積ん読はいけません
フランク・ハーバートのSF小説に『デューン 砂の惑星』というのがありまして、ハヤカワ文庫から邦訳開始されたのが1972年。カバーイラストと挿絵は石森章太郎でした。
アメリカでは1965年のヒューゴー賞/ネビュラ賞のダブル・クラウン。のちにデヴィッド・リンチの手で映画化されてます(デキはちょっとアレでしたが)。
小説は日本でも評判が良くて、半村良がパロディを書きました。宮崎駿『風の谷のナウシカ』の王蟲(オーム)のモトネタも『デューン』に登場する砂虫サンド・ウォーム(表記はワームのほうが良いのでしょうが、訳者の矢野徹がこう書いちゃった)ですし、『デューン』は萩尾望都が描く異星の風景にも影響を与えてるとにらんでおります。
ところがこの作品、わたしにとっては相性が悪いというか何というか、途中で挫折をくり返してなかなか読み通せない。数年にわたり何度も最初からリトライして、三回目の挑戦でやっと読了できました。続編もありますが、手を出してません。
ダメだったのが、トールキンの『指輪物語』。『ホビットの冒険』を読了して、さあ『旅の仲間』だと読み始めましたが、ホビット庄を出て宿屋に着いたものの、どうしても宿屋を出られない。これも三回アタックしましたがいつも宿屋で挫折。
わたしにとっての『指輪物語』は、ホビット庄からブリー村までの短い物語でありました。結局、やっと映画で全貌を知りました。とほほ。
マンガでいうと、これ。
●林静一『pH4.5 グッピーは死なない』(改訂版1999年青林工藝舎、2000円+税、amazon、bk1)
最初の版は1991年青林堂。男女のセックス描写の間に、歴史上の事件や人物や作品イメージがはさみこまれるというマンガで、もしかすると傑作かもしれない。しかし実はわたし、買ってから二十年近くなってますが最後まで読めてません。
何度も読み直してるのですが、途中でダウンしちゃうんですよ。セックスがまったく欲情を引き起こさないように描かれてるのが、かえってつらい。
で書棚のうち、こういう「積ん読」本ばかりを集めた棚、その奥のほうをのぞいてましたら、こんなマンガが出てきました。
●フジモトマサル『二週間の休暇』(2007年講談社、1238円+税、amazon、bk1)
おそらく今年になってから書店でジャケ買いしたものだと思いますが、持ってるのをまったく忘れてました。
長編とはいうものの100ページほどの薄い本。二色です。
女性がふと目を覚ますと、見知らぬ町の見知らぬ部屋。どうも自分は記憶をなくしているらしい。買い物に出かけるとそこは飛べない鳥たちの町。彼女は鳥の店でトウフやホウレン草を買い、部屋で晩ごはんをつくって食べて本を読んで寝ます。
というのんびりした展開。
この世界はどういうなりたちなのか、彼女はなぜここに来たのか。謎がラストで明らかにされます。
絵は絵本ふうで、コマはページを三段に分けた単純なもの。アメリカン・オルタナティヴというか、旧「ガロ」の香りというか。レモンを切って絞ってレモネードを作るまで、5コマもかける描写や展開やテーマと絵柄がベストマッチ。こちらが著者のサイトです。
今回初めて読みましたが、いやこういう作品を読みのがしていたとは。積ん読はいけませんね。
Comments
はじめまして。
私も石森イラストの『デューン』挫折しましたが、ナウシカの元ネタと聞いて数十年ぶりにトライしようかと思っていたところでした。
挫折したのは自分だけじゃなかった・・・。
関係ないですが、同じ石森イラストでも『アンドロイドお雪』は、小学生にもさくっと読めたなあ、と昔を思い出しました。
Posted by: kamomo | November 08, 2008 04:59 PM
フジモトマサルさんは、平凡社のサイト(http://www.heibonsha.co.jp/)に「夢みごこち」をweb連載しています。現在、第8話まで続いていますが、残念なことに最近3話分しか閲読できません。
フジモトさんのサイトで作品サンプルにでてくるOL羊のドリーさんの話は、「夢みごこち」の初めのほうの話だったような気がします。
平凡社のサイトでは他に「SUNAO SUNAO 100%ORANGE」という連載もあって、こちらも面白いです。
Posted by: 留公 | November 06, 2008 03:51 AM
クレジットは石森章太郎なので、石森作品として認知されてかまわないと思いますが、でも石森作品にしては、絵がちょっと冷たいな~なんてことを思う人もいるかもしれませんね(笑)。
Posted by: すがやみつる | November 05, 2008 06:44 PM
きゃー、そうでしたか。実はこの文章を書くにあたって『デューン』の文庫本を引っぱり出してきて、カバー絵や挿絵についての感想を書いたり消したりしてたのですが、いや危ないところでした。
Posted by: 漫棚通信 | November 05, 2008 06:40 PM
『デューン 砂の惑星』のカバーについてです。石ノ森章太郎先生が下絵まで入れたのは確かですが、砂を意識した点描から仕上げまでは、当時、アシスタントをしていた、ひおあきらが担当しています。そのせいで、キャラクターがすっかり、ひおあきらの絵になっています。
Posted by: すがやみつる | November 05, 2008 06:18 PM