美しき『万祝』完結
望月峯太郎『万祝(まいわい)』が10巻(2008年講談社、524円+税、amazon、bk1)、11巻(2008年講談社、381円+税、amazon、bk1)同時発売で完結。
11巻はすごく薄くて、通常巻の三分の一の厚さ。10巻+11巻で、第1巻と同じくらいのページ数でしょうか。
かつて、山岸凉子『日出処の天子』花とゆめコミックス版の最終11巻でこういう奇妙な造本がありましたが、あれは作者が意図した連載終了の形じゃなかったのが理由らしい。『万祝』のほうは堂々の大団円なので、これはデザイン重視でこうなったのかしら。10巻11巻を並べるとかっこいいでしょ。
時代は現代日本。主人公フナコは15歳の女子高生にして格闘技の達人。退屈に過ごしていたフナコですが、伝説の漁師である彼女の祖父(故人)が残した宝島の地図をめぐる、海賊たちの争奪戦にまきこまれることになります。そして宝島をめざし、舞台はカリブ海、超巨大サメが生息する海域へ。
お話の骨格は、古い古いスティーブンソンの「宝島」そのままです。言ってみればこれほど古くさい物語もないわけですが、かつ、これほど血湧き肉躍る物語もそうはありません。地図がある、謎がある、敵との戦いがある、つかまったり逃げ出したりする、大怪獣があらわれる。海賊と宝捜しは、オトコノコの永遠の夢です。
著者にとっても前作『ドラゴンヘッド』の陰鬱な展開と異なり、『万祝』は徹頭徹尾、娯楽大作をめざした作品でした。思いっきりはじけて楽しく描いたのじゃないかしら。
主人公がまた、陰のない明朗闊達少女。現代日本の諸問題を全く忘れさせるような純粋娯楽のキャラクターとストーリー。アクションコメディの正攻法をやってます。絵も『ドラゴンヘッド』からがらりと変えて、明朗な絵、っていう表現もヘンですが、斜線による陰影を減らすとそうなるのかな。
こういう楽しく美しいエソラゴトは、現代のマンガ世界にもわずかしか残っていません。古き革袋に新しい酒を。これもマンガにおける挑戦でありましょう。トンがったところのないウエルメイドな作品ではありますが、完結してあらためて傑作だと感じました。
それにしてもこのマンガ、6年間かけた連載で、ひと夏のお話を語っていたのですね。いや完結してやっとわかりました。まとめ読みがオススメ。
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