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April 21, 2008

メメント・モリ『あぶな坂HOTEL 』

 萩尾望都ファンを自認しているわたしですが、『残酷な神が支配する』が連載されていた期間は、申し訳ないけど早く終わんないかなーと思っておりました。10年は長かった。わたし自身は現代怪談のつもりで読んでいました。それにしても児童虐待がテーマのこの作品、苦手でしたね。

 『残酷な神』終了後、萩尾望都は『バルバラ異界』を経たあと、絵本を書いたりしていましたが(絵じゃなくて文章のほうを担当)、最近は短編に回帰しています。『山へ行く』(2007年小学館)も短編集でした、これもそう。

●萩尾望都『あぶな坂HOTEL 』(2008年集英社、400円+税、amazonbk1

 「あぶな坂」というのは中島みゆきの歌だそうでして、わたしは今回初めて聞きました。

あぶな坂を越えたところに あたしは住んでいる 坂を越えてくる人たちは みんなけがをしてくる

 謎の「あぶな坂」に謎の女が住んでいて、そこにいろんな男たちが坂を転げ落ちてくる、という謎の歌です。女は喪服を着ていますので、どうやら不吉な歌らしい。

 萩尾望都は、ここを黄泉比良坂(よもつひらさか)であると考えました。この世とあの世の境、あぶな坂には「あぶな坂ホテル」が建っていて、亡者たちはここを経由してあの世に旅立っていく。あるいは生き返ることもあります。そのホテルには美人の女主人がいて、これがシリーズを通じた主人公、というか狂言回し。彼女、美人ですけど脱衣婆、あるいは三途の川の渡し守ということになり、日本的な死後のイメージですね。

 ホテルを訪れる亡者たちの物語。これが短編連作になってます。ですから本作品のテーマは真正面から生と死です。登場人物たちは、自分の死を知らず、このホテルにやってきますが、それを知ったとき何を見ることになるのか。あいかわらず萩尾望都の短編は、名人ワザでうまいったらない。でもテクニックだけじゃないんですよ。

 著者も、そしてこれを読むわたしも、もうそれなりの年齢。メメント・モリの意識は10年前より強くなっています。生死のテーマは、限りなく重いです。

 そして本書のサブテーマが、誰にとっても永遠に未解決となってしまう、親子の問題です。いくつになっても、自分が死ぬ瞬間になっても、親というのは(生きてても死んでても)ありがたいけどメンドーなんですよね。

 こういう問題を扱うことで、本書はりっぱにオトナのマンガになっているのです。

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Comments

『残酷な神が支配する』
ひさびさの新作だーっと喜んだら虐待に継ぐ虐待、精神的支配と自己欺瞞と洗脳と・・・・
たぶんおそらくきっと必ず、コレがずうぅぅぅぅぅぅっと続くんだろうなと思って、単行本数巻でギヴアップ。
だって、あまりに可哀想なんだもん。ぐすん。萩尾望都版「渡鬼」かよ。

「あぶな坂」は比較的安心して読めました。ほっ♪
ちなみに、ギリシャ神話で冥界の王はハデス・別名プルートー、冥府の河ステュクス(憎悪)あるいはその支流アケロン(悲嘆)の渡し守の名はカロン。
そのまんま冥王星とその衛星に名づけられているのは有名ですね。

Posted by: トロ~ロ | April 22, 2008 01:08 AM

萩尾望都と中島みゆきのファンなので、これは嬉しかったです。
中島みゆきによく似たワンカットがありますね。
萩尾望都は家族を描くのが、いつも痛いほど上手いです。
残酷な神~は、読み切れませんでした。

Posted by: とらうま | April 22, 2008 05:57 PM

やっぱり同じ作家さんが好きでも、好きなポイントが違うモンなんですねぇ。
私は萩尾作品の中で『残酷な神が~』が一番好きで、逆に今回の『あぶな坂HOTEL』は、次にやる長編への繋ぎというか、肩慣らし程度かなぁなどと感じてしまいました。

Posted by: ふー | April 23, 2008 11:08 AM

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