楳図かずお『赤んぼ少女』再刊
あいかわらず楳図かずお作品が、怒濤のごとく再出版されているわけですが。
●小学館クリエイティブから初期作品復刻
●朝日新聞出版からは、かつて朝日ソノラマから出てたものの再版「楳図かずお恐怖文庫」
●小学館から「楳図パーフェクション」シリーズ
いやもうどうすんだというくらい、いっぱい出てます。
個人的に思い入れがあるのは、リアルタイムで読んでた『半魚人』(1965年「週刊少年マガジン」連載)と『笑い仮面』(1967年「少年画報」連載)ですね。怖い楳図作品という意味では少女マンガ系には負けるかもしれませんが、こっちは物理的に痛そうなところがなんとも。
あと1966年「週刊少年マガジン」に載った『肉面』という短編がありまして、これはもう腰が抜けるほどコワかった。なんせ「肉」で「面」ですから、どんな作品かは想像してみてください。それぞれ今はこちら↓で読めます。
●楳図かずおこわい本7 神罰(2008年朝日新聞出版、楳図かずお恐怖文庫、485円+税、amazon、bk1) 「肉面」他を収録。
●楳図かずおこわい本11 異形1(2007年朝日新聞出版、楳図かずお恐怖文庫、485円+税、amazon、bk1) 「笑い仮面」前編他を収録。
●楳図かずおこわい本12 異形2(2007年朝日新聞出版、楳図かずお恐怖文庫、485円+税、amazon、bk1) 「笑い仮面」完結編を収録。
●楳図かずおこわい本13 怪物(2007年朝日新聞出版、楳図かずお恐怖文庫、485円+税、amazon、bk1) 「半魚人」他を収録。
今はもっとも豊富に楳図本が出回っている時期かもしれません。
さて楳図かずお「赤んぼ少女」が映画化されてますが、浅野温子は笑ってしまうくらいまるきり「楳図顔」ですねえ。映画化にあわせて出版されたのがこれ↓。
●赤んぼ少女(2008年小学館、952円+税、amazon、bk1)
1967年「少女フレンド」連載。かつて秋田書店サンデーコミックスでは『のろいの館』のタイトルで単行本化されてましたから、そっちで知ってるひとも多いでしょう。その後『赤んぼう少女』に改題され、今回『赤んぼ少女』に戻されました。
えーご存じ、あの有名な「赤んぼ」で「少女」のタマミちゃんです。
いつまでも赤んぼのまま成長せず、顔は醜く、心は残忍かつ邪悪、神出鬼没で怪力も持ち合わせるという、ある種古典的な究極の悪役。
その対極にはタマミの妹、能天気な天然系美少女の主人公、葉子が存在するのですが、今読むと、かつてとは印象が変わりましたね。
葉子が何も考えず、ただきゃーきゃー言いながら怖がってるのに対し、タマミのほうは天井裏や古井戸で自分の境遇に涙し、悪らつなことを計画しているのです。このヒトとしての陰影の深さの違いを見よ。
そしてタマミの決定的なセリフ。
「おまえはわたしにいじめられてばかりいたと思っているだろうが ほんとうはおまえがわたしをいじめていたのよ」
この言葉が正当なものかどうかはさておき、ここで正邪は相対化されます。
タマミに感情移入しながら読むのが、現代における『赤んぼ少女』の正しい読み方でありましょう。
Comments
中川翔子も、楳図顔だと思います。あごがない(小さい)ので、へび女にぴったりです。
Posted by: misao | August 11, 2008 09:33 AM
浅野温子には、「へび女」もやってもらいたいです。
Posted by: とらうま | August 10, 2008 07:11 AM