誉めまくり『漫画ノート』
いしかわじゅん『漫画ノート』(2008年バジリコ、2000円+税、amazon、bk1)読みました。
いや実に幸せな気分になれる本でした。この膨大な数のマンガについて書いた本書で、いしかわじゅんは基本的に誉めて誉めて、誉めまくってます。
実際にやってみればわかりますが、けなすのはかんたん、誉めるのはムズカシイです。いしかわはそれをかるがるとやってのけている、ように見せています。そのあたりが腕ですね。
マンガの語り方はいくつもあると思いますが、かつて夏目房之介が『マンガ学への挑戦』(2004年NTT出版)で、
マンガ批評のなかで見れば作家主義的な場所にいるいしかわじゅん
と書いたように、いしかわじゅんの読み方、語り方は、作者の位置に立脚してその意図を読み解くというもの。その立脚点が「明らかにマンガの受け手、消費者側にある」岡田斗司夫とは対極の立場です。
本書でもいつものいしかわ節が見られます。「○○はいいものを見つけた」「ある日、どこかの時点で、彼は○に気づいたのだ」「○○は、ただ○の話を描きたかったのだ」
これがホントにそれぞれ作者の考えているとおりかどうかはわかりませんが、いしかわは自身の体験から、こうにちがいないと言いきってます。これこそいしかわが実作者であることのアドバンテージですから、そのスタイルは一定してぶれまていせん。
前著『漫画の時間』との違いは、図版の引用から©が消えてます。これが12年の差。
わたしが読んでない作品がかなり多いです。ああ、あれもこれも読みのがしてる。でも絶版になってるのもけっこうあるしなあ。それがクヤシイので誤植をひとつ指摘。「赤胴鈴之介」じゃなくて「鈴之助」です。
Comments
読めば読むほど、いしかわさんは、不思議な境地に
入り込みかけているなあ~って感じます。
新聞には、それをどう書けば読者の方に分かって
もらえるのかな~??って、悩んでます。
Posted by: 長谷邦夫 | February 02, 2008 12:17 PM
うーん、耳が痛い。自戒しなきゃ。
Posted by: 漫棚通信 | January 31, 2008 04:17 PM
褒める批評家より、貶す批評家の方が優れているような勘違いがありますね。「あんなの褒めて、甘いなあ」なんて。だから、ネットの書評ブログでも「ガチガチ書評家の辛口ブッタ斬り!」みたいなタイトルが多いですよねえ。
Posted by: 藤岡真 | January 31, 2008 02:26 PM
ぼくは批評ってものが価値があるのは
「褒める」ってことに尽きると思う。
貶すのも自由なんですが、そのときは
貶された当人にチカラを与えるもので
あることが大切だと思う。
「マンガも描けないくせに貶す批評家なんて~」
みたいな批評家否定の考え方。
批評によってされた者が、新しい視野を発見する
そんな批評文が書けたらと思ったりします。
『漫画ノート』評は、2月中シメキリで
「東京新聞」(「中日新聞」)に書く
予定で、現在ノートを読んでおります。
Posted by: 長谷邦夫 | January 30, 2008 06:39 PM
下記の記事を知って即効で来ました。
読者が漫画評論サイト…本の販売にも影響
http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080130nt0e.htm
>誉めるのはムズカシイです。
そのとおりです。
今頃、人をけなすことしから知らない盗作作家は、都内でYoutube動画のイベントの準備中。著作権侵害のMAD動画を勝手に上映するという、どこまで盗むんだお前は?っていうぐらいアホなイベントやってます。アホすぎます。
見ている人は見ています。仕事が評価されるのは素晴らしいことです。応援していますよ。
Posted by: 2ちゃんねらー | January 30, 2008 05:31 PM