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March 12, 2009

「ユーロマンガ」2号発売

 日本初のバンドデシネ専門誌『euromanga ユーロマンガ』2号(2009年Euromanga合同会社/飛鳥新社、1800円+税、amazon)が発売されてます。

ユーロマンガ 1 ユーロマンガ vol.2 (2)

 書影の左が1号、右が2号です。発売は飛鳥新社、発行はEuromanga合同会社。本書は発行元からご恵投いただきました。ありがとうございます。

 わたしが「ユーロマンガ」1号について書いた記事がこちら

 2号に収録されているBDは以下のとおりです。

●バルバラ・カネパ/アレッサンドロ・バルブッチ「スカイ・ドール」1巻後半
●エンリコ・マリーニ/ジャン・デュフォー「ラパス」1巻後半
●ファーノ・ガルニド/ファン・ディアス・カナレス「ブラックサッド」3巻後半
●ニコラ・ド・クレシー「天空のビバンドム」1巻後半

 バンドデシネの単行本はかたい表紙の大判、カバーなしで発行されることが多いのですが(福音館書店版タンタンを思いうかべてください)、この形式の本をアルバムと呼ぶそうです。「ユーロマンガ」1号+2号をそろえますと、このアルバムがまるまる四冊読めることになります。

 1号+2号=3300円+税で、オールカラーのBDアルバムが四冊、これはお安いっ。ご奉仕価格ですよ。しかも1号ではどの作品も中途半端なところで終わってたのが、それぞれ一段落するキリのいいところまでお話が進んでます。

 「スカイ・ドール」の舞台は多数の異星人が同居する星間世界。この世界では宗教対立があります。性的娯楽用につくられた女性ロボット=主人公が施設を逃げ出し、自分が「異端の法王」と深くつながっていることに気づくまで。

 「ラパス」は、組織された吸血鬼集団と人間との戦い。吸血鬼たちは人間社会のいたるところに侵入しており、彼らに気づいた人間を逆に追いつめてゆく、というホラー・サスペンス。こういうのは日本マンガにもありそうですね。

 「ブラックサッド」は、すでに早川書房から邦訳が二冊出版されてます。黒猫の探偵が主人公のハードボイルド・ミステリ。今回は冷戦と赤狩りの時代を背景に殺人事件がおこります。

 で、本書最大の売りが、ニコラ・ド・クレシー「天空のビバンドム」。天才アザラシを教育して「愛のノーベル賞」を受賞させようとする市長と学者たち、それに対抗する悪魔とその手先。さらに事故で頭部だけとなりながらアザラシの物語を語り続ける学者ロンバックス。と、奇想に満ちた物語が、超絶画力で描かれます。

 バンド・デシネの最大のアドバンテージがその絵です。デッサンは破綻なく、カラーは美しい。これは日本マンガにもっとも欠けているものでしょう。

 しかしいっぽうでBDの最大の弱点もその絵です。

 日本マンガは「カワイイ」を極限まで追求してきました。その結果読者の最大の興味は、キャラクターがカワイイかどうか、萌えられるかどうか、になってしまっています。「カワイイ」の先鋭化は読者の許容範囲を狭くしてしまい、「カワイイ」以外のキャラクターを受け入れにくくしてしまいました。このため、BDやアメコミのごついキャラクターは、それだけで不利なのです。

 もうひとつは、日本のマンガ誌が安価で質の悪い紙を使用してきた歴史があります。そのため日本マンガは大量のページを消費するタイプのモノクロマンガを進歩させてきました。動線や漫符の多用。大きなコマの多用。視線誘導の進歩。読者がページを繰るスピードはどんどん速くなりました。

 BDは動線や漫符が少なく絵はすみずみまで描き込まれ、ヒトコマにおける情報量がとても多い。このため日本の読者が慣れた速読を許しません。これが読みにくさとなっています。

 しかし。

 BDもアメコミも、マンガと同じ地平にたっている、基本的に同じもののはずです。そこには無視することのできないすばらしい作品がたくさん眠っています。知らないですますのはもったいないじゃないですか。

 読みにくさは慣れでなんとかなります。キャラクターの違いは寛容の精神で受け入れてくださいな。

 当ブログでは以前から「海外マンガもっと読もうよ」キャンペーンを勝手に続けております。どうぞ、この機会にご一読を。

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Comments

前巻だけだとえらくわかりにくかったんですが、2巻を読むといたってわかりやすい単純な話だったので1、2巻をまとめ買いして続けて読むべきだと思いましたよ。1巻が話の途中でぶった切って収録してたのは初心者にむけてどうかと。
ニコラ・ド・クレシー以外はアニメチックというかMANGAチックというか「カワイイ」路線じゃないですか、アレ。

Posted by: 国立珠美 | March 15, 2009 03:20 PM

はじめまして。いつも楽しく拝見しています。「海外マンガを~キャンペーン」ということなので、僕も早速購入してきました。日本でBD雑誌が販売されているとは思ってもいませんでしたが、とても面白く読めました。なんとなく「カラスヤサトシ」のマンガみたいですw

Posted by: えんどぅ | March 15, 2009 11:03 PM

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