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March 16, 2008

児ポ法との戦いは終わらない

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰および児童の保護等に関する法律」が成立、施行されたのが1999年。これが改正されたのが2004年。

 そしてまたまた、日本ユニセフ協会が主導する形で、改正のキャンペーンがなされて話題になっています。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/11/news097.html

 今回、いろいろなところで議論されているのは、(1)児童ポルノの単純所持禁止と、(2)アニメ・マンガ・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化する、という主張が前面になされているからです。

 しかし、この主張は今回初めて登場したものではなく、すでに1999年の法律制定前からこの二点は議論のまとになっていました。

 なんでまたこんなに何度も同じ問題がむしかえされてるかといいますと、1999年の「児童買春、児童ポルノ禁止法」の附則第六条には、この法律の施行後三年を目途として再検討する、と書かれてて、さらに2004年の改正でも同じように附則第二条で、三年を目途に再検討、と書かれてるからなのですね。

 つまりこの問題は、三年ごとに、ほとんどエンドレスにくり返される運命なのです。

 (1)(2)の主張に対してマンガサイドから反対したのは、1999年のときは「マンガ防衛同盟」、2004年のときは「NGO-AMI 」でした。1999年でも、2004年の改正でも、(1)(2)が法律に含められなかったのは、彼らの運動の成果でしょう。

 とくに単純所持禁止については、日本ユニセフ協会などが2004年の改正時に強く主張し、自民党・公明党による法案にも盛り込まれていましたが、与野党の調整のなかでぎりぎりのところで削られたという経緯があります。

 で、また三年がたち、今回のキャンペーンが出現しているわけです。昨年3月にはこういうシンポジウムもありましたし、アチラ側では継続した活動がなされています。今回は民主党のなかにも(2)に賛成する議員がいたりして、たいへん不安です。

 (1)(2)に反対する意見としては、「NGO-AMI 」のサイトにある、2004年の改正時に出された『「児童買春児童ポルノ禁止法」改正への要望書』に言いつくされていると思います。ぜひご一読ください。

 (1)と(2)はまったく別の問題ですから、これをいっしょくたにした日本ユニセフ協会のキャンペーンには納得できないものを感じるひとが多いでしょう。さらに(2)には、「18歳以上の人が児童を演じるようなビデオなど」も含めるというのを聞くと、彼らの主張はいったい誰を、何を守るつもりなのかと思ってしまいます。

 この法律が成立すると、劇画系以外のエロマンガ、アニメ、ゲーム、は全滅です。多くのBLも消えます。それだけじゃなくて単純所持まで禁じられたら、いったい犯罪者が何百万人出現することになるのやら。

 マンガ内の女の子がオッパイ出すとき、ここまでならOK、これはダメ、とか複雑に規定されるのでしょう。もちろん男の子の尻すら描けなくなります。さらに、この子は18歳以上だ、イヤ未満だ、という議論も。

 いずれにしても、内田春菊「ファザーファッカー」のような小説は、絶対マンガ化することはできなくなりますな。

 若く見えるキャラクターが登場する性的マンガ・アニメ・ゲームを、一定量、継続して製作しているのは、今のところ日本だけです。日本の法律が世界の動向を決定してしまうかもしれません。

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Comments

誤解なさってる人も居るようですが、スナッフだのレイプ撮影だのといった事件で必要なのは、「行動力」と「監禁場所」。
それがそもそも無い日本の住宅事情では、児童略奪監禁強姦を周囲に発覚せずに行うなんてのは、まさしく至難の話です。
そもそもアメリカでは「隣家まで自動車で10分」なんてイナカな箇所が少なくなく、それゆえに拉致監禁だの怪しげな集団が集会をやってたりだの発砲の練習をしてても、なかなか発覚しないわけで。
あとアメリカの場合、国土に対して居住地域が広すぎることの弊害で、離婚・別居した相手との子供の親権を巡って奪い合いとなり、そこから「我が子を誘拐」しに走るというパターンもあります。

また、ネットなどで流通している児童ポルノ写真や動画では、一緒に映っている大人というのがどう見ても「その女の子の父親や親しい男性」らしいパターンが目に付くわけで、つまりは「児童ポルノの製造の規制」に関して言えば、“父親教育”こそが必要であるという結論になってしまいます。

一方、アメリカの「票田」には、いわゆる『「聖書主義」地帯』(バイブルベルト)と呼ばれる地域の人たちが居り、こういう人たちはある種“頑迷”といいましょうか、「世界は聖書に書かれている通りに作られた」と“本気で”信じ込んでいる事が少なくないのだとか。要は、「清教徒主義(ピューリタニズム)」が過剰であるがゆえに、他者に禁欲や禁酒を無理強いする事が多いってことでしょう。

ただ、それを本気で施行すると、いわゆる「禁酒法」の二の舞といいましょうか、所詮はアングラ勢力の資金源に成り果てる恐れが大だと自分は思います。だって、需要というか「未成年女子とイチャイチャしたい」って欲望を持っている人は、どの時代にも必ず一定数は居るんですもの。それを『代償』という形で性欲を発散できているからこそ、日本では戦後すぐの時代から見れば、驚くほどに児童強姦の報告件数が減ってきているのも事実なのです。
(参考データ・http://supplementary.at.webry.info/200704/article_9.html)

Posted by: guldeen | March 21, 2008 12:08 AM

>>結局、すべてが感情論に近い気がする。

自分もそう思います。
そして、今回の件については特に、それが“大衆”に対しても
ある程度説得力を持ってしまう辺りなのが危惧されます。
日本人は特にそういった“雰囲気で判断する”、
いわゆる「KY」wなスタイルがお得意ですから・・・・

ポルノビデオやエロ写真集がこれだけ氾濫していても
「大元から無くせ!」論が出ないのは、ある意味
「ゾーニング」がしっかりしている部分があるからだと
思います。社会的にも“歴史的”にも。
その辺に関する「甘さ」が、2次元創作物に対する
こういった人々の危惧と警戒、敵意、そして付け入るスキを
一層与えているのではないかとも感じます。

Posted by: 通りすがり | March 17, 2008 05:50 PM

…米に言われちゃどうしようもないよなぁ
敗戦国にはどうしようもない

 ※関係ないが、離婚が気になる
  神に誓ってるのにもかかわらず離婚するのが気になる

Posted by:   | March 17, 2008 07:28 AM

結局、すべてが感情論に近い気がする。
本当に有意な統計は取られていない気がするし、漫画の影響とかいうことにたいしての医学的な根拠などは出されていない。
そういった意味ではかわいそうだからクジラを捕るなとかと変わらない気がする。
「嫌悪感を抱くから」ってのがデカイんじゃないかな?
個人的にはY太とかは個人的な感覚として全否定だが、法律で規制するようなもんじゃない。
落ち着いて議論してほしいが、そういうのがかなうようなもんじゃないし難しいよね。

Posted by: CCC | March 17, 2008 01:20 AM

今回は駐日米大使が法務大臣に面会して「児童ポルノ輸出大国ニッポンを何とかしてくれ」と直接的に言ってきたそうです。
「単純所持」と自称しながらも、ネット経由での日本からの児童ポルノの氾濫に頭を痛めておるようです。

米国は児童誘拐が年間1万人に達している社会。人気のある刑事・犯罪ドラマでも必ず取り上げられます。実際、監禁陵辱・スナッフムービー・移植用臓器売買など、眼に余る現状があります。
米国では「鑑賞」にとどまらず「実行」に及び「習慣的に止められない」ところまで行くので「封じ込め」に必死です。

私は小中学生の水着や体操服の写真誌にも嫌悪感を抱く方です。しかし一方では、マンガにおける性的表現に慣れ親しんで成長した世代でもあります(リアルタイムのハレンチ学園から)。

たとえば「謎の彼女X」や「ガンスリ」などの表現物が禁止されてしまうのは正直ツライです。しかしながら「自分が何をされているのか理解できない」子供が現実に性的被害に遭うことは全く許せません。
あくまで「お遊び」の世界ならば、映画でも「ミネハハ」や「エコール」などの古典的名作があるように、認めても良いのではと思います。

ところ変われば人間も変わり、フィクションの刺激から現実の行動に到るものなのでしょうか?
ううーむ。

皆さんの真摯なご意見を期待します。

Posted by: トロ~ロ | March 17, 2008 12:03 AM

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Tracked on March 16, 2008 09:57 PM

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