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May 09, 2008

連休読書

 この五月の連休中に読んでたマンガは、山上たつひこと手塚治虫なわけですが。

●山上たつひこ『神代の国にて 単行本未収録傑作選2巻』(2008年小学館クリエイティブ、1600円+税、amazonbk1

●山上たつひこ『原色日本行楽図鑑 THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami 4巻』(2008年小学館クリエイティブ、1700円+税、amazonbk1

●手塚治虫/みなもと太郎『手塚治虫WORLD 少年マンガ編 これがホントの最終回だ!』(2008年ゴマブックス、1300円+税、amazonbk1

●手塚治虫『おもしろブック版ライオンブックス』2巻(2008年小学館クリエイティブ、3600円+税、amazonbk1

   

 しかしあれですなあ、マンガの一線から退いて長い山上たつひこや、没後20年になる手塚治虫の新刊を、この時期になっても読めるとはねえ。現代作家以外だけ読んでてもマンガ生活できちゃいますね。

 それはともかく、四冊とも楽しく読みました。山上たつひこ『神代の国にて』は、かつて読んだことのある作品もあって懐かしい。山上たつひこがギャグ作家になる以前も以後も、前衛のひとであったことがわかります。

 『原色日本行楽図鑑』には、マンガだけじゃなくてエッセイが多く収録されてまして、これがまた虚構エッセイとでも言いますか、エッセイに書かれている内容がすでに虚構っぽいだけじゃなくて、作者の感想そのものも虚構っぽくて、いったい何を信用してよいやら、という文章です。これおもしろいなあ。

 みなもと太郎編の『手塚治虫WORLD 』は、むかしJICC 出版局から刊行されてたシリーズ『いきなり最終回』の、手塚治虫版。ただし手塚が単行本で描き直す以前の、雑誌版最終回を収録してくれてます。

 おどろいたのが『ジャングル大帝』の最終回。大空にレオに似た雲がうかぶ感動の名シーンがあるのですが、これ雑誌版では、1ページを12分割した、小さな小さなヒトコマだったのですね。わたしが読んだ『ジャングル大帝』は小学館ゴールデンコミックス版でしたが、すでにこのコマは1ページ全部を使ったものに修正されてました。

 みなもと太郎は「レオの特大ゴマは空々しく映る」と書いてますが、このゴールデンコミックス版は後年の講談社全集版よりケン一の顔の修正などが少ないですし、わたしとしてはここでの大きなコマが好きです。あれは(めずらしく)いい修正だったんじゃないかしら。

 『ライオンブックス』2巻では、「双生児殺人事件」が読めました。後半、他人が代筆してますが、ちょっと絵がアレすぎて誰が代筆してるのかよくわかりません。主人公の顔だけ手塚が描いた絵を切りはりしてます。さすがにこれでは、ということになったのでしょう。容疑者のひとりが女ことばをしゃべったり男ことばをしゃべったり、オマエは男か女かどっちやねん。確かに珍本です。

 わたし、2001年に『手塚治虫漫画大全集 DVD-ROM 』を買ったときには、これでもう手塚の本は買い納めだあ、と思ってたし、そういうふうにウチの同居人にイイワケしてたのですが(なんせ12万円でしたから)、なんのなんの、その後も手塚の本っていくらでも発売されます。カラー復刻なんかされちゃうと、これまた買ってしまうのでありました。

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Comments

手塚治虫だけでなく、横山光輝も、毎月単行本、文庫、コンビニ本が出されています。石ノ森章太郎だけは、ほとんどの作品が角川の全集でしか読めません。作品の再評価ができません。


Posted by: misao | May 13, 2008 09:21 AM

>手塚治虫は「い」や「こ」をつなげて書くのが特徴的ですよね。ライオンブックスなら、「宇宙空港」は全部他人の描き文字。続編の「オリオン137星」は二色部分が他人の字、モノクロ部分が手塚の字じゃないでしょうか。

ほんとうですね。・・・私の思ったより、自筆部分はずっと少ない......。それにしてもよく似た字を書くひとに清書してもらったものですね。

手塚治虫には大人まんがに手書きの作品が多いので、筆跡鑑定すると、面白いかもしれません。

このサイトで最近紹介のあった横井福次郎のネームは殆ど手書きのカタカナですね。趣きがあっていいです。

私は「化石島」で手塚が城青児(武部本一郎)に書いてもらった、絵物語タッチの部分と、手塚がそれを真似て絵物語風に描いた部分を鑑定しています。老年鑑定団です。

Posted by: しんご | May 12, 2008 10:02 PM

手塚治虫は「い」や「こ」をつなげて書くのが特徴的ですよね。ライオンブックスなら、「宇宙空港」は全部他人の描き文字。続編の「オリオン137星」は二色部分が他人の字、モノクロ部分が手塚の字じゃないでしょうか。

Posted by: 漫棚通信 | May 12, 2008 09:12 PM

「ライオンブックス」のネーム(セリフ)の文字は手塚先生の自筆なんでしょうか。

「来るべき人類」のイントロは画面に直接書いてあるナレーションの部分があるし、産経新聞の「ハトよ天まで」なんかも同じ文字なんで、多分自筆だと思っているんですが。

「来るべき人類」を読んだときは、この文字が映画のスーパーインポーズとそっくりの字体なので、さすが映画好きの手塚治虫だ、字までスーパーそのものだと思ったんです。

Posted by: しんご | May 10, 2008 08:49 PM

あ、そのダ・ヴィンチ版持ってません。今調べたら、まだふつうに買えるみたいですね。

Posted by: 漫棚通信 | May 10, 2008 01:29 PM

>昔のままが、絶対にいいですよね。
だから、DVDはまったく買う気になれませんでした。

そんごくうやリボンやライオンブックスなど、買って読もうかという気になる本がようやく出てくれるようになって喜んでおります。

Posted by: コウスケ | May 10, 2008 08:36 AM

『ジャングル大帝』の最終回。
ぼくは、ダヴィンチ版『この最終回がすごい!』で
解説担当をやらされております。
当然、雑誌でのカラー版をそのまま収録していて
描き直してしまったものではありません。
昔のままが、絶対にいいですよね。

Posted by: 長谷邦夫 | May 10, 2008 01:37 AM

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