桑田次郎版『バットマン』復刻!
桑田次郎(現在は二郎)版『バットマン』については何回か書いてきました。
●桑田次郎の「バットマン」
●桑田次郎と平井和正
●アメコミの戦後史
1966年1月、アメリカで実写版バットマンのTV放映開始。これが本国では爆発的な大ヒット。同年4月からは日本のフジテレビでも放映が始まります。
これに乗ったのが少年画報社でした。桑田次郎の描く『バットマン』は、月刊の「少年画報」では1966年6月号から、「週刊少年キング」では1966年23号から、ほぼ同時に連載が開始されました。
とくに「少年キング」では、それまで桑田次郎/平井和正『エリート』という超能力アクションマンガを連載中でした。そうとう人気のあったSFマンガでしたが、1966年22号でストーリー半ばでムリヤリ終了してしまいました。その翌週号から始まったのが桑田次郎版『バットマン』。まあ日本でバットマンが描けるのは、桑田次郎しかいない、という判断だったのでしょう。
バットマンやロビンのコスプレをした少年が「少年画報」の表紙を飾り、「少年キング」でもTVの実写版バットマンが表紙になりました。また「少年画報」の付録には、紙で組み立てるバットマンカーやらバットマンヘリコプターも。
さらに少年画報社は、アメコミのバットマンを翻訳した「バットマン」という雑誌も1966年7月から1967年2月までに7冊刊行しています。
ところが、日本でのTV版バットマンはコケちゃいます。あんまり人気が出ないまま1967年6月に終了してしまいました。まあなんつってもあのころ日曜夕方6時からには、「てなもんや三度笠」→「シャボン玉ホリデー」という怪物番組がありましたからねえ。
マンガのほうも、TV放映終了に先立って連載終了しています。「少年画報」では1967年4月号まで、「少年キング」では1967年15号までで終了。
その後「少年キング」では『エリート』の続編、桑田次郎/平井和正『魔王ダンガー』が1967年16号から連載再開したのですが、すぐに終わってしまいました。
と、このように不幸な経過をたどった桑田次郎版『バットマン』ですが、作品としては、これがもう桑田次郎のシャープな線で描かれたバットマンが絶品。はっきり言って本国版アメコミよりかっこいいです。わたし大好きでした。
この作品が復刻されることになりました。しかもアメリカで。
●Bat-Manga!: The Secret History of Batman in Japan(2008年Pantheon Books)
タイトルは『バットマンガ!』。左がハードカバー版、右がペーパーバック版書影です。書影クリックでアマゾンに飛びます。2008年10月28日発売予定。
いやー、なんというか感無量ですな。日本の古いマンガがアメリカで復刻されるとはね。
しかしあれですな、こういう本は日本人の手でこそ出版すべきだったんじゃないかしら。かつてアップルBOXクリエートから復刻予定とされてたことがありますが、あれは結局出版されたのかしら。
今回のアメリカ版の出版社Pantheon Books は、アート・スピーゲルマンとかクリス・ウェアとかダニエル・クロウズとかダビッド・ベーとか、オルタナティブ系のグラフィックノベルを出してるところ。
編者のChip Kidd は有名なブックデザイナーですが、コミックブック、とくにバットマンファンとしても知られてて、そっち方面の編著書がむちゃいっぱいあるひとです。ウチの書棚にもこのひとの本があったりします。
今回のアメリカ版は雑誌からの復刻だそうです。桑田次郎へのインタビューも載るみたい。
ハードカバー384ページ、ペーパーバックで352ページという分厚い本です。ページ数のちがいは、ハードカバーは限定版で32ページの短編が収録されているから。こういう商売をするか。さすがに桑田次郎版『バットマン』エピソードのコンプリートはされていません。ただしChip Kidd の本はずいぶんポップで変わったブックデザインなので、この本もどうなってるか楽しみ。
Chip Kidd と雑誌を提供したコレクターのSaul Ferris へのインタビューを読みますと、アチラでは桑田次郎はすでに「8マン」の作者として有名で、このインタビューでも「Kuwata-sensei 」と呼ばれています。
また今回の復刻にはデビッド・マッツケーリ(「Batman: Year One 」のマンガ家)が一枚かんでるそうで、そうだよ、このひと日本滞在中に少年画報社を訪問してたんだよ。そして版権を持ってるDCコミックスも出版に好意的だったそうです。
このインタビューでは、バットマンのおかげで「少年キング」の売り上げが伸びた、とか当時日本でのマーチャンダイジングは一過性だったが大成功をおさめた、てなことが語られてますが、それはちょっとちがうぞ。誰か教えてあげるように。
ちなみにこのページにあるバットマンのオモチャみたいなのは販売されてたものじゃなくて、「少年画報」1966年7月号付録の「バットマン立体映写機」であります。
日本語版(というのも何かヘンですが)が出版される予定はないそうです。コレクターのかたがた、ここは買いでしょう。
最大の問題がお値段でして、定価がハードカバー60ドル、ペーパーバック29.95ドル。日本アマゾンで買うとほとんど値引きがないうえに、日本アマゾンによる本日のレートでは、それぞれ6606円と3677円です。こりゃ高い。アメリカアマゾンで買うと、今なら予約割引があって37.8ドルと19.77ドル。送料約9ドルを足しても日本で買うよりずいぶん安くなります(そのかわり到着までに一か月近くかかりますが)。うーん悩めるところであります。
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Comments
>西郷虹星の「ハルク」
いやもう何があってもおかしくないといいますか、今度の映画が大ヒットしたらほんとに復刻されたりして。
Posted by: 漫棚通信 | July 28, 2008 10:37 PM
ロイ・ジャームスの「来週もバットタイム、バットチャンネルで」を覚えています。低年齢の子どもには、「てなもんや」よりも、「シャボン玉」よりもおもしろかった。ヒットしていたと思ったのに。マンガショップで、復刻してくれないかな。
Posted by: misao | July 28, 2008 09:17 AM
みみみ、みなもと太郎さんだー!!!
その昔、プレイボーイか平凡パンチかのギャグマンガであるとか、ホモホモ7とかいろいろお世話になりました(ナニが・微笑)。
暑さ厳しき折ですが、まだまだ頑張って下さいませ。
Posted by: トロ~ロ | July 27, 2008 11:31 PM
こうなったらどこか西郷虹星の「ハルク」を出してくれい。
Posted by: みなもと太郎 | July 27, 2008 10:18 PM
素晴らしい情報をありがとうございます。早速、米アマゾンで予約しました(ついでに"Watching The Watchmen"も)。
Posted by: SPOOKY | July 26, 2008 01:13 AM