« 登場人物全員鈴木先生 | Main | 古くてスミマセン »

January 22, 2008

いがらしみきお新作ふたつ

 マンガの絵柄というのは、長く描いてると変わってしまうものだそうですけど、たとえば高野文子。初期から今まで、ずいぶん変化しました。これは意識的なものなのかしら。それとも自然に線が変化しちゃったのでしょうか。

 意識的に絵を変えた作家としてぱっと思いうかぶのが、森下裕美。ごく初期のひさうちみちおふうから、江口寿史ふう、レディコミふう、安西水丸ふう、高橋留美子ふう、といろいろ試したあと、『少年アシベ』のカワイイ系四コマタッチで完成。と思ったら、『大阪ハムレット』でキタナイ系に変えちゃいました。

 このひともそう、いがらしみきお。ブラックな四コマから『ぼのぼの』へ。そして『Sink』(1巻2002年、2巻2005年竹書房)でホラーマンガを描くにあたり、リアル系の絵に挑戦しました。

 で、昨年末、12月31日という微妙な日が発行日となっている、いがらしみきおの新作が二冊同時発売。わたしが手に入れたのは今年になってからです。

●『いがらしみきおモダンホラー傑作選 ガンジョリ』(2007年小学館、905円+税、amazonbk1
●『かむろば村へ』1巻(2007年小学館、819円+税、amazonbk1

 

 『ガンジョリ』はホラーマンガの短編集。四作品が収録されてますが、『Sink』と同じようにホラーマンガらしく、絵で怖がらせようとしてくれてて、いいなあ。いがらしみきおの考えるホラーは「因果はよくわからないけど、絵が怖い」というもののようですね。こういうのは好きです。

 『ぼのぼの』の絵になれてるウチの中学生などはびっくりしてました。あとがきに「ワタシも漫画家としてはそろそろ晩年なので」とありますが、いがらしみきおは、こういう絵が描きたいひとのようです。

 『かむろば村へ』は、ビッグコミックに連載中、ロハスがテーマ(?)の「大人のための、甘さ控えめファンタジー。」(←オビのコピー)だそうですが、少なくともハートウォーミングな作品ではなさそう。

 過疎の田舎で農業を始めた独身男性が、いろいろといやーな目にあっていくという、岡林信康の歌(田舎のいやらしさは蜘蛛の巣のようで、というやつね)みたいな話。五十嵐大介『リトル・フォレスト』の対極ですな。

 著者はここでまた絵を変えてて、主人公の顔などは、ホラーで描いてたリアルなタッチからちょっとマンガ調にもどしてます。

 まだ話の全貌が見えないのですが、一部スーパーナチュラルなシーンもありますので、ぬるいファンタジーじゃなくてこれから驚愕のホラーに変化していくとたいへんウレシイのですが。

|

« 登場人物全員鈴木先生 | Main | 古くてスミマセン »

Comments

はじめまして。いつも楽しく見ています。

高野文子の絵柄の変化については、2007年のユリイカ「松本大洋特集」で
松本大洋との対談で、「私は絵柄を変えちゃえば新鮮に描けるし…」と
語っていますので、絵柄の変化は意図的なもののようです。

Posted by: とらうま | January 23, 2008 04:29 PM

いがらしみきおはいくとこまでいっちゃって、「ぼのぼの」で再生してきたんですよね。あの破滅に向かっていた「ばかやろさま」とか「どーせ死ぬんだ」のいがらしの凄みがすきでした、松本伊予吉とか。そういや、相原コージもいくところまでいって「白くま」で蘇ったんでしたっけ。「獣の戯れ」には癒し能力があるのかしら。

Posted by: SHIN | January 23, 2008 11:14 PM

いがらしみきおの絵は、デビュー当時から一旦休筆するまでの方が変化が激しいように思います。
作品を年代順に並べた単行本『家宝』を見ますと一目瞭然。『ネ暗トピア』なども、掲載されている作品の発表年代がバラバラなので、絵だけに着目して読み返しますと本当に同一人物の作品なのかと思うことがあります。
それでも読んでて違和感がないのはギャグに一貫性があるからでしょうか(笑)。

休筆前の短編「正しい苦悩のすすめ」(『ネ暗トピア』6巻収録)を見ますと、いがらしの絵はこのころすでに完成しているのだなと思います。大ゴマで「忘れてたァ~~」とつぶやく川馬鹿先生の表情とか。

Posted by: かくた | January 24, 2008 06:26 PM

いがらし氏は、かつて「物語は終わった」「映画も音楽も
終わっている」このことを言わないと、前へ進めない~
といったことがありましたね。
コンピュータ雑誌のインタビューに答えたものでしたが。
「コミックボックス」誌が、その発言に対して、文化人
マンガ関係者からのアンケート特集をやりました。
あの時代のことを思い出します。

いま、ポスト・モダン的なマンガ批評から
解釈すれば<当然>だとも言えそうです。
しかし当時は、みな、感情的に反撥して
いたんです。
ぼくの答えた言葉も間違っていたと、今になって
思い返します。

Posted by: 長谷邦夫 | January 24, 2008 10:48 PM

いがらしみきお氏の発言は、伊藤剛氏のテヅイズデッドでとりあげられていましたね。その意味でいがらし氏の近作は、キャラからストーリーへの回帰でしょうか。

Posted by: 漫棚通信 | January 25, 2008 02:00 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference いがらしみきお新作ふたつ:

« 登場人物全員鈴木先生 | Main | 古くてスミマセン »