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April 23, 2008

村野守美×池波正太郎

 こういう本が刊行されてます。

●村野守美/池波正太郎『池波正太郎江戸絵草子 女ごよみ』(2008年ホーム社/集英社、933円+税、amazonbk1
●『同… 男ごよみ』(2008年ホーム社/集英社、933円+税、amazonbk1

 

 村野守美が池波正太郎作品を描きました。江戸を書かせてこれ以上はないという名人の作品を、手練のマンガ家がマンガ化しています。1995年から1996年にかけて今はなき文藝春秋社のマンガ雑誌に描かれたものと、2004年からホーム社の「時代活劇」に連載されたものです。

 本書の作者紹介では村野守美の代表作をビッグコミックオリジナルの『垣根の魔女』としてますが、それはちょっと違うんじゃないかと。『オサムとタエ』なんかはどうかなあ。

 すでに1971年虫プロ「COM 」に登場した『ほえろボボ』で、村野守美はその圧倒的画力を披露していました。

 何がスゴイかといって、人物やイヌもそうですが、その背景がスゴイ。リアルというのとはちょっと違う、白黒のコントラストをきかせたスタイリッシュな背景。1971年当時の最先端ですが、今から見てもすばらしい。この背景は時代劇でも描かれ、写真を二階調化した感じの建物など、村野守美作品の背景はひと味違うのです。

 イエス小池『漫画家アシスタント物語』(2008年マガジン・マガジン)には、「劇画屋の絵はダメだ!」と怒鳴る村野守美先生が登場しています。やっぱその絵は、劇画とは異なる、リアルな背景へのアプローチだったのですね。

 本書でもその背景となる江戸風景はすばらしい。お話は池波正太郎ですからもちろんおもしろいのですが、これをちゃんとマンガ化できる人材が今どれだけいるのか。たいへん楽しく読みました。

 さて今回の作品集は村野守美の熟練の技、と言いたいところですが、ちょっと残念なことに、作品ごとの出来不出来がありすぎる。作品によってはえんえんとコピーの人物が続くこともあって、なんともはがゆいことであるのです。

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Comments

>作品ごとの出来不出来がありすぎる。

びっくりするくらいコピペで、そうでないところは
明らかに素人の描いた絵の回とかありましたよね…。
びっくりしたのは、違うお話の、全く別人でさえもコピペでごまかしてあること。
この、おそらくは編集サイドの良心のなさは、あんまりだと思いました。

でも5~6あるうち、半分ほどはちゃんとした回があって
絵もステキでした。
「女ごよみ」の方のお蕎麦の奴が、絵もお話も好きです。

Posted by: ほげお | July 04, 2008 07:49 AM

>作品ごとの出来不出来がありすぎる。

 残念ですねえ。わたしは「さいとう・たかを」のあの野暮ったい池波モノを早くやめて欲しいと思っておりますもので。

Posted by: SHIN | April 24, 2008 02:57 PM

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