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November 07, 2008

『バットマンガ!』桑田次郎インタビュー

 以前、アメリカで桑田次郎版『バットマン』が復刻されるという記事を書きました。

桑田次郎版『バットマン』復刻!

 日本アマゾンで買うよりアメリカアマゾンで買うほうが送料込みでも安くなるのでそっちで注文。10月28日の発売当日にアメリカから発送され11月6日にわが家に到着しました。おお、意外と早く来た! 

Bat-Manga!: The Secret History of Batman in Japan(2008年Pantheon Books)

Bat-Manga!: The Secret History of Batman in Japan Bat-Manga!: The Secret History of Batman in Japan

 タイトルは『バットマンガ!』。左がハードカバー版、右がペーパーバック版書影です。書影クリックで日本アマゾンに飛びます。ハードカバー版のほうが収録エピソードがひとつ多いそうですから、買うならこっちでしょう。しかも今はドルが安い。

 ハードカバー版は布張り表紙で重いです。もともと紙質の悪い日本マンガ誌にちょっと青っぽいインクでモノクロ印刷されたマンガですから、当然経年変化で黄ばんでしまってる。これを写真撮影して上質紙にカラー印刷してあります。アチラで復刻といえばこのやりかたですね。カラーの上質紙上でザラ紙の黄ばんだモノクロマンガを読む不思議。日本の復刻版とは違ってかなり豪華です。カラーページや二色ページもそのまま。

 日本のマンガと同じようにちゃんと右開きの本で、英訳されてるのはフキダシ内のセリフやキャプションだけで、手描きの擬音などは日本語のままですからわたしたちにも読みやすい。

 編集とブック・デザインはチップ・キッド。彼のいつもの本と同じように、ずいぶん派手でポップな仕上がりです。「少年画報」や「少年キング」、少年画報社版の雑誌「バットマン」の書影や特集ページ、バットマンオモチャの写真などがてんこもり。さらには中国語版パチモンマンガ『蝙蝠黒飛侠』のオマケもあります。

 ただし編集がポップすぎて、右ページにもとの雑誌の奇数ページ、左ページに偶数ページという収録方法をとってる部分がずいぶん多いです。どうもデザイン優先でこういうスタイルを選んだらしい。

 これではハシラとノドが逆転してしまい、この本のノドの部分にはもとの雑誌のハシラがきてるわけです。見開き二ページをひとつの単位とする日本マンガの習慣とは違う見せ方をしていて、視線誘導を考えるとちょっとアレですが、まあ日本でも旧作の復刻はこのあたりきちんとはしてないような気もしますし。

 もととなる雑誌のハシラ部分には「星のいろいろ」とか「大リーグ百科」などの一行豆知識や、自社雑誌広告が載ってるわけですが、そんなところまで英訳してある部分もあって、いろいろと凝ってますねえ。

 収録作品は以下のとおり。

●怪盗ドロ人間の巻:少年画報1966年9月号
●ドロ人間の復しゅう(2):週刊少年キング1966年43号
●ドロ人間の復しゅう(3):週刊少年キング1966年44号
●死神男の巻(1):週刊少年キング1966年23号
●死神男の巻(2):週刊少年キング1966年24号
●死神男の巻(3):週刊少年キング1966年25号
●魔人ゴゴの巻(1):週刊少年キング1966年35号
●魔人ゴゴの巻(2):週刊少年キング1966年36号
●顔なし博士の巻(2):週刊少年キング1966年27号
●ゴリラ博士の復しゅう(2):週刊少年キング1966年33号
●ゴリラ博士の復しゅう(3):週刊少年キング1966年34号
●人間をやめた男の巻(1):週刊少年キング1966年38号
●人間をやめた男の巻(2):週刊少年キング1966年39号
●人間をやめた男の巻(3):週刊少年キング1966年40号
●人間をやめた男の巻(4):週刊少年キング1966年41号
●ロボット強盗の巻(1):少年画報1966年7月号

 桑田次郎のシャープな線で描かれたバットマンはかっこいい! オリジナルよりいい!

 この本に桑田次郎(現在は二郎)氏のインタビューが掲載されてます。以下に抄訳してみます(誤訳かつ意訳御免)。

*****

1.「少年キング」にバットマンを描かれるようになった経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 「少年キング」編集部からの依頼です。バットマンのTVシリーズが日本で放映されることになったので雑誌にバットマンを載せたいとのことでした。バットマンが雑誌売り上げを伸ばすことを期待したのでしょう。

 わたしが引き受けた大きな理由は、かつてスーパーマンを描くことができなかったからです。バットマン以前にスーパーマンを描かないかという依頼がありましたが、そのときは忙しすぎたのです。ですからバットマンに挑戦できるのはとてもうれしいことでした。
 
 最初はアメコミのリアルでダイナミックなスタイルと、わたし自身のスタイルをブレンドするつもりでした。アメコミの人物のプロポーションは日本マンガのそれとはずいぶん違うでしょ。アメリカンスタイルを取り入れることで、わたしの絵が進歩することを期待していました。

 しかしやはり忙しすぎました。ボブ・ケインのバットマンを真似ることはできず、自分のスタイルで描かざるをえませんでした。でもそのおかげでこういうインタビューを受けているのですから、もしかしたらそれで良かったのかな(笑)。


2.どのようなものを参考にしてバットマンを描かれたのでしょう。以前から彼のファンだったのですか。

 とくにファンというわけではありませんでした。「少年キング」の編集者がオリジナルコミックスをいくつか見せてくれたので、そのところどころを参考にしました。とくに怪人の造形やコスチュームですね。


3.先生自身がバットマンのストーリーを考えられたのですか。

 編集者からもらったオリジナルコミックスをもとにわたしが考えました。しかしまったく違ったものにしています。キャラクター、怪人、ストーリー、設定などを日本の読者向けに作り直したのです。

 よく覚えている例では、生きるか死ぬかという場面で怪人がバットマンにナゾナゾを出す。死にそうになってるのに、バットマンはそれに真剣に答えるのですよ! リアリティがないしかっこよくありません。日本の読者向けにはもっと大人っぽくてリアルなストーリーが必要です。


4.当時「8マン」スタイルの日本製アニメ「バットマン」が計画されていたという噂がありますが。

 アメリカのTVシリーズは日本で放映されましたが、日本製アニメの計画はなかったですね。


5.当時の雑誌には先生の住所も掲載されていますね。バットマンファンからの手紙は多かったですか。

 たくさんもらいましたよ。とくに年賀状で。でも同時にいくつものマンガを描いていましたから、バットマンファンがどれくらいいたかはわからないなあ。最近になって、40代や50代になった読者がわたしの描いたバットマンの思い出を語ってくれることがあります。


6.子ども時代にはどんなマンガを読んでいましたか。

 そうだなあ…… わたしは13歳でプロになりましたから、子ども時代からマンガを読むことは仕事の一部でした。でもそれ以前は『のらくろ』や『冒険ダン吉』などを楽しんでいましたよ。これらは手塚治虫より前の有名作品です。


7.どうしてマンガ家になろうと思ったのですか。

 わたしはもともとマンガ家をこころざしてはいませんでしたが、『ヤネウラ3ちゃん』を読んで四コママンガを描き始めました。この新聞連載の四コママンガは、笑いで敗戦後の日本人に勇気を与えたのです。

 小学六年生のとき、わたしの四コママンガが学校新聞に掲載されました。わたしは毎朝のように学校新聞用の投書箱に作品を投稿しました。でも学校新聞は週刊ですから何百というマンガがムダになります。わたしがそれを製本すると評判になり、中学生がわたしの家にマンガを読ませてほしいと頼みに来たこともありました。

 そのころ手塚治虫がデビューしました。いつか彼のようなストーリーマンガを描いてみたいと強く思ったことを覚えています。

 そして、友人の友人が出版社にマンガを持ち込み編集者の指導を受けているという話を聞き、わたしもやってみることにしました。そしてすぐにデビューが決まったのです。


8.あなたにもっとも影響を与えたマンガ家は?

 手塚治虫です。

 最初に読んだときは衝撃でした。彼こそマンガの新しい次元を開きました。手塚治虫ほど感動的でドラマティックなストーリーを描けるマンガ家はいません。彼こそマンガをナンセンスなお笑いから新しいレベルに進歩させたのです。手塚治虫を目標とすることは、わたしにとって太陽に近づくのと同じことでした。


9.8マンとバットマンが戦ったらどちらが勝つと思いますか。

 困った質問だなあ。そんなの想像できないよ…… たぶんジャンケンで勝負を決めるんじゃない? 


10.手塚治虫の『ブッダ』をどう思いますか。

 よくできたフィクションです。とてもおもしろく読めるのですが、真のブッダの哲学とは違うものだと思っています。

(チップ・キッドは英語版『ブッダ』のデザイナーをしてました。いっぽう桑田次郎もご存じのように仏教マンガを多く描いてます)


11.バットマンの新作を描いてみたいですか。

 もちろん。


*****

 バットマンが日本でも超メジャーだったに違いないと信じてる(?)インタビュアーと、実はそうでもないんだけどなー、と思ってる(?)桑田先生が、微妙にズレてるところが味わい深いインタビューとなってますね。

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Comments

予想通りのアンチコメントが上がってきていたので一言。
唐沢問題の本質は引用元を明記しなかったことと、指摘されても認めなかったことにあるかと…。
グレー部分に関してはとりあえず議論してどうなることではないし、あとは信用の問題ですね。

Posted by: くもり | November 09, 2008 01:57 AM

>DOSS 様

出ましたね。

あなたはもういいからご自分でサイトをお作りなさい。

Posted by: kamikitazawa | November 09, 2008 12:52 AM

似たようなことをよくやっているので書きますが、まずここで漫棚さんのやられていることは「転載」や「引用」ではありません。
「抄訳」である時点で概要紹介ではあっても「引用」にはなりませんし、原文を転記しているわけではないので「転載」にもなりません。
これは梗概やあらすじを著作権侵害と考えられるのか? ということを考えてもらえればよくわかると思います。現行の著作権法の規定上、翻訳は「変形」にあたるため、むしろ引用箇所を特定した翻訳引用のほうがグレイな領域になるのですが、これも慣習的にほぼ問題にされません。
今回の漫棚さんのケースでは
1もっと自分の言葉に書きくだしてはっきり概要紹介だとわかる形式で書く。
2著作権法上の引用の規定を満たすかたちで引用元を明示して細かく翻訳する。
のどちらかの形にしたほうがベターだったと思いますが(たとえばオレなら後者のやり方をします)、現在のかたちでも著作権侵害とはいえません……というか、批判したいなら自分で著作権法と実際の判例くらいは当たるべきでしょう。

Posted by: boxman | November 08, 2008 04:20 PM

無断訳出・転載だあ~唐沢さんを笑えないぜっ。

Posted by: DOSS | November 08, 2008 12:59 PM

誤解があればお詫びします。漫棚さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。

Posted by: えっ | November 08, 2008 02:14 AM

>えっ 様

そういうあなただって<キビシイ>なんてカタカナで書いて<揶揄>してるじゃないですか。後付けの嫌みったらしいお為ごかしは非常に不愉快です。あなたは攻撃者で荒らしですよ、漫棚さんの誠意溢れる回答にも何の反応も示してないですしね。

Posted by: kamikitazawa | November 08, 2008 01:30 AM

ニホンゴハタダシクとカタカナで揶揄されましても、私は今回のことを盗用とは一切、書いておりませんが。漫棚さんが盗用に対して厳しい姿勢を示しておられると書いているはずです。今回のことは無断で翻訳公開と記していませんか?

著作権法上の引用に当たるかどうかは議論の分かれるところですよ。ただ、私が指摘したかったのはそういう点ではなく、漫棚さんは盗用事件に対して厳しく接しておられるだけに、ご自身でも著作権、版権関係には慎重になったほうがいいのでは? ということです。敵も常にここを見て、事あらば反撃しようと考えているんでしょうから、つまらないことで足を引っ張られるようなことになったらつまらんでしょう。私としては攻撃したり、荒らしたりするつもりでコメントしたわけではないです。

Posted by: えっ | November 07, 2008 11:49 PM

盗用じゃなくてきちんと著作権法上の引用になっていると思う。
ニホンゴ ハ タダシク ツカイ マショウ。

Posted by: トロ~ロ | November 07, 2008 11:36 PM

ご指摘のとおり、こういう行為は微妙なところだと思っています。著書のフロクともいえるインタビュー部分を紹介するのが妥当かどうか。著書の紹介、宣伝として許されるのか、あるいは著作権侵害となるのか。著作権を持つ当事者からの連絡を待ち、あらためて対応を考えさせていただきます。

Posted by: 漫棚通信 | November 07, 2008 10:10 PM

盗用に関してキビシイお考えを常に表明している貴殿が、一般公刊物掲載のインタビューを無断でサイトに翻訳公開されることに問題はないのでしょうか?

Posted by: えっ | November 07, 2008 09:32 PM

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