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August 04, 2007

「世界のコミック大研究。」

 日本のマンガの歴史を書いた本は、先ごろ出版された清水勲『年表日本漫画史』(2007年臨川書店)などを含めて、最近もいろいろとあるわけですが、日本以外の国、世界のマンガ史が日本語で読める本は、ほとんどありません。

 って断言しちゃうとまずいのですが、一冊で歴史を過不足なく概観できる本といえば、須山計一『漫画博物誌 世界編』(1972年番町書房)、ジェラール・ブランシャール『劇画の歴史』(1974年河出書房新社)ぐらいしか思いうかびません。でも二冊とも、古書としてもあまり出回ってないようですので、図書館で読むしかない本です。もしほかにありましたら、ぜひとも教えていただきたいです。

 あとはもう洋書に頼るしかなくて、この点をとっても日本のマンガ研究がいかに遅れてるかの証拠みたいなものです。いやわたしは別に研究者でも何でもないので、だからどうだというわけではないのですが、日本マンガがあまりにおもしろいものだから日本人はそっちにばっかり目が向いてるし、英語文献が読めない(←わたしもそうなのですが)、読もうとしない、という文化鎖国みたいなところがありますからねえ。日本がマンガ・アニメ立国をめざすなら、世界の状況も知っておきたいでしょ。

 で、世界のマンガ史を知るのに、ケッコウな雑誌が出ました。阪急コミュニケーションズが発行している月二回刊の雑誌『pen』2007年8/15号(税込500円、amazon)です。

 雑誌のサイトはこちら

 今回の特集が『「Manga」の原点を探して、世界のコミック大研究。』で、19世紀から現在までの欧米のマンガの歴史が簡単にわかるように書かれてます。しかもカラーページはきれいですし、500円とお安い値段で、オススメ。

 いい特集なので、ちょっとだけ不満を。

 コママンガの祖と言われる19世紀のスイス人、「Rodolphe Töpffer」という人物がいます。彼についてわたしが以前に書いた記事はコレ

 このひとの名前、ウムラウトと「pf」と「er」、と発音しにくいのがそろってるので、日本語ではこれまでいろいろと表記されてきました。

 ロドルフ・テプフェール、ロドルフ・テプファー、ルドルフ・テプフェル、ルドルフ・テファー、ロドルフ・トプファー。ああややこしい。

 でもって、今回この雑誌でさらに新しい表記が。ロドルフ・トッフェール。

 ああもう、たのむから新しい読み方を発明しないでくださいよー。

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Comments

この特集、かなり考えられたコンセプトでつくられたよい特集なのですが、おっしゃるような資料として役に立つかというとけっこう疑問です(まあ、ブランシャールの本も須山氏の本もその点ではかなりキツイものだったりしますが)。とりあえず図版の出典情報とテキストが準拠した元資料を記述していないのは「資料としては」失格でしょう。もちろん純粋な雑誌記事として読むだけならこれはたいした欠点ではありませんし、字数などを考えれば不可抗力だろうとも思いますが、私にとっては資料としてはあまり役に立ちません。テキストの元ネタのいくつかは推測できなくもありませんが、いい特集だけど資料には使えない、というのが個人的な評価です。

Posted by: boxman | August 05, 2007 at 01:02 AM

「pen」8/15号、さっそく買ってみます。ありがとうございました。

>テキストの元ネタのいくつかは推測できなくもありませんが、いい特集だけど資料には使えない、というのが個人的な評価です。

いっそ、漫棚通信さん、資料をぼつぼつ集めて、このブログで、世界コミック史をやられたらどうですか。あるいは、boxmanさんや、その他のこのサイトの読者で協力してやればできるかもしれません。

文献をリストアップすることからはじめたら。パクリは気にせずに。

でも清水勲さんやアラマタさんがすでにとりかかっているかもしれません。ライフワークとしてね。

岩波文庫にあるビゴーの挿絵集(正確な書名はわすれましたが)は楽しいですね。最近岩波文庫で、イギリスの瓦版のこっけいな挿絵の本が出ました。それからこのブログでもとりあげられたかもしれませんが、アラマタさんのアメコミの本(書名失念)も、資料の厚みを感じさせます。アラマタさんの本はどれも資料の集め方がマニアックで物凄いんで、食べる前からゲップが出てしまう、ぎっちり詰まった弁当のような気がします。

サブカルチャーって、肩がこらないけど、あまり沢山読むと、お菓子を食べ過ぎたみたいに空しくなるときがあるんで、ちょっとためになるとか、教養になると思わせてくれたほうが、気が楽ですね。

Posted by: しんご | August 05, 2007 at 08:17 AM

連続書き込みごめんなさい。

漫画データサイト http://www.kitanet.ne.jp/~akitanet/index_j.html
というのがありました。世の中は広いです。

Posted by: しんご | August 05, 2007 at 09:16 AM

私も欧州のコミック・アートの「バンド・デシネ」等、読んでみたいと思う
海外作品群は多いのですが、英語ですら苦手な私にとって海外書籍
売場等で欧州言語のそれらを目にしても敷居が高すぎ、まだまだ
一般的にこちらでは楽しめる状況には無い様子ですよね。
特にあちらの最近のものはジャパニメーション等の影響でちょっと面白
いことになっているといった話も聞きます。
欧州に向けてのジャパニーズコミックの輸出が多い中、もう少し日本
でも海外作品もメジャータイトル等から取り扱ってくれないものかな
と期待しています。そうした市場が太くなる事で、徐々に研究本など
コミック史の書籍の出版にも後押しされていくような気がします。
現状、日本で雑誌等が海外コミックの特集を取り上げた際は、まだま
だ紹介が主体で研究資料として記述を残そうというスタンスは2の次
といった状態みたいですね

Posted by: 珈琲党 | August 05, 2007 at 01:22 PM

ちなみに須山本もブランシャール本も日本の古本屋(http://www.kosho.or.jp/servlet/top)で検索かけたらヒットしました。しかし、ブランシャールは高い。古書市で5000円くらいで買えたのはラッキーだったんだな。

Posted by: boxman | August 06, 2007 at 12:31 AM

あらら、『劇画の歴史』も『漫画博物誌』もけっこう出回ってる本だったのですね。「スーパー源氏」のほうで検索したらあんまりヒットしなかったんですよ。失礼しました。

Posted by: 漫棚通信 | August 06, 2007 at 08:49 AM

>失礼しました。
べつにクサしたつもりではないので、お気になさらぬよう願います。
だいたい古本なんてあるときゃあるしないときはないもんじゃないですか?
ちょっとおかしかったのですが、2、3カ月まえに9000円くらいのいい値段がアマゾンのマーケットプレイスでついていたマクラウドの『マンガ学』日本版、どっかの倉庫で眠っていた在庫が出てきたらしく、昨日見たらアマゾンの新刊で買えるようになっていました(w 何冊あるのか知りませんが、復刊希望をしていた方はいまがチャンスです。

Posted by: boxman | August 06, 2007 at 09:53 PM

日本語表記の微妙な作家といえば、アメコミの元祖とされる「イエロー・キッド」を描いたRichard F. Outcaultもそうですね。「アウトコールト」という表記が一般的ですが、本当にそうなのか海外へ行ったときにいろいろ聞いてみたんですが、ネイティブの人も「ウーコー」とか「ウーコット」とか、あまり自信がなさそうな読み方をしてました。さすがに故人には確認する術もないですし。

Posted by: kingink | August 10, 2007 at 08:46 AM

そういや英文ながら世界の漫画家を簡単な作家紹介付きで紹介したサイトがありました。
アジアからアメリカから欧州からそれこそ世界中の漫画家を広く浅く。
それのあまりの広げ振りに英語圏すげーと見入った覚えがあります。

多分あまりにも有名らしいので既に知っているとは思いますが、
日本でこれが出来ないのはなんともいえず悲しいなと思ったことも覚えています。

Posted by: そういや | August 13, 2007 at 12:20 PM

Pen 2007年8月15日号「世界のコミック大研究」を買いました。わたしにはけっこう参考になりました。Hal Foster の Tarzan
が欲しくなりました。

Posted by: しんご | August 31, 2007 at 05:01 AM

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