世界なんか滅んでしまえ『世界制服』
榎本ナリコである、野火ノビタである。彼女の新作短編集がこれ。
●榎本ナリコ『世界制服』1巻(2008年小学館、533円+税、amazon、
bk1)
読み始めておどろいた。これって榎本ナリコ? 互いに傷つけあう孤独な人物しか登場しない、すばらしく辛気くさい作品ばっかり描いてる著者の新作がこれ?
コメディでパロディで、登場人物の言動がはじけてること。パンツ見せ率高し。これまでの作品と比べて眼の大きさが二倍となっております。いやこんな作品も描くんですねー。
タイトルは『世界制服』と書いてユニ・フォームと読ませ、実はユニヴァーサル・リフォームの略、ってことになってるようですが、ダジャレをさらにひねくりまわしてますね。
下敷きにされている作品や設定はおなじみのものばかり。巻頭の「高卒エスパー光」では、超能力者を自称する引きこもり少年のアパートに、突然美少女が訪ねてくる。「やっと出会えた仲間なのに!」 このすでにありふれた設定で、エロにせずコメディとしてどうオチをつけるか。
第二作「創世記」は、世界はリアルかヴァーチャルか、というディック的世界にオタク風味をまぶしたもの。
四作目の「最終兵器彼氏」では、タイトルがアレで、主人公が明と了というアレで、しかもオチが「銀河ヒッチハイクガイド」です。
しかし根が榎本ナリコでありますから。登場人物は痛い人物ばっかりだわ、世界は滅亡してばっかだわで、皮肉に満ちています。
基本的にオチのあるアイデアストーリーなので、心の黒さがにじみでているのはたいへんけっこう。フレドリック・ブラウンや星新一や藤子F先生に連なる系譜として読むのも可であります。
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