関谷ひさしの新作『侍っ子』
昨日仕事帰りに書店によって、この本発見。
●関谷ひさし『侍っ子』(2008年双葉社、1800円+税、amazon、
bk1)
関谷ひさしは本年二月に80歳で亡くなられましたが、これは完全新作の長編。二百十数ページあります。著者70代の時期にかなりの時間をかけて描かれたものだそうです。
実際、このマンガはすごい。何といっても驚いたのはその絵です。
関谷ひさしの絵は1960年代後半が全盛期、『ストップ!にいちゃん』の後期で完成された、と思ってました。1970年代にはいって対象とする読者年齢を上げて描かれた作品は、無理にラフに描こうとした感じで、かなりキツかったです。リイドコミックに掲載された作品とかね。
実はこの本が出版されるという話を聞いて、これもそういうタッチじゃないかとちょっと心配しておったのですが、これがまあすばらしい絵でした。
1960年後半より、むしろていねいに描いてます。しかも線に迷いがなく、描き込みもきっちりされています。少しも枯れることなくみずみずしい絵。
キャラクターも、主人公の「侍っ子」の「かわいさ」は、おそらく関谷マンガのなかでも最高レベルじゃないでしょうか。これが80歳前の人間の絵とは信じられない思いです。人生の最終局面でこれほどの完成度の絵と作品が描けるとは。
出版に尽力したのが畑中純。解説はいしかわじゅんと夢枕獏ですが、いしかわは年をとったとき自分はこのレベルの作品を描けるかと自問し、夢枕も死ぬときはかくありたいと憧憬するほどのできです。
じつにけっこうなものを見せていただきました。これはもう眼福でありました。
Comments
関谷先生とは何度もお会いしていました。お電話でも何度もお声を聞いて、久しぶりに…夜遅くに、同窓のご子息に会いに行った時も家族子供は元気かと…声を掛けて下さいました、ぼくが結婚したときも、ペンを走らせて居る(とあるメーカの冊子の挿絵を描がかれて居た時)脇を挨拶しておじゃましまぁ〜す!
マンガを書かれている方と聞いていましたが…脇目で見た其のお仕事の描かれた作品にデッサンの凄さを感じ…思わずお話がしたくなりました。
娘が漫画家になりたいと言われ…親ばかですが…先生のお家にお邪魔してお若い頃お書きになった作品のスクラップを見せていただきました!!
息が止まる程の懐かしい黒いインクペンの緻密さスクリーントーンの無い頃のALL PENです!
娘と私は息が暫くの間止まりました(苦しかったです!!)
前置きが長がぁ〜くなりましたが…
本日、「すてきなサムライ」と未発表遺作「侍っ子」を手に入れました
マンガを購入したことの無い私が、
新宿のジュンク堂にて購入したのです。
マズは「すてきなサムライ」から読み終わり、
明日「すてきなサムライ」へと進む前に
「侍っ子」を拝見して思った素直なコメントを書かせて頂きます。
イソップ物語? 馬鹿殿様? ジェリールイス? クレイジーキャッツ?
ホンワカした楽しいマンガで有りました。
現代に忘れられたホンワカな時の流れを忘れ、今日この時間一冊味わいました。
物語のキャスト一人一人可愛く、小悪魔的なツンと尖った鼻が特徴の女性の顔…初めて自分で購入して、老眼鏡掛けて熱中して読みました。
他の物語も読みたくなりました。
Posted by: 52歳 初めてマンガ | February 28, 2009 10:44 PM
光文社文庫「少年傑作集第3巻」(1989年)の「ストップ!にいちゃんふたたび」は、タイトル横にもあるように描き下ろしなのでしょう。教えていただきひさしぶりにひっぱりだして読んでみましたが、オトナになった勇一の物語もずいぶん楽しかったです。
Posted by: 漫棚通信 | November 26, 2008 11:30 PM
連続書き込みごめんなさい。昭和43年は1968年でした。ですから「少年」の連載終了から、「・・・ふたたび」までは21年になります。
Posted by: しんご | November 26, 2008 11:24 PM
「少年」傑作集 第3巻(ストップ!にいちゃんほか)に書き下ろし「ストップ!にいちゃん ふたたび」が載っていたので、私は関谷ひさしのファンになりました。(これは「帰ってきた・・・」・・小生未読・・とは別の作品でしょうね)
この文庫本は1989年初版ですので、正編の連載終了(昭和43年=1978年)から11年たっていたのに、絵の線も、スジの展開も、ギャグの切れも、まったく衰えをかんじさせませんでした。むしろ関谷ひさしらしさ、その芸に磨きがかかったように思いました。
ですから、関谷ひさしの遺作がまったく衰えを感じさせないというのは、ありうることのように思います。
子供のころから、私は徹底的な運動音痴だったので、「ジャジャ馬くん」などにはあまり共感しませんでした。また関谷ひさしの描く主人公はあまりにもキザで「えーかっこしー」だと思っていました。しかし主人公があまりにもカッコよくキメてやろうとするあまり暴走するとき、そこにユーモアがうまれ、いやみがすくないと思います。
関谷ひさしが線の衰えが見られるような遺作を残すはずがない。かれはたぶん、ものすごいエーカッコシーですから。
Posted by: しんご | November 26, 2008 11:12 PM