ヤングサンデー終刊号
「週刊ヤングサンデー」終刊号=2008年35号を買ってみました。
終刊する雑誌は、みな尾羽打ち枯らしてるわけですから、きれいな終わりかたをするのはまれ。ただしヤンサンは余力をもって終わるから、最後にヤンサンの歴史をふりかえる小特集ぐらいあるかな、と思ってたのですが、まーったくそんなことはありませんでした。
表紙はいつものようにアイドル。ふつうにグラビアがあって、ふつうに連載中のマンガが載ってて。何も変わりません。マンガ雑誌の最終号の表紙がグラビアアイドル、ってのも何かさびしいと思うのはわたしだけかしら。
雑誌として歴史の回顧はしていませんが、作品内で触れているのが三作。島本和彦『アオイホノオ』には、ヤンサンの前身「少年ビッグコミック」が登場しています。ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』の最後のページでは、作者が「さらば、ヤングサンデー!!」と叫んでいます。
喜国雅彦『魔Qケン』にも作者が登場して、「ヤンサンの最後です。万感の想いを込めて、悔いのないよう女子高生の脚を描いておこうと思いまして」というコメントが。
ただ、雑誌全体の印象としては、連載陣の行く先の振り分けにばたばたしてて、いかにも落ち着きがない最期でありました。
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で、連載作品の移籍先がこちら。
(1)終刊号で終了した作品は三作だけ。意外に少なかったです。
●山田玲司『絶望に効くクスリ』
●とがしやすたか『新 青春くん』
●しりあがり寿『YSバックアッパーズ』
(2)「ビッグコミックオリジナル」に行くのが一作。
●山田貴敏『Dr.コトー診療所』。
(3)「ビッグコミックスピリッツ」に行くのがずいぶん多い。
●黒丸/夏原武『クロサギ』
●間瀬元朗『イキガミ』
●ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』
●高橋のぼる『土竜の唄』
●河合克敏『とめはねっ!』
●高田優『逃亡弁護士 成田誠』
●草場道輝『LOST MAN 』
●浅野いにお『おやすみプンプン』
●柿崎正澄『RAINBOW 二舎六房の七人』。
オリジナルとスピリッツに移籍する作品が一軍扱いでしょうか。
(4)「IKKI 」行きが一作。これは別リーグ行きという感じ。
●喜国雅彦『魔Qケン』
(5)本年9月末より、「ビッグコミックスピリッツ増刊号 YSスペシャル」という雑誌が月刊で刊行されることになり、二軍と判断されたらしい残りの作品が移籍します。
●北崎拓『さくらんぼシンドローム クピドの悪戯Ⅱ』
●猪熊しのぶ/室積光『都立水商!』
●秋重学『GO-ON! 』
●大谷じろう『美晴♥ライジング』★
●佐藤まさき『超無気力戦隊ジャパファイブ』*
●万条大智『あんころ。 船橋若松一丁目は馬優先』*
●中井邦彦『ドライブ・ア・ライブ』*
●藤原芳秀/七月鏡一『暁のイージス』*
●落合裕介/竹原慎二『タナトス むしけらの拳』*
●石渡治『Odds 』*
●近藤隆史『花の都』*
●森尾正博『ビーチスターズ』 *
●島本和彦『アオイホノオ』*
不定期連載の『アオイホノオ』も「YSスペシャル」行きですが、これは代打の切り札という感じかしら。
上記のうち「*」はPCでも配信。「★」はケータイ配信。
(6)ケータイ配信のみで雑誌掲載がないのが一作。
●木根ヲサム/垣川光太郎『まつろはぬもの 鬼の渡る古道』
(7)あと、不定期連載で行き先が決まってないのがいくつかあるそうです。
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わたしが心配してもしようがないのですが、スピリッツが重くなりましたねえ。現在の連載陣に加えて、さらにこんなに連載を増やしてどうすんだ、という感じです。競争させて作品をどんどん淘汰するか、それぞれの作品の連載間隔をかなり長くするしか手がないのじゃないか。まさかスピリッツから他誌へ転出する作品はないだろうし。
あと「YSスペシャル」は、名前からしても明らかにポストヤンサンの月刊誌ですが、二軍ばかりをそろえて勝算はあるのか。というか、とりあえず受け皿を作ってみましたという雑誌にしか思えません。
「YSスペシャル」が長期間継続して刊行されるとは考えにくいので、いずれは全面的にネットに移行するか、あるいは、早期につぎつぎと作品を終了させていくのか。となると終戦処理のための雑誌?
今回小学館は、雑誌休刊→連載全部終了、とするよりもそうとう複雑なことをしてるわけですが、将来の展望はあまり楽しくなさそうです。
Comments
山田玲司も『絶望に効く薬』の中で、結構休刊に触れています。
「おい・・・見ろよ。」「あのじじい、漫画家じゃね?」「絶薬とかやってパッとしないまま、掲載紙が休刊しちゃって・・・」「絶薬って漫画も、終わりにさせられるらしいよ。」うんぬんという読者の悪口に対して山田自身が、酒場のマスターに次のようなセリフを言っています。「なんか聞こえるよ、マスター。」「お前なんか、ヤンサンと共に消えろって・・・」
彼は、確か前回「ヤンサンの編集部は良くやってくれた」というセリフを沈みゆく<ヤンサンと書かれたボート>の上でつぶやいていました。
Posted by: natunohi69 | August 08, 2008 03:50 PM