ギョーカイと周辺のひとびと『出版奈落の断末魔』
塩山芳明『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』(2009年アストラ、1600円+税、amazon、
bk1)読みました。
カバーでは「エロ漫画の黄金時代」のほうが大きく書かれてますが、奥付や出版社のサイトによりますと「出版奈落の断末魔」のほうが主タイトルみたいです。ちなみに表紙、カバー、帯のイラストを描いてるのはいがらしみきお。
『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者嫌われ者の記』(2006年ちくま文庫、950円+税、amazon、
bk1)でおなじみ、塩山芳明の新作です。2008年に休刊した「月刊記録」という雑誌に連載されていたものだそうです。
エロマンガ編集プロダクションの代表である著者が、これまで出会ったひとびとのエピソードを書いたもの。
ここに登場するのは、編集者、マンガ家、投稿者、役人、客、マスコミ、社員・アルバイト、写植・製版・印刷業者のみなさん。有名無名を問わず、多数のヒトが、あいかわらず毒舌の塩山文体で斬られまくってます。
ギョーカイのひとびとだけじゃなくて、投稿者や役人まで登場してますからね。歯に衣着せぬ人物月旦はおもしろい。笑った笑った。
著者の個人的印象によると「エロ漫画の黄金時代」とは、70年代末から1996年ごろまでの20年間だそうです。現在のエロ業界は、エロ画像見ほうだいのインターネットの普及とともに、少なくとも出版方面は縮小を続けています。これに世界不況・出版不況・マンガ不況が加わって、たしかに先は明るくないみたい。
その中で、おかしく、たくましく、奮闘する、ギョーカイとその周辺のひとびとの生態が活写されてます。
編年体で書かれたエロマンガの歴史、などではなくてエッセイふうの本ですから整理されていないところはありますが、『出版業界最底辺日記』より読みやすい。
巻末にある人名や雑誌名の索引がきちんとしているのには驚きました。こういうのはたいへんありがたいです。
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