携帯マンガは救世主となるか
京都精華大学が発行している雑誌「KINO 」7号(2008年京都精華大学情報館/河出書房新社、1143円+税、amazon、bk1)読みました。
特集タイトルが、なんとも挑発的。
●21世紀のマンガ コミック雑誌の消滅する日
ちょうど今、マンガ雑誌におけるマンガ家編集者関係のきしみが噴出し始め、日本マンガのビジネスモデルが再検討されてる時期ですから、タイムリーですねえ。
この号の巻頭には、樹林伸(亜樹直、天樹征丸)×長崎尚志による編集者兼原作者対談とか、竹熊健太郎×中野晴行によるマンガ雑誌の将来は? についての対談とか興味深い記事も載ってますし、「21世紀のマンガ・ベスト60」というブックガイド企画もあるのですが、雑誌としての主張は、実は最後のほうでなされています。
編集長・熊田正史(もと小学館編集者、京都精華大学教授、マンガ学部マンガプロデュース学科長)による、「21世紀のマンガ研究 ついにやってきた コミック雑誌が消滅する日! それはメディアの交代なのか」という記事では、マンガの未来は携帯電話で配信されるマンガにこそあり、という宣言がなされています。
そしてその後、雑誌のラスト三分の一を使って、携帯マンガのレポートがつぎつぎと。
●メディア革命起こる! ケータイコミックは21世紀のマンガ文化の救世主となるか? NTT DoCoMo に聞いたケータイマンガの現状!
●ケータイマンガ意識調査! まだまだ認知度が低いケータイマンガだけに可能性は無限大!!
●ユーザーに聞きました! ケータイマンガのココが好き!
●次世代マンガはココから始まる ケータイオリジナルマンガが読める配信会社紹介 マンガ文化のさらなる可能性を求めて! これからは新作マンガはケータイで読む時代だ!!
●株式会社ビービーエムエフ(携帯マンガ配信の大手)代表取締役、谷口裕之インタビュー 倍々ゲームで伸びる携帯コミック市場! ペーパー優位のメディア界を逆転させ、次代のメディア王を狙う!!
●コミック雑誌では読めない! 21世紀の携帯マンガ・ベスト15
●携帯マンガとしてオリジナルマンガを提供している六田登インタビュー
●ケータイ配信初! 完全オリジナル定期コミック雑誌の挑戦!! ケータイマンガに雑誌があってもいいじゃないか!
●千葉大学教授(発達心理学)中沢潤インタビュー 受動メディアと能動メディアの中間だからこそ面白い! 心理学者が考えるケータイマンガの未来予想図!!
●京都精華大学での携帯マンガ開発研究のレポート 21世紀のマンガ家デビューはケータイから!!!
いやもう紙媒体には見切りをつけた、と言わんばかりの大特集。
携帯マンガをくわしくレポートし、さらにプッシュした記事としては、おそらく初めてのものになるでしょう。よく知らない分野のことでしたので、これは勉強になりました。
わたし自身はケータイは電話とメールしか使ってません。ネットにつなぐことはほとんどないので、携帯マンガを読んだこともありません。ですからホントにこの記事に書かれているように携帯マンガが巨大な市場になるのかどうか、よくわかんないのですよ。
現状のケータイの画面は、マンガ単行本で読むマンガのヒトコマより、むしろ大きかったりすることもあるのですから、たしかにマンガ配信としての可能性はありそうにも思います。
でも「紙の本」に魅せられてる自分としては、ダウンロードでマンガを読む、しかもケータイ、というのはなかなかついていけない話ではあります。
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Comments
始めましてMacと言います
貴重な意見ですね♪
携帯漫画の評価サイトがありましたよ
携帯漫画index
Posted by: Mac | December 10, 2010 03:00 PM
どうも。
面白く読ませていただきました。
私もKINO読んだので(まだ斜め読み)思ったことなどを。
タイトルに関して答えは、否だと私は感じてます。
まず、外部端末それ自体が発展途上段階なので、そこにコンテンツとして(マンガ)を移植することは、色々な弊害があると思います。
マンガと時間の問題(SE・音楽なども内包してます)はマンガというものの存在の根底を覆しうるものです。
可能性としては、ありえますがマンガが紙の上から消えディスプレイ上に完全移行することはやはり現段階ではあり得ない、と言うほかありません。
もしも近い未来、マンガがそのようなことになるのであれば日本が特有に進化させたマンガの文法とそれに伴うリテラシーが崩壊してしまいます。
私は京都在住で一度熊田さんにマンガを見せたことがあるのですが、私はあの人のマンガに関する見識自体少し疑ってるところがあります。
前世代的な人という印象は拭いきれませんでした。
のであの雑誌自体ちょいと怪しいところが無きにしも非ず、です。
というよりも、マンガを勉強中の学生自体にネット(携帯端末)で描かせるという事柄が無茶としかいえない。
私もそのようなマンガに一度挑戦したことがあります。
http://www.geocities.jp/sinju08/
これははっきり言って習作にとどまるものですが、考えることは多々ありました。
私も紙の上以外でのマンガの可能性というもの自体は十分あり得ると考えます。
しかし集英社・講談社等などの新人ウェブマンガを読んではいますが、新しいアイデアとともにマンガの表現を拡張するような才能は現段階では見受けられませんでした。
なので結局私は今現在紙にマンガをペンで描いてます。
マンガの可能性とか何とか言う前に学生はもっと学ぶべきことが沢山ある。
あの雑誌がプロパガンダにならずいい雑誌になることを祈るばかりです。
Posted by: ピータン永美 | June 18, 2008 09:53 AM
携帯マンガ、一度パケ放題にして、一ヶ月だけ読んでみてください。
マンガという媒体の新しい面が見えてきます。そして人間の「めんどくさがり」な面も…。
携帯マンガは、止まった映画?あるいは静止したアニメ?のような気配が感じられるのです。
コマが自動的に小さな画面で変わってゆくだけのに、なぜそんなふうに自分が感じるのか不思議でなりません。
携帯マンガの印税のパーセンテージが、各社・出版で、物凄く違うので、目が白黒です。
8パーセントから20パーセント越えまで、本当に様々…。
Posted by: zonco | June 18, 2008 01:30 AM