これはトラウマになります。石川球太『白昼夢』
意外なところで意外なマンガにお目にかかりました。
1970年「週刊少年キング」が、江戸川乱歩作品をマンガ化したことがあります。タイトルは「江戸川乱歩恐怖シリーズ」。
(1)横山光輝『白髪鬼』
(2)桑田次郎『地獄風景』
(3)古賀新一『屋根裏の散歩者』
(4)石川球太『人間椅子』
(5)石川球太『芋虫』
(6)石川球太『白昼夢』
(7)石川球太『お勢地獄』
古書マニア、とくに乱歩マニアには有名なマンガだそうです。
このうち、横山光輝「白髪鬼」と桑田次郎「地獄風景」は、かつて角川ホラー文庫「ホラーコミック傑作選第5集 白髪鬼」(2000年角川書店、800円+税、amazon、
bk1)に収録されたことがあります。横山作品は今年の春に刊行された講談社漫画文庫「白髪鬼」(2008年講談社、780円+税、amazon
、
bk1)にも収録されましたので、現役で読むことが可能です。
問題は四作ある石川球太作品。
今は谷口ジローの師匠としても有名な石川球太ですが、彼の代表作といえば、『牙王』(1965年週刊少年マガジン)と『原人ビビ』(1966年週刊少年サンデー)という大自然を舞台にしたワイルドな作品ということになるのでしょう。しかしこのかた、とても奇妙な『巨人獣』(1971年週刊少年キング)という作品も描いてらっしゃいます。これは石川球人の名義で1998年太田出版から再刊されました。
乱歩作品をマンガ化した少年キングのシリーズでも、石川球太は少年読者を戦慄させまくったそうです。マンガ化された『白昼夢』がどんな絵だったかは、喜国雅彦が自分のコレクションを披露しているこちらのページで見られますので、コワがってください。
江戸川乱歩/石川球太の四作品は、これまでずっとまぼろしの作品となっていました。
で最近、少年画報社から東本昌平作品ばかりを集めた「ハルマン」という個人雑誌が発売されたのですが、この1号に、なーんとこのまぼろしの、江戸川乱歩/石川球太『白昼夢』が復刻されているではあーりませんか。
なんでまたこんなところに、といいますと、この作品を東本昌平が子ども時代に読んで、強烈な印象を覚えてしまったからだそうです。でもねー、『キリン』=東本昌平ファンは、石川球太作品を読んでどう感じるんでしょ。
江戸川乱歩による『白昼夢』は数ページの小品です。夢野久作が絶賛したこの作品ですが、マンガ化されても30ページ。今回の復刻は原稿紛失のため雑誌よりのスキャンですが、モノクロ部分もカラー化してあります。抑制されたカラリングで、これがなかなかいい感じ。
炎天下で香具師がただただ口上を述べてるという作品です。この単調なはずの作品が、石川球太の絵によって、ラストでいかに怖くなるか。いやー、これはトラウマになりますね。東本昌平と少年画報社は、よくもまあこれを復刻してくれました。
ああ、こうなると、江戸川乱歩/石川球太の『芋虫』が読みたいっ。これ実はわたしもうっすらと記憶にある作品なのですよ。どれだけ怖かったのか、も一度確認してみたくなります。
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Comments
うぁ、こんな作品があるとは、全く知りませんでした。
石川球太といえば、前述の【牙王】や【ウル】などの動物マンガ、、そして【冒険手帳】【おもちゃの作り方】といった少年向けのハウツー物のイメージしかありませんでした(【巨人獣】は異色作品ですが)。
これは読みたい!!
ヤフオクで【人間椅子】のページ切り抜きが出品されてますね。
Posted by: くるくる | July 20, 2008 04:20 PM