『ザ・ワールド・イズ・マイン』と『度胸星』
未完の名作と名高い、山田芳裕『度胸星』1巻(2007年講談社、1143円+税、amazon、
bk1)が復刊。めでたいことです。
SF方面でも評価されていた作品ですが、2000年の末、突然の連載中止。当時の連載誌、「週刊ヤングサンデー」の編集長交代が影響したと言われています。
いっぽう、昨日再開なった「BSマンガ夜話」初日でとりあげられていた、新井英樹『ザ・ワールド・イズ・マイン』も、同時期にヤングサンデーに連載されていました。ザワールドイズマインの完結が2001年15号。これも最後のほうは超特急の展開でしたから、編集部の意向があったのでしょう。
それでも、ザワールドイズマインのオチのつけかたは、作者が考えたとおりだったようです。「真説」が出版されたときも、大きな変更はありませんでしたし。
昨日のマンガ夜話では、大月隆寛がよくぞフロシキをたたんだ、という意見。いしかわじゅんと岡田斗司夫があのラストはアカンやろ、と言い、ゲストの石井正則は連載マンガだからあれでオッケーであると。
今回わたしは、石井さんと同意見。
連載途中で評価されてしまう、日本マンガの特殊事情があらわれてますね。マンガが雑誌に連載され、読者もぶつ切りのそれを週あるいは月に少しずつ読んでいくという日本の習慣の、功でもあり罪でもある部分です。
壮大な構想で開始された連載も、人気が出なければあっというまに終了。一部で評価されてても、大ヒット作品でもない限り編集部による打ち切りは常にありえます。ラストに至って初めて評価を受ける現代の小説や映画ではこういうことはありません。連載マンガにとって、ラストシーンはどうでもいいもの、とも言えます。
その意味では、『度胸星』は不幸な作品、『ザ・ワールド・イズ・マイン』は最終回にたどりつけたのだから、それだけで幸せな作品、ということになるでしょう。
作者も読者も美しいラストシーンを望んでいます。長く続いてきちんと終わることをみんな夢見ます。しかし美しいラストシーンは、最大の盛り上がりのなか=人気絶頂のとき、終了しなきゃいけないわけですから、雑誌連載ではいかに至難なことか。
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Comments
いや全くです>謝辞が皮肉に満ちて
原作者の佐藤大輔さんは、どんなパーソナリティーなんでしょうね?
Posted by: ジャズ大名 | December 04, 2007 01:08 PM
最終巻の巻末に書かれてる、原作者に対する謝辞が皮肉に満ちてて、かなりコワかったです。
Posted by: 漫棚通信 | November 30, 2007 03:45 PM
悲しい最終回ということで、「皇国の守護者」について是非言及をば。
Posted by: ジャズ大名 | November 30, 2007 01:21 PM