正々堂々『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』
紙屋高雪『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(2007年築地書館、1800円+税、amazon、bk1)読みました。
ネット上や紙媒体で精力的にマンガ批評を発表している、ご存じ「紙屋研究所」所長、紙屋氏の処女出版です。おめでとうございます。まえがきにウチのブログの名が出てきて、ちょっと驚きました。
タイトルで「オタクコミュニスト」と名のっているように、著者は自身の立ち位置を明らかにしたうえで、マンガ「に」社会を読み取る、マンガ「で」社会を語る、自分の生活や心情、政治信条にひきよせてマンガ「を」語ります。
著者は、真正面から堂々と「自分語り」をしています。最近、批判されることも多い自分語りという手法ですが、著者にとって自己と社会は常につながっているものですから、自分語り=社会を語ること。この姿勢は一貫しています。
ひるがえってわたし自身はこの手法をほとんどとりません。マンガについて書くとき、「○○買った、読んだ、おもしろかった、オススメ」だけじゃあまり意味がない、そこから一歩踏み出すのがなかなか難しいのですが、その結果、ウチのブログでは些末な知識やウンチクを書くほうにシフトしています。感想もはっきりとは書かずに、変化球で逃げてるわけですな。
その点、紙屋研究所では作品評や感想から逃げることなく直球で書かれていて、いつも感心して読んでます。あれはわたしにはできない。
本書はネットなどに書かれたものの再録ですが、一部改稿されてます。わたしがいちばん感心したのは、現代の貧乏とは何かを書いた『闇金ウシジマくん』評ですね。ネットにアップされた文章の完成度がすでに高いので、ほとんど修正されてません。対して『最終兵器彼女』評などは、ラストが書き直されて、ずいぶんわかりやすくなりました。
わたしとは扱うマンガも語り方もずいぶん違いますが、いろいろ刺激される部分が多い本でした。
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