日本マンガ学会第8回大会イン松山
朝起きてみるとけっこうな雨のうえ、天気予報でも大雨の報道。どうしようかと迷ったのですが、せっかく今日のために仕事のシフトも代わってもらったんだし、と考え、クルマで松山に向かいました。松山大学での日本マンガ学会のためです。
途中、高速道路でかなりの雨に出会いましたが、松山に着いてみるとそれなりの曇天。松山大学での日本マンガ学会第8回大会、2日目のシンポジウム『手塚治虫「再考」』を聴いてきました。
午前中は「手塚のルーツ/ルーツとしての手塚」というタイトルで、座長・宮本大人、パネリスト・竹内オサム、中野晴行、夏目房之介。
個々の話はおもしろかったのですが、パネリストの興味の方向が統一されておらず、やや散漫な印象になりました。「ユリイカ」2008年6月号で宮本大人が、竹内オサムがとなえる手塚の同一化技法、これをいつまで同じことばっかし言うてんねん、と批判してたのですが、これに対する竹内の反論がありました。残念ながら議論としてはかみあわず。
午後は、「手塚治虫の現在」というタイトルで、座長・小野耕世、パネリスト・伊藤剛、古徳稔(手塚プロダクション出版局長)、田中圭一。
なんつっても田中圭一の、「いかにして私は手塚治虫の画風を手中にしたか、さらにその特徴とは」という発表がおもしろくておもしろくて。実際に手塚キャラ=今はすでに自身のキャラをすらすらと描いてみせる実技に、会場、大注目してました。
さらに手塚プロの古徳氏が裏話を話す話す。
たとえば、手塚治虫の同級生が描いた本が二冊あるが、そのうちひとつの著者は同級生でも何でもない、という話。
えー、ひとつは泉谷迪『手塚治虫少年の実像』(2003年人文書院)で、これはわたしも読んだことがありますが、真摯な本だったという印象です。もひとつは、藤本明男『愛よ命よ、永遠に 手塚治虫少年ものがたり』(2007年文芸社)だと思うのですが、こっちがどうもすっごくアヤシイ本らしい。
そしてわたしにとっては、現在、手塚作品はパロディであっても「許諾」が必要となっている、という話におどろいた。
一週間前、田中圭一作品が手塚プロのチェックに持ち込まれてきた。「レオにあこがれている、オッパイが大好きな真っ白なライオン」の話。
手塚プロが修正を求めた個所は、(1)「レオの末裔」という部分、(2)オッパイを見て「ハアハア」の部分、(3)「手塚プロダクション正式許諾」という記述、だったそうです。
いやごもっとも、とけらけら笑いながら感じると同時に、パロディなのに許諾が必要なのか、という疑問がわいてきたのでありました。
さて、手塚治虫の現在を考えるにあたって、わたしの最大の疑問があります。
手塚は自身の過去の作品の修正をずっと続けてきました。その結果、過去と後年の絵柄が混在する珍妙な作品が後世に残されることなってしまいました(もっとも代表的なのが『ジャングル大帝』)。
これは自身が望んだこととはいえ、手塚にとっても不幸なことではないのか。読者諸兄や、手塚プロはどう考えているのか、という点であります。こういうことを聞いてみたかったのですが果たせず、また大雨の中、クルマで帰ってきたのでありました。
Comments
こんにちは。初めてコメントします。
手塚治虫って、昭和3年生まれですよね。
藤村さんって方は、昭和5年生まれですね。
http://item.rakuten.co.jp/book/4339207/
学友という意味は、同窓という意味で使用しているのでは
ないでしょうか?肝心の本も読んでいないので、コメント
はできないのですが、池田小にともに学んだ方がかっての学び舎や、ほぼ自分と同世代の手塚を自分自身と重ねて
評伝を出したのではないかと思います。
手塚プロの方も目くじらを立てるほどのことは無いと思いますが・・・
それは、ともかく手塚生誕80周年を祝うなら、アトムやジャングル大帝のオリジナルを早く出してもらいたいですよ。
ファンとしては。
Posted by: Keibabiboroku | June 25, 2008 10:10 PM
先日来、このコメント欄に中野晴行氏と伊藤剛氏の複数のコメント投稿がありましたが、漫棚通信の独断で削除させていただきました。
Posted by: 漫棚通信 | June 25, 2008 09:15 PM
文芸社って新聞に毎月派手な広告打ってますが、実態はほぼすべて自費出版ですからね。
編集者は持ち込まれた原稿の校閲どころか審査もしないとか。
・藤原新也「Shinya talk」
http://www.fujiwarashinya.com/talk/index.php?mode=cal_view&no=20061127
Posted by: かくた | June 23, 2008 01:06 AM