『アルカサル』完結
青池保子『アルカサル 王城』13巻(2007年秋田書店、571円+税、amazon、bk1)が発売されました。
中世のスペイン国王、ペドロ一世の生涯を描くというこの壮大な物語、掲載誌「別冊プリンセス」の休刊により、お話も長らく中断されていましたが、この13巻でついに完結。前の12巻が1994年の発売ですから、13年ぶりかあ。
前巻12巻は、主人公と異母兄との戦争、その真っ最中のいいところで巻が終わってました。ページの都合で以下続刊、と書かれたまま、それっきり続きは刊行されず。
今回13年ぶりの13巻を読みますと、当時の連載では雑誌休刊までの間に、主人公が戦争に勝ち人生の絶頂期を迎えるところまで描かれてて、一応それなりに完結してたことがわかりました。
ただし、著者はずいぶん不満だったと思います。読者としても戦争の結果がどうなったのかわからんし、編集者もそこまでの残った88ページだけで単行本を出すわけにもいかないし、三者とも不完全燃焼。
結末部は、200ページ前後編を2007年の春夏にわけてイッキに雑誌掲載されました。主人公、ドン・ペドロの死と、その後ドン・ペドロの子どもたちの運命やスペインの政局まできっちり描いて、堂々の完結です。
著者の言葉によりますと、「作家に定年はないといわれますが生物としの老朽化は逃れようがありません」「重厚長大な歴史物を描ける時間も体力も先が見えてきた昨今もはや遅滞はなりません」とのことです。著者も1948年生まれで60歳目前。この冷静な自己や状況の分析はりっぱ。青池保子、えらいなあ。
この時期に長らく中断されていた作品を完結させることができたのは、作品の人気、編集者の存在、著者の気力・体力、いろんなことがいいタイミングで一致したのでしょう。まれなケースで、しあわせな作品です。
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