渾身の一作『ハルコイ』
『ちはやふる』1巻にずいぶん感心したものですから、こっちも買ってみました。
●末次由紀『ハルコイ』(2007年講談社、400円+税、amazon、bk1)
四作が収録された短編集。とくに表題作「ハルコイ」。これがまた泣ける作品で。なんとうまい構成なんだろう。
娘がすでに嫁いでしまった50歳の綾子さんと、26歳で恋愛に臆病なのんちゃん(♀)は奇妙な友達どうし。のんちゃんがある男性を好きになったところから物語が始まります。
短編なのでこれ以上のストーリー紹介はしませんが、コメディふうに始まったお話は、そのラストにいたって、十人中九人は泣いてしまうはず。
実はわたし自身は、「泣ける」ことに大きな意味を感じていません。「泣ける」イコール「感動」ではなく、あれは手塚先生も言うとおり、テクニックなんですよ。うまく泣かせてくれたときは、ミステリでよく考えられたトリックを読んだときと同じように、感動よりも感心してしまう。
ですから、泣けるからといってすぐ「感動の作品!」という売りかたをするのはどうかと思っているのではありますが。
「ハルコイ」ではラストにどんでん返しが待っています。本作品では、その仕掛けでひとの感情をゆさぶるだけじゃなく、登場人物の心情を読者に想像させることで、涙を感動にまで昇華させることに成功しています。
小道具の白いワンピースの使い方もすばらしい。
きわめてテクニカルな作品で、これが著者にとって復帰第一作でありました。渾身の傑作。
Comments
読みました。「ちはやふる」も読みました。素晴らしい才能が再起できて良かった、ただただそう思いました。末次由紀のフアンになりました。盗作したからダメなんじゃありません。盗作なんかしなくても、立派な作品が描ける人だと思います。盗作問題の後始末も潔かった。
盗作しなきゃ書けない上に、ちゃんと謝ることもできない馬鹿とは比べたくもありません。
Posted by: SHIN | June 05, 2008 11:17 PM
夏目氏のブログより転載します。
「谷口ジロー「遥かな町へ」 独の漫画賞ダブル受賞 」
http://www.nnn.co.jp/news/080601/20080601001.html
Posted by: トロ~ロ | June 04, 2008 12:50 AM