないこと。

などからです。

Posted by: 三田皓司 | May 24, 2009 09:06 AM

↑パチパチパチ(拍手)

Posted by: トロ~ロ | May 23, 2009 11:12 PM

先日、偶然TVで予算委員会の民主党議員の
質問を見ました。
この件について、彼は「6回しか会議検討を
せず、これを決めている」と発言。
どうりで、メディア関係者の間では、全く
ウワサも無かった。

で、百億を超える経費。
そのうちの87億が
お台場の土地費用!!
都に支払われる。

キモはこれですね。
メディアは、単なる「記号」
中身なんか何も考えてない。
その必要がないから
アニメ関係者からの
意見など、全く聞かないのです。

余っていらない土地を
古くから抱えてしまった
東京都と、裏でどんな
話しをしていたのか?

真剣に日本のマンガメディアを大切にするなら
最近、廃止が決まってしまった大阪の
児童文学図書館の、全てを保護買い取りすべき!
じゃないですか。
いかがなもんでしょう?

Posted by: 長谷邦夫 | May 23, 2009 07:33 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「メディア芸術」ちゃあなんぞ:

» [漫画][政策][ブログ][経済]国が考える「国立メディア芸術総合センター(仮)」には、毎日「井上雄彦展」以上の入館者が来る(予定) [見えない道場本舗]
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-7939.html ちょっと脱力したのが目標入場者数で、これが年間60万人。  その根拠は、平成20年度の第12回メディア芸術祭のとき、11日の開催期間で5万5000人が来場したそうです。一日あたり5000人だから、その半分... [Read More]

Tracked on May 27, 2009 05:07 AM

« グレイトな一冊『定本アニメーションのギャグ世界』 | Main | 中島くんと花沢さん »