世界の中でのマンガ
話題になったのかどうかよく知らないのですが、読売新聞に掲載された記事。今はYOMIURI ONLINEの「本よみうり堂」で読めます。
●【マンガ50年】新しい種
(1)ロシアで描く日本の情景
(2)留学生、母国で産業化志向
(3)米国版「ジャンプ」がクール
(4)「外国産」モノマネ超えた
世界で日本マンガがどのように受容されつつあるかのレポートです。
こういう記事を読みますと、日本のマンガとアニメが商業的に世界に進出するにつれて、今現在、世界のあちこちで変容というか変革というか進歩というか、そういうものが起こっているのかなと感じます。
もともと日本マンガスタイルで描かれていた韓国や台湾のマンガだけじゃなくて、アメコミもバンド・デシネもどんどん日本マンガスタイルを積極的に取り入れているようです。その結果、それぞれの国のコミックがこれまでとは違う新しいものに変化しつつある、のかもしれません。
マンガ表現の次の変革は、日本人以外の手でなされるような気がします。
そういうなかで、現在の日本マンガは制作も消費も国内に目が向いているだけ。まあ縮小しつつあるとはいえ、日本の市場がまだまだ大きいからしょうがないのですが。
今は国内向けに描かれたものが輸出され、世界である程度受容されていますが、いずれそれぞれの国ですぐれた作品が描かれるようになると、日本マンガの出番はなくなるでしょう。
何を書いてるのかといいますと、あいかわらず日本じゃ海外作品が読まれないなあ、って話なんですけどね。ドメスティックに完結しているように見える日本マンガも、かつてはアメコミやバンド・デシネの画風を積極的に取り入れていた時代もあったのですけどねえ。
よその国にも傑作いっぱいあるんですから、みんなもっと海外作品読もうよ。
◆
というわけで、オールタイム・ベストワンクラスのアメコミ『ウォッチメン』が、映画化にあわせて再刊されます。読んでないひとは人生損してます、というくらいの作品ですので、買いのがしてるかたはぜひどうぞ。
●アラン・ムーア/デイヴ・ギボンズ『ウォッチメン』(2009年小学館集英社プロダクション、3400円+税、amazon)
あとひとつ。
昨年、マンガの祖、ロドルフ・テプフェールの代表作『M.ヴィユ・ボワ』が本邦初訳されました(わたしの書いた記事がコチラ)が、アマゾンでの取り扱いが始まりました。
●ロドルフ・テプフェール『M.ヴィユ・ボワ』(2008年オフィスヘリア、1800円+税、amazon)
といっても、アマゾン扱いじゃなくて、出版元から直販の形です。
ゲーテが絶賛したというこの作品、19世紀に書かれた原初のマンガだというのに、今読んでもおもしろいんだこれが。こちらもぜひどうぞ。
Comments
『M.ヴィユ・ボワ』買って、パラパラめくってみました。
最後のページ「日本語版について」に、「動詞は現在形で書かれている」とあります。これはいわゆる歴史的現在という用法で、脚本のト書きに使われることもあります。
そういう目でこの作品の絵を見ると、テプフェールは芝居が演じられている舞台を念頭において表現したのではないかと思われます。映画などない時代ですし、同時代人のヘーゲルなどもロッシーニのオペラの評判を云々していたような気がします。
奥行きのない絵が多く、p.26、p.49、p.58、p.67などは例外的です。
物語の進行、時間的変化についての認識がどうコマの割り方で表現されているか、その初源の一つに立ち会える作品なのかもしれません。
p.62~p.67のカットバック的な絵画表現などは、当時は斬新だったのではないかという気がします。文学作品(芸術的な言語表現)ではすでにあったかもしれませんが。
解説にコマ割り表現について、「コマとコマの「関係」や、絵と文字の「関係」が意味を生み出す」とありますが、これは映画理論のモンタージュ論の焼き直しで、笑い話にすぎません。
Posted by: 留公 | February 06, 2009 12:40 AM