「炎」対「焔」
島本和彦『アオイホノオ』1巻(2008年小学館、514円+税、amazon、bk1)が刊行されました。
島本和彦の自伝的マンガ、と読んじゃいけないのかな、最初のページ、やたらでかいフォントで「この物語はフィクションである。」と書いてありますから。
1980年代はじめ、大阪芸大に学ぶ主人公。彼はのちの熱血マンガ家ホノオモユルです。でも漢字では「炎尾燃」じゃなくて「焔燃」。
これがタイトルの由来です。まだあかあかと「炎」として燃えあがってはいない、青い「焔」。
主人公はまだ何者でもありません。マンガ家かアニメーターになりたいという夢だけは持っていますが、まだ作品は描いていない。「オレはスゴイ」と「オレは全然ダメだ」、この気分が日ごとに、どころか数分ごとに入れかわります。「新人」マンガ家のあだち充、高橋留美子、細野不二彦作品にうちのめされ、同級生の庵野秀明たちの才能に嫉妬する。そして意味もなく腹筋を鍛えてしまう。
何者かになりたい、と煩悶していたあの日こそ、「アオイホノオ」です。いいタイトルだなあ。このタイトルだけで座布団五枚。
1巻では主人公は、何も始めていません。やさしく見守ってくれる女の子もいる。ですから今のところ読後感は、まるきり松本零士『男おいどん』ですが、きっとこのままでは終わるまい。次巻で彼は立ち上がる(はず)。「焔燃」がどうやって「炎尾燃」になってゆくのか楽しみです。
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