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January 27, 2008

樹村みのりカムバック

 樹村みのりの新刊が発行されてます。

●『見送りの後で』(2008年朝日新聞社、580円+税、amazonbk1

 「眠れぬ夜の奇妙な話コミックス」というレーベルでの刊行ですが別にホラーじゃありません。でもこれを朝日ソノラマにかわって朝日新聞社が出してるというのも、なんかまだ違和感ありますねえ。

 1990年代になって樹村みのりは活動をぐっと縮小してしまい、残念に思ってました。1996年ごろに講談社の「Views」という雑誌にヤマギシズムを批判した記事が掲載されたことがあり、彼女がイラストを担当していて、こんな仕事してたんだと驚いたことがあります。

 ほかには『セクシュアル・ハラスメントのない世界へ』(2000年有斐閣)や『女性学・男性学 ジェンダー論入門』(2002年有斐閣アルマ)というフェミニズム系の本に短編マンガが掲載されているのを読みました。

 2005年には「comic 新現実」5号に、大塚英志による樹村みのりインタビューが掲載。そして『冬の蕾 ベアテ・シロタと女性の権利』(2005年労働大学出版センター、630円+税)が発行されました。日本国憲法の作成にかかわったベアテ・シロタ・ゴードンの生涯を描いた意欲作。以前はネットじゃなかなか買えませんでしたが、最近bk1で取り扱ってます。amazonは扱いなし。

 さて、今回の『見送りの後で』という短編集ですが、なんつっても『星に住む人々』に驚いた。この作品、1976年に描かれた『星に住む人びと』というマンガのリメイクです。

 元版は、「別冊少女コミック」1976年11月号に掲載されました。

 当時1976年の「別冊少女コミック」という雑誌は、6月号で萩尾望都「ポーの一族」シリーズがすごく盛り上がって終了、大島弓子や竹宮恵子も定期的に意欲作を発表、翌年3月号では吉田秋生デビュー、という時期でして、樹村みのりも代表作のひとつ、菜の花畑シリーズをこの時期この雑誌に描いてます。

 だもんで、わたしもこのころは毎月「別コミ」買ってましたよ。

 『星に住む人びと』は、社会に対して意識的に目を向けて生きようとする日本人少女の半生記。ベトナム戦争の終結をマンガのラストに持ってくるという感動的な作品でした。小学館の総集編雑誌「プチコミック 樹村みのり/ささやななえの世界 PART-II 」1979年1月号に収録されたあと、単行本としては小学館じゃなくて秋田書店の『星に住む人びと』(1982年秋田書店ボニータコミックス)という短編集に収録されてます。

 で、この作品が今回『星に住む人々』のタイトルでリメイクされているのですが、同じ絵は、主人公が描いてる仏教画の壁画がワンカット出てくるだけで、その他は全面改稿されてます。でもセリフはちょっと変えられてるだけでほぼ同じ、コマのレイアウトや絵の構図も大きな変化はありません。あ、作者の他の作品にも登場する「吉岡聡子」さんのソバカスがなくなってるか。

 正直、なぜ? という気持ちになりました。作者によると「タイトルを含め、今でも好きな作品のひとつなのですが、当時は思いどおりの絵が描ききれず、ずっと心に引っ掛かっていました」ということですが、ううーん、このあたり作者自身じゃないとわかんないことですねえ。わたしなどは1976年版の完成度は十分高いと思うのですけど。

 『見送りの後で』には五作品が収録されてますが、上記リメイク『星に住む人々』以外には1980年代作品が二作、2000年代作品が二作です。

 近作は『見送りの後で』と『柿の木のある風景』というタイトルです。前者は年老いた母親の死、葬式での女性主人公の心情を書いたもの。

 後者が圧巻で、昭和30年代の初めから現在まで、女性主人公の実家と隣家の関係を、ひとの生き死にでつづった年代記。こんな空間的に狭い範囲でも時間軸を長くすれば、スケールの大きな作品になるんだなあと感心しました。ああ、樹村みのり作品がもっと読みたい。

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Comments

さっそくアマゾンに注文しました。教えてくださってありがとうございます。

Posted by: not a second time | January 28, 2008 06:07 PM

<さて、樹村新刊『見送りの後で』読みましたよ!

なぞがひとつ解けました。
なぜ『星に住む人びと』をリメイクしたのか??
そうか、そうだったのか~
「当時は思いどおりの絵が描ききれず、ずっと心に引っ掛かっていました」とのお言葉が書かれていました。

私は実は『星に住む人びと』のアシをしましたので、その辺の事情はわかるのですが・・・
ええ、あの時はひどく遅れて、遂にカン詰になって徹夜徹夜で描くはめになり、みのり先生としては納得いかない絵だったのだろうとは思います。
でも人物の絵柄としてだけ見れば、当時の絵柄は可愛くて好きなんだけどなあ、私。>
と書いておられるのは、笹生那実さんですね。

Posted by: natunohi69 | January 31, 2008 08:22 AM

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