君の知らないメロディ
「君の知らないメロディ、聞いたことのないヒット曲」を探して、いろんなマンガを読み続けておりますと、グローバルマンガというかワールドマンガというかインターナショナルマンガというか、「海外作家による海外読者向けの、日本マンガスタイルで描かれたマンガ」も視野に入ってきます。
それにしても面倒な言い方ですねえ。「英語で!アニメ・マンガ」の椎名ゆかり氏によりますと、北米には「英語圏で製作され出版されたオリジナルのマンガ」=「Original English Language Manga」=「OEL」、「OEL manga」 という表記もあるそうです。椎名氏は「北米産マンガ」とか「日本産マンガ」という表現を使われてますが、これがあっさりしてていいかもしれない。
最近、北米産マンガとヨーロッパ産マンガがいくつか邦訳出版されました。
●スヴェトラナ・シマコヴァ『ドラマコン』1巻(藤沢マサオ訳、2009年ソフトバンククリエイティブ、600円+税、amazon、bk1)
●ピンクサイコ(ヒース&ネイラ)『イン・ジ・エンド 最果てのふたり』(Mayu訳、2009年ソフトバンククリエイティブ、600円+税、amazon、bk1)
●フェリーペ・スミス『MBQ マック・バーガー・クイーン テイルズ・オブ・LA 』1巻(夏野りょう訳、2009年ソフトバンククリエイティブ、600円+税、amazon、bk1)
●フレッド・ギャラガー『メガトーキョー』1巻(椎名ゆかり訳、2009年講談社、1100円+税、amazon、bk1)
◆
『ドラマコン』はネット上でも読んだことがありました。北米在住の作者が北米読者向けに描いたマンガで、主人公は東海岸在住高校生(♀)と西海岸在住大学生(♂)です。
このふたりがアニメ・コンベンション(コミケよりもSF大会みたいなノリのお祭りらしい)でボーイ・ミーツ・ガールするラブ・ストーリー。1巻では出会ってからキスまで。コンベンションは終わってサヨウナラ。この後2巻で、ふたりが次回のコンベンションで一年ぶりに再会するという、これは続きが読みたくなる構成ですな。よくできている。
シリアスとギャグの二通りの頭身と表情を使い分けるキャラクター、アセル汗や浮き出る血管等の漫符の多用など、日本マンガの文法をそのまま使用しています。
たいへん読みやすいのですが、そのぶん表現としての新味はあまりありません。むしろアチラの風俗などが興味深いです。
◆
『イン・ジ・エンド』はドイツ製。
こっちは日本が舞台で登場人物も日本人。耽美系BLです。日本ではBLの作者も読者も女性ですが、この作者は男性でしかもビジュアル系ミュージシャンらしい。こんなひとです。
雰囲気だけで進行し、エピソードは少ないしストーリーというほどのものはなく、別にどうということはない作品です。ドイツ製なら、ドイツのギムナジウムを舞台にしたスポーツもの少女マンガ『Gothic Sports』なんかのほうがよかったんじゃないかしら。
◆
このなかでは、『MBQ』が圧倒的な画力で読ませます。これもネット上で読んだことがありました。
フェリーペ・スミスは「モーニングツー」連載中の『ピポチュー』1巻が発売されたばかりですが、実質デビューの『MBQ』もエロとバイオレンスが全開。対象読者が北米でも日本でも、作風が変わらんひとです。
●フェリーペ・スミス『ピポチュー』1巻(椎名ゆかり訳、2009年講談社、648円+税、amazon、bk1)
すでに自分のスタイルを持ってます。オリジナルなモノしか描かないと宣言するその意気やよし。やっぱ注目株だよなあ。日本マンガより過激な部分もあり、むしろバイオレンスに慣れてるはずの日本の読者のほうが引いちゃったりするかも。
◆
で、『メガトーキョー』。
「講談社BOX」という箱入りライトノベルのレーベルで出されてますから、マンガの棚には置いてないかもしれません。
2000年からネット上で連載されているウェブコミックで、現在も続いています。
ゲーム好きのボンクラアメリカ人男性ふたりがトーキョーを訪れ、日本のオタク文化を背景に女子高生や女性型ロボットらと出会ってドタバタを繰り広げる話、らしいです。今、ネット上で続きを読んでますが、お話はけっこう内省的に展開します。
最近でこそけっこう味のある絵を描いてますが、この巻に収録されてる2000年ごろの絵は、すみません勘弁してください、というレベルではあります。ここはまあ、猫村さんのようなものと思っていただければ。
編集者が介在せず作者と読者が直接ふれあうウェブコミックという形式。オタクのアイコンや引用や内輪ウケがいっぱい。等身大の登場人物。たしかに新しい何かだろう、とは思うのですが、ごめんなさい、1巻だけではよくわからんのですよ。2巻以降は出版されるかしら。
Comments