老いたり『美味しんぼ』
大長編マンガ『美味しんぼ』の暫定最終巻、102巻が発売されてます。
●花咲アキラ/雁屋哲『美味しんぼ』102巻(2008年小学館、524円+税、amazon、
bk1)
暫定「最終巻」という表現は、ストーリー的にも山岡と海原の親子和解がなされ、究極と至高のメニューの闘いも一段落したから。ただし秋には連載が再開されるはずなので、次巻以後も何もなかったかのように続くような気もしますが。
わたし、65巻あたりで脱落してましたので、今回ひさしぶりに102巻を買ってみました。
ま、親子の和解テーマは、どうでもいい感がただよってます。これまで20年以上、えんえんとくり返されてきたことですし、ちょっと飽きちゃったかな。
驚いたのは、花咲アキラの絵。しばらく見ない間に、登場人物全員の顔、横にふくれちゃってます。とくに栗田さん、えらく太ってしまってすっかりお母さん体形。102巻の書影でわかりますか?
栗田さんもねえ、初期を読み直してみると今の顔と全然ちがいます。小さな鼻、アタマに比べて首もカラダも小さく、江口寿史みたいな典型的な80年代ラブコメキャラでした。時の流れは顔と体形を変えてしまいましたねえ。栗田さんがわかりやすい2巻の書影を並べときます。
102巻でいちばん気になったのは、海原雄山。この枯れぐあいはどうよ。102巻書影にあるようにおだやかというかほとんど無表情。これがこの巻の最初っから最後まで続きます。全部コピーでもいいんじゃないかと思えるぐらい、ワンパターンの角度と表情です。
初期の海原雄山、「女将を呼べッ!!」と大騒ぎするわ、出された料理をなぎはらうわ、フランス料理店にワサビと醤油を持ち込んで店の人間を激怒させるわ、あの極悪さとアクの強さはどこへ行ったんでしょ。
作品としての『美味しんぼ』は、食文化をテーマにしたココロザシの高さ、そのマンガフォーマットとしての完成度など、まちがいなく名作だったし、ベストセラーにもなりました。
しかし20年以上続けるとどうしても、老いたなあという感慨がわいてきます。ストーリーもそういう傾向がありますが、とくにキャラクター。彼らも年をとってくるものですねえ。
※『美味しんぼ』ほぼ全巻に対するコメントを書かれたかたの記事がコチラ。
※かつてわたしが『美味しんぼ』を評した文章がコチラ。
Comments