タンタン完結!
2007年末、ついにエルジェの「タンタン」シリーズ日本語版、最後の二冊が刊行されました。
『タンタンの冒険旅行23 タンタンとピカロたち』(2007年福音館書店、1600円+税、amazon、
bk1)と『タンタンの冒険旅行24 タンタンとアルファアート』(2007年福音館書店、1600円+税、amazon
、
bk1)が二冊同時発売。これで日本語版は全24巻で完結しました。
1983年にエルジェが亡くなり、その直後日本で福音館書店版「タンタンの冒険旅行」シリーズの刊行が開始されてから、実に24年。
主婦の友社が「ぼうけんタンタン」というシリーズ名で、『ブラック島探検』『ふしぎな大隕石』『ユニコン号の秘密』の三冊を刊行したのは、さらに昔の1968年。当時初めてタンタンを手にしたわたしは、なんと40年も待って、やっとタンタンの全貌に接することができました。
って、ほんとは待ちきれなくて、すでに英語版やフランス語版でそろえちゃってるんですけどね。
福音館書店版も順調に刊行されたわけではありません。1999年から2003年まで、刊行に四年も間があいたこともあります。
しかし2005年にはモノクロの『タンタンソビエトへ』が刊行されてびっくり。本年2007年のはじめには、最近イギリスやベルギーで植民地主義であると問題になった、あの『タンタンのコンゴ探検』日本語版も刊行されました。
そして、ついに今回の二冊で堂々の完結。なんとかエルジェ生誕100年である今年のうちに出版しようと、福音館書店、がんばったのじゃないかしら。
ビーケーワンのサイトには、“ニッカーボッカー・スタイルもさっそうと、「タンタンの冒険旅行」ついに完結!”と書いてありますが、なーにをねぼけてるんでしょうね。『タンタンとピカロたち』の書影をよく見ていただくとわかりますが、1976年に描かれたこの最終作で、タンタンはおなじみのニッカボッカから茶色のジーンズにはきかえているのですよ。
このタンタンのコスチューム変更は、当時世界じゅうで大きな話題になった、というのをかつて日本の新聞記事で読んだことがあります。
そして『タンタンとアルファアート』は描かれることのなかった構想段階の作品で、この本にまとめられているのは未完成の草稿、いわゆるネームです。これが日本語訳で読める日がくるとは。よほどのファン以外は買わないでしょうけど。
最近日本でも出版されたステファヌ・ウエ/マルセル・プルースト『失われた時を求めて』を読んだとき、絵がまるきりタンタンであるのに驚きました。なんせ登場人物の目が「点」で表現されてましたからねー。タンタンはもっとも古い「BD」のひとつですが、今もBDのお手本として機能しているようです。
すぐれたストーリーと美しい絵を持ち、古びることなく今も世界じゅうで読まれているタンタン。けっして「懐マン」としてとらえられているわけではありません。60年も前に描かれたカラー版『タンタンのコンゴ探検』が現代でも問題になるのはそのためですし、だからこそタンタンシリーズは、現代の日本人にとっても読む価値のある本なのです。
ベルギーのCASTERMAN社のタンタンも、アメリカのLITTLE, BROWN社のタンタンも、裏表紙にはタンタンシリーズの表紙イラストをずらっと並べるデザインでした。
日本の福音館書店版は、これまでそういうデザインをしてきませんでしたが、最終巻『タンタンとアルファアート』の裏表紙には誇らしげに、「ソビエト」「コンゴ」「アルファアート」を含めた24冊の日本語版表紙イラストが並んでいます。
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