葦原の国のオタ『がらくたストリート』
気になるマンガ、山田穣『がらくたストリート』1巻(2008年幻冬舎、amazon、bk1)について。
舞台は自然にかこまれた地方都市、芦原市。登場するのは、大学生(♂)、中学生(♀)、小学生(♂)の三兄弟と、それぞれのともだちグループ。
お話の中心になるのは小学生グループです。彼らが街のあちこちで出会うのが、宇宙人やら謎の生物やら神様のようなもの。さあタイヘン、と思っても、じつは大騒動はおこりません。
街に宇宙人とか未来人がやってきたとき、お話にはふたつの方向性がありまして、ひとつは政府や自衛隊までもが登場してくる場合。代表例は映画「E.T.」でしょうか。もひとつはご近所まわりでお話が完結してしまう場合で、これはもちろん「ドラえもん」。
この作品も後者のタイプで、さまざまな事件が起こっても、お話はご町内だけで進行します。ひとりだけ街の外からやってくるのは、諸星大二郎「妖怪ハンター」そっくりの外見をした民俗学者「稲羽信一郎」氏です。
妖怪ハンターが出てきて神様が出てきて街の名前が「芦原市」ですから、ここは葦原の瑞穂の国であるところの日本であります。主人公一家の名字は「御名方(みなかた)」ですが、これは熊楠か。
芦原市はドラえもん世界と同じように、外の世界から閉じた少年たちの楽園であるのですが、そこは現代のマンガ。美少女宇宙人とかパワードスーツとか巨乳のメガネ少女とかスクール水着とか自転車とかバイクとかヘラブナ釣りとかアニメとか、そっち方面のオタ趣味が全開で、「がらくた」のごとくほうりこまれているマンガなのであります。
とくにわたしが好きなのはダイアログ。女子中学生がアニメオタの男子大学生に質問をするところ。
男A「大体わかったろ あと何か訊きたいことは?」
女B「あ ちょっと思ったんですけどー」
「たまにテレビとかで見るじゃないですか」
男A「何を」
女B「部屋ですよ」
男A「あ?」
女B「やっぱりほら」
「御名方さんや入谷さんの部屋もアニメやゲームのキャラクターの人形やポスター 山ほどあるんですか?」
(間)
女B「なんですか?」
男C「そういやそういうのって全然持ってないっすよね」
男D「ないことはないんだけどまあほとんどないな」
女B「えーっ そうなんですか」
男A「別にオタがみんなそうだってわけじゃねー つうか方向が違う別ジャンルだ」
このあとこの話題がまだ続きます。だらだらとページとコマを費やしていかにもありそうなリアルな会話がなされてて、このだらだら感がたまらんっ。
逆にちょっとアレなのが絵でして、人物やメカはずいぶん達者ですばらしいのですが、風景の描き込みにムラがあって。とくに連載5回目などは背景真っ白けで手抜き過ぎ。
とまあ、不満もありますが好きなマンガで、今後の展開がすごく気になります。一部が「YAHOO! コミック」で無料で読めますので、いかがでしょうか。
本書のオビには「謎の新人(笑)の初単行本!!」とか書いてありますが、著者は山田Xやzerry藤尾の名で知られているかた。わたしも後者名義のエロマンガを数冊持ってたりします。カバー下のオマケマンガに登場する謎の少女は、ネット上での著者の別人格、ウロンちゃんですね。
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