本気出せよ
わたしのマンガの読み方というのは、著者の意図や背景を探るとか、構造を考えるとか、そっち方面であることが多くて、自分の生活や心情に引きつけて読むことは、実はめったにしません。こういう読み方は、心で読むんじゃなくてアタマで読んでるわけで、あまりおもしろそうじゃないように思われるかもしれませんが、それなりに楽しいんですよ。
ところが、ひさびさにタイトルだけでずきーんと胸にくる作品がありました。青野春秋『俺はまだ本気出してないだけ』1巻(2007年小学館、590円+税、amazon、bk1)。
主人公は40歳をこえた男性。自分の父親、高校生の娘と同居の三人暮らし。妻がどうなったかは不明です。会社をやめてプーをしてましたが、突然マンガ家になろうと決心し、ハンバーガー店でバイトしながら、出版社にマンガ持ち込みを続けることになります。
このマンガではいい年をしたオヤジがこんなことを言うわけです。「まだ本気出してないだけ」 ああ、この言葉を見てると身もだえてしまいます。オレがね、ちょっと本気出すとこんなもんじゃないよ、すごいんだよ。これはねー、周りに対するイイワケじゃなくて、自分に対するイイワケなんですよ。自分をだましてるの。こんなこと言うやつに限って、一生このイイワケを言い続けることになります。って、これはわたしだ。
やる気があるんだかないんだか、という主人公を見てますと、何となく自分のようにも思えてきて、意味もなく腹が立ってきます。この後、主人公に成功してもらいたいという気もちょっとはするのですが、いや、やっぱそんなんじゃあかんやろ、こんなダメ野郎はいつまでもダメでいてしまえっ。ダメダメな主人公のわりにけっこうがんばってるじゃんという、いい話系に持っていくのは、おっちゃん許しませんっ。
とまあ冷静になれず、アンビバレントな気分にひたれるマンガ。すごく気になるのは、わたしがケッコウな年齢だからなんでしょう。
絵はすかすかで、ページ数のわりにエピソードも少なく、実にものたりない内容です。しかし、そこがまた「まだ本気出してないだけ」感が充満してます。つまり「まだ本気出してない」主人公を描く「まだ本気出してない」マンガ、というメタ構造、だったりして。
著者はいくつなんだろうなあ。意外とまだ若いような気もするんですが。
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Comments
痛すぎます・・・
漫棚さんの紹介文と題名、表紙の絵柄を見ただけで痛すぎる。
ひょっとしたら今年一番心に突き刺さる一作になるかも?でも怖くて手に取れないかもしれません。
とりあえず書店に行って買う勇気があるかどうか試してみます。
40台半ばオヤジより
Posted by: 赤ガエル | November 03, 2007 10:28 PM