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December 07, 2007

山岸凉子問題

 竹熊健太郎『篦棒(ベラボー)な人々 戦後サブカルチャー偉人伝』(2007年河出文庫、850円+税、amazonbk1)が発売されてます。

 サブカルチャーにおける巨人にして怪人の四人、康芳夫、石原豪人、川内康範、糸井貫二に対するインタビュー集。わたしは太田出版版で読みましたが、いやあスゴイひとたちがいるものですねえ。おもしろいですよ。

 ところが「たけくまメモ」では、このタイトルのおかげで書店での検索がえらいことになっとるというエントリが書かれてます。

 本来『篦棒な人々』というタイトルなのに、多くの書店では箆棒な人々』で登録されてしまい、検索でヒットしなくなっていると。

 ウチもATOKなので「べらぼう」は「篦棒」と変換されますが、確かに(ウィンドウズの)IMEでは「箆棒」と変換されちゃいます。これで書店の検索システムではヒットしなくなることが多く、著者にとっても読者にとっても、そして書店にとっても、困ったことですねえ。

 こういうちょっとした漢字の違いで、検索でヒットしなくなることを、わたしはひそかに「山岸凉子問題」と呼んでおります。

 山岸凉子は正しくは「凉子」と書きますが、なぜか涼子とまちがって書かれることが多い。

 たとえばGoogleで「山岸凉子」を検索すると95800件ヒットしますが、「山岸涼子」でも56100件がヒットします。

 アマゾンの詳細サーチで、マチガイの著者「山岸涼子」作品を検索しますと、旧作ばかりですが13作ヒットします。古いものは修正されてませんねえ。

 しかし簡易的なサーチ窓を利用して「山岸涼子」で検索しますと、結果として「山岸凉子」作品が表示されるようになってます。以前はこうじゃなかったはずなので、いろいろと検索精度を上げる努力がなされてるのでしょう。ただし、逆に簡易検索窓で「凉子」で検索しても、「山岸涼子」作品にはたどりつけません。

 次はビーケーワン。ここのデータはすべて「山岸凉子」と正しく書かれているうえに、しかも詳細検索でも簡易検索でも、「涼子」でも「凉子」でもオッケーであるという、たいへんケッコウな結果になります。

 紀伊國屋はどうか。ここはなんと、最新作『ヴィリ』の著者をいまだに「山岸涼子」と記載してあって、ダメじゃん。簡易検索窓で「山岸涼子」と検索すれば「凉子」作品が表示されますが、「凉子」では「涼子」作品にたどりつけないのは、アマゾンと同じ。

 ですから、紀伊國屋では「山岸凉子」で正しく検索しても、いつまでたっても『ヴィリ』のところには行けません。

 データ入力時に漢字をきちんと正しく入力したうえ、凉子でも涼子でも検索できるようにしておかなきゃならないという、漢字を使用したデータベースの難しさであります。

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Comments

はじめまして。
山岸凉子問題、同感です。
これは日本語変換に対する熱意と精度及び漢字に対する愛情の問題に起因する事象だと思われますが、そこらへんでMSなどは日本語、漢字に対しいい加減な対処をすることがあり悲しく思っております。
ところで、IMEと言う場合、ATOKもIMEの一種ですのでよろしくお願いします。

Posted by: takkyu | December 07, 2007 08:31 PM

>IMEと言う場合、ATOKもIMEの一種
あ、そうでしたか。修正しました。それにしてもいつのまにやらFEPって死語になっちゃってたんですね。

Posted by: 漫棚通信 | December 07, 2007 09:09 PM

問題になっている漢字を含む単語は、大きなフォントで表示してください
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%bf%b7%ca%f5%c5%e7
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%bf%b7%d5%f0%c5%e7
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%bf%b7%d5%ef%c5%e7

Posted by: 赤木大介(akakiTaisqe) | December 07, 2007 09:22 PM

いや、そんな大げさなことの前に、
「??を??」の署名が「??お??」で登録されてるのも
けっこうありますよ。

Posted by: てんてけ | December 07, 2007 10:17 PM

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の「葛」は
下の部分が「ヒ」になっています。
正確には「人」と「L」の組み合わせで、
秋本の本もこちらの正字を使っています。
http://www.meiwasyobou.com/catalog/images/products/c1101/kotikame5.jpg


私は葛飾区でビラをつくったとき、地元の人にすべて直され、
特別な活字を使わされました。
印刷所に聞くと区の広報もすべてこの特別な活字を使うとのこと。
区のサイトでもかなりの分量を割いて、この問題を論じています。
http://www.city.katsushika.lg.jp/aisatu/katsushikakunituite.html

しかしネット上は葛飾区役所ふくめてすべて「葛」を容認していて
当然秋本の漫画も検索では「葛」しかありえません。
希有な例だといえます。

Posted by: 紙屋研究所 | December 07, 2007 11:12 PM

竹熊です。拙著をご紹介いただきありがとうございます。
漢字問題、まさかこのような事態に発展するとは、
10年前の初版刊行時には想像だにできませんでした。
しかし顧客データベースなどを日常的に業務で使う人に
とってはかねてから深刻だったようですね。

「篦棒」正字問題は、現在、河出書房の営業が対応に
うごいているようです。週明けにはなんとかなるかも
しれません。ならなかったりして。

実は河出の人に聞いたんですが、河出で「異体字の研究」と
いう本を出したところ、社内でも売れ行きを期待してなかったらなんとこれが売れて増刷したようです。
それだけ異体字・俗字の検索問題で悩んでいた人が
多かったのでしょう。ちなみにその本を企画した編集者も、
かなり珍しい字の名字だそうで、個人的な興味で企画した
本だとか。
今回の件は、個人的にも勉強になりました。

Posted by: たけくま | December 08, 2007 02:39 AM

河出の異体字本は「異体字の世界」という本でした。

異体字の世界―旧字・俗字・略字の漢字百科 (河出文庫 こ 10-1)

Posted by: たけくま | December 08, 2007 02:58 AM

著者の竹熊健太郎でひくと、近くの図書館にあるのがわかりました。読んでみます。ありがとうございます。

私は、あまりいろんな漢字を区別して使うことに反対です。たとえばわたなべさんという苗字は、以前は渡辺か渡部の2種類が書けたらよかったのに、このごろは渡邊とか渡邉とか、とても憶えられないような漢字をつかいます。(コンピュータだから書けるので手では書けない。私は辺で勘弁してもらってます)この2字の違いはルーペがないとわからないので、老眼には、ジジハラとしか思えません。こんな苗字のひとは渡辺に換えなさい。そのほうがトクですよ。

日本は戦争に負け、民主的な世の中にするため、漢字を簡略化しました。「恋」は戦前は 糸言糸+心 と書いた(わかりますか)。「体」は昔、 骨豊 と書いた(うまい)。ずっと便利になった。ところが、君が代や日の丸を強制する反民主主義勢力が、いろいろ戦前の体制に戻す運動の一環として、名前に関しては、旧字の使用を認めた。そのインボーに安易に乗っかった人が自分も困り、まわりも困らせているのです。

一方では変な横文字を使っている。ハローワークとかね。何のことかわからん。職業安定所でいいじゃないか。テクノスクール、なんやそれ、職業訓練所のほうがずっと意味がわかりやすい。JP(郵便局)はまだいい。JR(旧国鉄)やJA(農協)にあわせている。システマチックな思考が感じられる。それでも前の名前のほうが千倍いい。

たしか池田宣正(いけだのぶまさ、南洋一郎)は本名池田宜政(いけだ よしまさ)だったんだけど、宜が宣とまちがわれやすいので、いっそ宣正にしたのではなかったですか。わかりやすいほうがいいです。これが結論です。

Posted by: 小言幸兵衛真吾 | December 08, 2007 03:24 AM

フォントを大きくしてくださってありがとうございます。しかし「篦」と「箆」はその大きさでも未だ見分け辛いのです。
はてなの場合単語の途中にタグを入れるとキーワードリンクされなくなります。検索エンジンでblogのサイト内検索する場合どうなるのか私には判りません。
邊と邉、大連立だぁ

Posted by: 赤木大介(akakiTaisqe) | December 08, 2007 10:32 AM

私は長い間(約40年間)、巻という漢字をまちがって書いていました。この字は一番下に己という字を書きますが、わたしは犯という字のつくりのほうを書いていました。そのほうが巻いた感じがするので、それでよいと思っていました。あるとき、子供の一人に「おとうさんはまちがっている。」といわれました。「おとうさんにまちがって教わったので、学校で直された。」と。

私が40年以上間違いに気づかなかったのは、私の字で問題なく通じていたからです。人間の判断力には融通性があるのです。

葛飾区の「とらや」へだんごの注文を出すとき、漢字がどちらであっても問題なく届くでしょう。「かつしか区」と書いても届く、問題の部分に乙とかピとか△とか書いても問題なく届くと思います。ポスターとか印刷物はまずいですが。

ようするにコンピュータが融通性がないのが問題で、人間はよくまちがうのだから、人間がまちがっても、コンピュータが判断できるようにすればよい。英語のつづりを間違えると、ひょっとしてこれでは?と聞いてくれます。漢字でも近い将来それができるでしょう。私の生きているうちに。

Posted by: 小言幸兵衛真吾 | December 08, 2007 07:09 PM

異体字・俗字を調べ始めたら切りがありませんよ。

中文書籍をあつかっている書店のサイトに行って「語言学」あたりで検索してみれば、関連する字典、辞典、事典、詞典のたぐいがどっと出てくるのではないでしょうか。

小学や仏典の研究の迷路に落ちたら、一生娑婆に戻ってこれないかもしれません。

とっかかりにすぎませんが、『漢語大詞典』とか『諸橋大漢和辞典』などで調べてみるのが良いのではないでしょうか。

仏典系では『龍龕手鑑(「手鏡」とも書く)』に就くのが異体字調べの出発点でしょうか。

白川静の辞書なんかも読み物としては面白いかもしれません。

Posted by: 留公 | December 09, 2007 02:55 AM

>私は長い間(約40年間)、巻という漢字をまちがって書いていました。この字は一番下に己という字を書きますが、わたしは犯という字のつくりのほうを書いていました。
「卷」は「巻」の正しい字體ですよ。間違つてないです。

漢字の簡略化は戰前の體制下で主張され、それがたまたま敗戰のどさくさ紛れに實施されたもので、決して民主的な事ではありません。
戰後の國字改革を推進した人が戰中、植民地人の同化政策の爲に國字の簡略化や假名遣の表音化を主張した論文を發表し、積極的に軍に働きかけてゐた事實があります。

もともと「從來の日本語は難し過ぎて機械的な處理が出來ないから不便である」と云ふ發想の人が、國字の簡略化を言出しました。將來は漢字を全廢する積りだつたのですね、それで略字化も方針が一定しない、出たら目な事になつてゐるのです。どうせ無くなるものだからと好い加減な文字の體系をでつち上げて、「新しい漢字は簡單です」と宣傳した訣です。それで今になつて十分PCで漢字が扱へるやうになつたにもかかはらず、文字の體系がぐちやぐちやになつてゐるのですが、惡いのは何う考へても「新しい漢字」を作つた方です。昔ながらの漢字の體系が保存されてゐれば、今の文字コードはもつとすつきりした形になつてゐた筈です。

Posted by: 野嵜 | December 19, 2007 09:08 PM

「箆棒な人々」を読んで、久しぶりにこの項に来ました。

「箆棒な人々」では石原剛人の項がたいへん面白く、なつかしかったです。

>「卷」は「巻」の正しい字體ですよ。間違つてないです。

よよよっ。そうでしたか。野嵜 さま、ありがとうございます。息子に言ってやります。昭和37年発行の角川漢和辞典を見ますと、巻(卷)となっていました。卷は旧字体で下の部分は人がからだを曲げている象形、とありました。

私は新字体で習ったのでしょうが、間違って憶えたのが、旧字体と偶然一致したのでしょうか。

>もともと「從來の日本語は難し過ぎて機械的な處理が出來ないから不便である」と云ふ發想の人が、國字の簡略化を言出しました。將來は漢字を全廢する積りだつたのですね、それで略字化も方針が一定しない、出たら目な事になつてゐるのです。

今度は機械的な処理ができるようになったので、旧字体もありにしょう、ということでしょうか。

私たちの世代は新字体で習ったので、脳の奥深く刷りこまれてしまって、新字体を批判できません。私たちの知らないところで、「旧字体もあり」ということが、いつのまにか決まってしまっていることに、いらだっているのです。

(このごろ、「匂い」を「臭い」と書く人が多く、かぐわしいものか悪臭かいちいち引っかかって、いらだっています。)

志賀直哉先生も「ローマ字にしょう」と言っていたくらいなので、当時の日本人は全く自信を失っておかしくなっていたのでしょう。(ローマ字になっていたら志賀文学は破滅です。)国語改革も批判すべきところもあるのでしょう。この機会に福田恒存先生を紐解いてみます。

私は旧字体も旧かなづかいも読むだけなら、抵抗なく読めます。三島由紀夫も、丸谷才一も、あまり意識せずに読んでおります。しかし書けません。

渡邊さんが「渡辺さん」とわたくしが書くのをゆるしてくださったら、ご本人が「渡邊」と書かれることには文句はございません。

Posted by: 高橋しんご正彦 | May 03, 2008 10:31 AM

らんぷの本からも「石原豪人」が出ていますが、この中の竹熊健太郎先生のコメントも興味深かった。この挿絵画家の制作の秘密がわかったような気がしました。

Posted by: しんご | March 27, 2010 11:12 AM

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