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September 26, 2008

あなたの知らないピョンヤン

 邦訳されたのは二年前ですが、わたしが読んだのがごく最近なのでご紹介。

●ギィ・ドゥリール Guy Delisle 『マンガ平壌(ピョンヤン) あるアニメーターの北朝鮮出張記』(2006年明石書店、桧垣嗣子訳、1500円+税、amazonbk1

 著者はカナダ生まれ、フランスのアニメーター/マンガ家。2001年、アニメーション指導のため、二か月間ピョンヤンに滞在しました。うーん北朝鮮が外貨獲得のため、フランスアニメの下請けをしてるとは知らなかった。

 本書はその時の見聞をマンガでレポートしたものです。原著は2003年にフランスで出版されてます。

 著者は2000年に中国・深圳のレポートマンガを描き、昨2007年にはビルマ/ミャンマーについてのマンガも出版してます。ディープ・アジアのレポートですから、日本でいえば西原理恵子、かな。でももちろん、サイバラみたいにはっちゃけてるわけはなくて、本作はマジメでちょっと暗い感じの作品になってます。

 まあこれは、題材がピョンヤンだからしょうがないのかもしれません。人民との交流があるわけでもなく、現地のアニメーターとすらほとんど会話がない。アニメのできあがりを見てリテイクを出すだけ。話すのはガイドと通訳、ばかりで、著者にとってはずいぶんつらい二か月だったようです。

 食事はまずいし、仕事はおもしろくないし、友人ができるわけでもない。とくに生活に自由がない。

 単純な線で描かれた絵で、薄墨(色鉛筆かクレヨン?)で濃淡をつけています。この絵の感じからもダウナーな印象を持ってしまいます。原著もモノクロで出版されたものらしいです。

 本書中にもありますが、「外国人に認められる自由度は様々だ 最低レベルの自由しか与えられないのは 多分、取材にやってくるジャーナリスト」。というわけで、本書はジャーナリストよりちょっとだけ自由を許されていた、西側外国人の目をとおしたピョンヤン。

 北朝鮮は彼らをどのように遇しているか、逆に彼らからは北朝鮮がどんな国に見えるか。日本というフィルターを通さない、という意味でも、ここに描かれているのは、わたしたちの知らないピョンヤンです。

 マンガ読みとしては、日本以外、ベーデーではレポートマンガはどのように描かれるか、興味のあるところでありました。レポートマンガでもフランス作品はどこか芸術っぽい、と思うのは気のせいでしょうか。味付けが違う、という感じ。

 金正日の体調問題がウワサになってますが、北朝鮮の体制がいよいよ変わっちゃうかもしれないので、読んでみたいかたは今のうち……かも。

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Comments

 いつも楽しみに拝見していましたが、今回はじめて、コメント付けさせていただきます。
 この作品は、わたしはイタリアの雑誌に掲載されていたのを読んで知りました。その後日本語版が出たのを知って、その時にすぐに買ったのですが・・・。
「絵の感じからもダウナーな印象」と書かれていますが、日本語版は原著に比べて、ハーフトーンがきれいに出ていなくて、絵が汚く見えるように思いがっかりしたのを思い出しました。(マンガを出版し慣れていない出版社から出たせいかなあとも考えましたが。)
 もし折りがあれば、フランス語版の方も手にとって観ていただけると、絵の印象がだいぶ変わるんじゃないかと思います。
 日本の編集者がもっとヴィジュアル面に気を遣ってくれていたらなあと思います。本来はもっと魅力的な作品なのに、もったいない限りです。この作者の他の作品も、いいですよ。

Posted by: Hiroshi Koga | September 27, 2008 03:13 AM

コメントありがとうございます。
>ハーフトーンがきれいに出ていなくて
おっしゃるとおり、とくに大きな絵などつぶれてて何が描いてあるかわかりにくいぐらいになってます。わたし最初はてっきりフルカラー作品を日本でモノクロ印刷したんだろう、しょうがないなあ、と思っておったのですが、原著もモノクロだと知っておどろきました。ここはマンガの「紙」に対する彼我の違いがありますねえ。

Posted by: 漫棚通信 | September 27, 2008 06:42 AM

以前に図書館で読んだので、確かにこの本かどうか、確実ではないのですが、アニメーターがピョンヤンへ行く話なので、まず間違いないでしょう。

私がいちばん異様に思ったのは、電力節約のため、街灯が消えて星明りだけの真夜中の首都を、かなりの人間が(たしか荷物を背負ったりして)ぞろぞろと、黙々と歩いている。その足音が聞こえる。・・・というくだりでした。なぜ昼間でなく、夜歩いているのか、何かを運んでいるのか、主人公にも事情がさっぱりわからない、という内容だったと思います。

 ふつう外国へいくと、市場などのにぎやかなところの描写があるのですが、そんな描写があったのかなかったのか、あまり印象にありません。真夜中のぞろぞろ黙々について、何も種明かしがない、というところが、このミステリアスな国家の描写としていちばん印象に残っています。

Posted by: しんご | October 02, 2008 06:46 AM

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