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March 16, 2009

『鼻紙写楽』はどうなる

 小学館「ビッグコミック1(ワン)」が休刊しちゃいましたね。

 時代歴史マンガ雑誌を標榜し、再録はなしで新作ばっか、という編集方針で2001年以来、計22冊が刊行されたそうです。

 手塚番と呼ばれる手塚治虫担当編集者たちに対するインタビュー「神様の伴走者」の連載や、永島慎二追悼特集などもあって、意欲的な雑誌だったんですけどねー。

 ただし不定期刊でいつ書店に並ぶかわかんないというのが最大の難点。最近なら2004年が三冊、2005年が四冊、2006年二冊で、2007年と2008年が三冊ずつ。わたしも買うことができたのは、とびとびの号でした。

 で、2003年以来「ビッグコミック1」に掲載されていた最注目作品が、一ノ関圭『鼻紙写楽』でした。

 一ノ関圭は、日本マンガ史上もっとも絵のうまいひと、と言いきってしまいましょう。しかも絵のうまさにもかかわらず、男はかっこよく女はかわいく、その作品はまぎれもなくちゃんと「マンガ」になっているのです。それにおとな向けで娯楽性の高いストーリーが加わる。芸術性と大衆性をあわせもっているのが一ノ関圭作品でした。

 1975年ビッグコミック賞を受賞したデビュー作『らんぷの下』は、まさに満天下を驚愕させました。これほど完成された作品を描く新人がいようとは。デビュー時、彼女は東京芸大油絵科在学中の学生だったそうです。

 受賞作は70ページの大作だったので、ビッグコミック本誌にふつうに掲載するのが困難。で、1ページに2ページぶんを縮小して印刷するという変則的な掲載も話題になりました。

 以後意欲作をつぎつぎ発表しますが、寡作なひとなので、1980年代までのほぼすべての作品が二冊の作品集におさまってしまいます。

●一ノ関圭『らんぷの下』(1992年小学館叢書、2000年小学館文庫)
●一ノ関圭『茶箱広重』(1992年小学館叢書、2000年小学館文庫)

 

 1990年以降はマンガの仕事はぐっと縮小して、こんな作品を描いてました。

●塚本学/一ノ関圭『江戸のあかり ナタネ油の旅と都市の夜』(1990年岩波書店、2300円+税、amazonbk1

 これは「歴史を旅する絵本」というシリーズの一冊。小学校高学年向けの本ですが、その絵はまさに絶品です。

 続いていどんだのが、8年がかりのこの大作。

●服部幸雄/一ノ関圭『絵本 夢の江戸歌舞伎』(2001年岩波書店、2600円+税、amazonbk1

 江戸の芝居小屋をじつに細密な絵で図解した本で、「絵本」とはいってもおとな向けです。すごいったらないです。

 この作品が発売されたときの著者インタビューがこちら

 あと福音館書店の月刊科学絵本シリーズの一冊でも絵本の仕事をしていたようです。

 で、このあと彼女はマンガの世界に戻ってきました。これが『鼻紙写楽』です。今度は『絵本 夢の江戸歌舞伎』で勉強した歌舞伎世界が舞台。

 田沼時代、五代目市川団十郎とその子、将来六代目となる徳蔵をめぐるひとびとの物語。写楽とか、鶴屋南北とか、連続幼女殺しとか、もと芝居小屋で働いていた同心とかが入り乱れる意欲作。すっごくおもしろい。

 完結後は、代表作『茶箱広重』をこえる傑作になるに違いありません。

 しかし掲載誌が年数回刊行されるだけの不定期刊、しかも一ノ関作品は年に一回か二回しか掲載されません。ついに2008年は一回も掲載されず、連載開始から七年、「ビッグコミック1」最終号でも連載第八回にたどりついただけです。物語はまだ先が見えません。

 というときに、掲載誌がなくなっちゃって。いやもうどうしてくれるんだ。小学館はちゃんと次の連載先を用意するように。

 あと、途中でもいいから、そろそろ単行本化してくれませんかねえ。


【追記】そして2015年、ついにめでたく『鼻紙写楽』は単行本されました。単行本化されたときに書いたわたしの記事がコチラ。→(

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Comments

ううーそうなんですよ。
これはファンにとってとても心臓に悪い出来事です。
この作家のせっかくの有難い新作連載を完結するまで続けないで他に何をするべきことがありましょう小学館は、とか思ってしまいますあわわ。

Posted by: くもり | March 17, 2009 at 12:47 AM

ご無沙汰しております。ずっと前にコメ入れたものです。

 一ノ関氏は大好きで、『絵本 夢の江戸歌舞伎』は買ったのですが、『江戸のあかり ナタネ油の旅と都市の夜』は知りませんでした。早速購入致しました。情報ありがとうございます。m(_ _)m

 『鼻紙写楽』のコミックスも早く見たいものです。
 

Posted by: トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人) | March 17, 2009 at 01:11 PM

「江戸のあかり」はですねー、一ノ関圭のいつものモノクロ線画じゃなくて、色と面で描いた絵が実に美しいのですよ。

Posted by: 漫棚通信 | March 17, 2009 at 10:02 PM

「勝坊」はどうなるのでしょうか。

Posted by: misao | March 18, 2009 at 11:04 AM

「ドクロ党」は惜しいですね。「少年幻燈館」は楽しい本でした。

Posted by: 漫棚通信 | March 19, 2009 at 09:09 AM

ビッグゴールドに連載されていた宮谷一彦の「孔雀風琴」も掲載誌休刊で未完に終わりましたが、後に上製の単行本が出ましたね。

Posted by: かくた | March 19, 2009 at 12:49 PM

2010年9月30日に単行本『神様の伴走者』(佐藤敏章)が発売されますね。同じ「ビッグコミックONE」連載の単行本化として「鼻紙写楽」も期待したいところです。

>かくたさん
それも今ではプレミアが付いて高値ですね。単行本の帯の推薦文を塚本邦雄が書いていて、入手したいのだけれど手が出ません;「鼻紙写楽」は未完で終わられてほしくないなあ。。

Posted by: くもり | August 25, 2010 at 02:36 AM

『神様の伴走者』刊行の情報ありがとうございます。わたしも全部は読んでなくて、貴重な情報がいっぱい書かれてるといううわさだけ。これはすばらしいニュースです。

Posted by: 漫棚通信 | August 25, 2010 at 08:47 PM

一ノ関圭先生に合って芸術指導してもらいたいほどファンです。
[美食ざんまい]が単行本未収録です

Posted by: sakano | February 04, 2012 at 01:12 AM

おお「美食三昧」。書庫にある「ビッグゴールド」を発掘して読み直しました。食事シーンが絶品ですね。

Posted by: 漫棚通信 | February 07, 2012 at 09:55 PM

「美食三昧」も良い作品なのになかなか単行本にならないですね。もったいないです。

一ノ関圭先生挿絵の「琉球という国があった」は4月頭に『たくさんのふしぎ』5月号として発売するみたいです。これ以上発売が伸びることはないようにしてほしいですね。

Posted by: くもり | February 08, 2012 at 01:13 AM

ほんとだ!
http://www.fukuinkan.co.jp/mag_schedule.html#08

Posted by: 漫棚通信 | February 09, 2012 at 11:17 AM

やっと出るようです。
http://okinawa-rekishi.cocolog-nifty.com/tora/2012/04/post-3066.html

Posted by: かくた | April 06, 2012 at 03:27 AM

アマゾンでも発売中!

Posted by: 漫棚通信 | April 06, 2012 at 01:00 PM

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