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January 27, 2009

ブログ書評の広告使用について

 書評を広告に使用する手法は、新聞広告を中心にいろいろなされています。わたしも北上次郎や大森望推薦! と書かれちゃうと反応してしまいますし、宮部みゆき絶賛! とかになるとこれはもう気になりまくりです。

 世間的には「王様のブランチ」で優香が誉めた、とかが売れ行きを左右するらしいですね。

 有名人の書評を広告に掲載する場合、読売新聞で誰それがこう誉めたとか、週刊朝日であのひとがこう誉めたとかいうあれですが、すでに発表された書評を広告に利用するのには許諾が必要なのでしょうか。それともことわりなしにやってるのかしら。慣習ではどうなってるんだろ。

 いやなぜこんなことが気になるかといいますと、最近わたしのブログの文章を広告に利用しようとされるところが複数ありまして。こういうことに慣れてないのでおどろきました。最近はネット上の評判を書籍広告に利用するのがはやってるのかな。
 
 「漫棚通信」の場合でいいますと、わたしの文章を広告に利用しようとされるとき、許諾を求めてくるかたと連絡なしに使用するかたに別れます。

 許諾を求められた場合、わたしとしてはすでにネット上に公表している文章ですし、ご自由にと連絡しています。

 連絡なしに広告利用される会社のかたからいいますと、もちろんそれは「引用」の範囲内であると考えておられるわけですね。

 「引用」は日本の著作権法32条の1によりますと、

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 ということになります。ブログ書評を広告に使用する場合、「広告」が「引用の目的上正当な範囲内」かどうかという点については、きっと判例や商慣習があるのでしょう。じつはこのあたりわたしよく知りません。

 基本的には、こちらも勝手に引用したり誉めたり(あるいは逆にケナしたり)してるんだから、それを逆に出版社が利用してもかまわない、というのがわたしの立場です。なかには自分の文章を広告に利用されてしまうのをいやがるかたもいらっしゃるでしょうが、ブログに書くということは、天下の往来で大声で叫んでるようなものですしねえ。

 かつてこんな例もあったそうです(梅田望夫氏のブログ2006年3月2日の記述より)。

いま筑摩書房で製作中の「ウェブ進化論」新聞広告で、多くの方々がブログ上で書いてくださった書評・感想から印象的な言葉・フレーズを抽出し、まとめて一覧掲載させていただきたいと考えています。(略)

言葉・フレーズはできるだけ短く切り取りますが、筆者の意図に反する恣意的な切り取り方はしないとお約束します。また広告スペースの関係で、言葉・フレーズにURLや筆者名の付記はしません。ブログ筆者一人ひとりに承諾を取るのが筋かもしれないのですが、ご連絡のしようもない場合もあり、この場でのこの報告でご諒解いただければと思います。もし何か不都合がある方は、コメントなりトラックバックをください。

 梅田望夫『ウェブ進化論』(2006年ちくま新書)の広告についてのお知らせです。

 「もし何か不都合がある方は、コメントなりトラックバックをください」とありますが、ブログ作者全員がこの記述を見てる保証はまったくないので、基本的には許諾を求めていません。つまり「引用」だよと。

 実際に載った広告がこれです。「URLや筆者名の付記はしません」とはしてありますが、さすがに各ブログの名称はちゃんと記載されてました。

 さらに筑摩書房、ネット上にこういうページをつくって、引用元をこまかく明示しました。まあここまでやれば必要十分なのじゃないかな。

 これからこういうケースは増えてくるだろうと思います。ウチにある文章について、もし広告利用を希望されるかたがいらっしゃいましたら、「引用」であれば基本的に連絡不要ですので、どうぞご自由に。

 ただあと気になるのは、この手法だと、出版社みずから自社の本を誉めるブログを書いちゃう、というインチキが可能である点ですが、これはまあ別の倫理上の問題ではあります。

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Comments

そうだったのですか。『ウェブ進化論』をモデルケースとするなら、個々に許諾を得るのが標準になっていくのかもしれませんね。

Posted by: 漫棚通信 | January 30, 2009 04:32 PM

一般的な慣行に関しては、大森さんの見解に同意です。
『ウェブ進化論』の広告は、ぼくのところにも許諾を求めるメールが来たので、しっかり個別に連絡されていると思います。

Posted by: 米光 | January 29, 2009 10:30 PM

自分で撮っても、デザイナーないし、絵の著者の権利はクリアされないので、著作権的にはグレイゾーンでしょう。この場合は「引用」にも当たらないと判断されかねないので、難しいところです。少なくともマンガ単行本の書影に関して、小学館はそういう立場をとっている、という話を以前、夏目房之介さんが書かれていましたね。書影の扱いは、要するに商慣行である、と。

SHINさんがおっしゃるのは「物」として撮ってクリアする方法(報道などで使われる手法)ですが、書影のようなかたちでは、「物」として見るのは難しいでしょう。

Posted by: TOSHI | January 29, 2009 10:08 AM

>これもホントかどうか
 本当です。amazonの書影は自由に使えます。
 amazonにないものは、自分で撮影して貼れば問題ありません。ここで問題なのは撮影者の著作権なんで。

Posted by: SHIN | January 28, 2009 10:15 PM

さあその点なのですが、本の紹介文を書く場合、書影を掲載するのはグレーゾーンという話を読んだことがあります。現在のところ、アマゾンやbk1のような書店を経由すればOKということになってますが、これもホントかどうか。悩ましいです。

Posted by: 漫棚通信 | January 28, 2009 07:52 PM

著作権の難しさといえば、こちらのブログでも書籍の表紙を掲載しておりますが、表紙デザイナーの許可は得ているのだろうか?という点も、ありますね。

Posted by: てんてけ | January 28, 2009 06:46 PM

みなさま、コメントありがとうございます。
これまでの慣行では、小なりとはいえ一応対価が発生するのが普通でしたか。いまのところ、ネット上の言辞の二次利用については無償、というケースが多いみたいですねえ。

Posted by: 漫棚通信 | January 28, 2009 05:52 PM

広告販促の世界では、自分で自分のいいところを誉める「自薦」(いわゆる広告)より、他人が誉めてくれる「他薦」のほうが、見た人の信頼性が圧倒的に高いとされています。それゆえに相対的に中立な立場の人が書かれた該当商品に対しての高評価なコメントは、その商品のメーカーの人にとっては大金を払ってでも手に入れたいものとなります。

かといって金を払って書いてくれるような人の影響力は大したことがないので(いわゆるパック物のアルファブルガーってやつですね)、各メーカーはアノ手コノ手で大きな影響力を持つ人に書いて貰えやすくするように戦略を練っています。

それが度を過ぎると、某ハンバーガー屋の新商品プロモーションのように自作自演で行列を演出して・・・ということになるんでしょうが。

Posted by: くま | January 28, 2009 08:30 AM

「引用の必然性」という見地からすると、パブリックドメインでもないものを無断で使うのは許されないはずですが。筒井康隆さんが八代嘉美の『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』(平凡社新書)の推薦文を書いて「自分が推薦した本の売れ行きというのは、多額の謝礼をいただいている責任上、自分の本のそれよりも気になるものだ」と書いていますから、謝礼を支払わないというのも(金額の多寡は措いて)失礼な話。

Posted by: SHIN | January 28, 2009 06:47 AM

>出版社みずから自社の本を誉めるブログを書いちゃう、というインチキが可能である

Amazonのカスタマーのコメントで、たまにありますよね。グラビア・アイドルの焼き直し版DVDなど、売るのが難しいものなんかで、いかにも営業担当かマネージャーが書いたような文章でした。一目で判っちゃう程レベルが低すぎては宣伝にすらなりません。

Posted by: トロ~ロ | January 28, 2009 01:52 AM

 広告利用の場合は著作権者の許諾をとるのがふつう(一般的な慣行)だと思います。若干の使用料(5000円とか)が支払われることも多いようです。
『ウェブ進化論』の広告みたいなケースでも、個々に許諾をとるのは簡単なので(というか許諾をとれたものを広告に利用すればいいので)常識的には個別に連絡をとるべきだと思います(僕が翻訳したある本で、同様の広告を帯裏に入れたときは編集部が許諾をとり、謝礼は支払わないかわり、増刷分の本を送りました)。
 まあ、これは慣行なので、出版社・担当編集者の考えかたによるかも。著作権法的にはグレイゾーンでしょうかね。

Posted by: 大森望 | January 27, 2009 11:13 PM

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