マンガのお値段について
マンガショップの復刻マンガは、判型もページ数もほぼ同じ。一律1800円+税という値段です。『ロボット三等兵』全三巻を一気に買おうとすると、5670円が財布から出て行くわけでして、なかなかにキビシイものがあります。
ただし一冊が330から360ページと最近の新書版単行本より多い量。そんなに部数が出る作品でもないでしょうし、こういう価格設定になるのは、それなりに納得できます。
長らく入手困難だったものが、このお値段でほぼ完全版として手にはいるのですから、マンガショップのシリーズを買う人のほとんどは、むしろ安い! と思って買ってるのじゃないでしょうか。それでもこの値段が、一冊ごとにあと数百円高くなったとすると、買おうかどうしようか、悩む時間が長くなりそうです。
マンガというものは基本的に、なくったってなくったっていいものです。しかも「印刷」によって複製や大量生産が可能な消費財であり、かつ芸術品である側面も持っている。その値段や価値は、もちろん市場原理によって決定されているのですが、購買者自身がそれぞれ自分の価値感で、作品ごとに高いか安いかを判断しています。
現在日本では、小学館なら、少年サンデーコミックスやフラワーコミックスが390円+税。ビッグコミックスやヤングサンデーコミックスが505円+税。
集英社も、ジャンプコミックスやりぼんマスコットコミックス、マーガレットコミックスが小学館と同じ390円+税。クイーンズコミックスが少し高くて400円+税。ヤングジャンプコミックスもおむね505円+税。
講談社は全体に少し高くて、少年マガジンKCや別冊フレンドKCが400円+税。なかよしKCやキスKCは390円+税と、微妙にお安くなってます。ヤンマガKCスペシャルは533円+税と、これも小学館系よりちょっと高め。
実感として日本の新刊マンガは安いと思います。ほとんどが雑誌掲載作品の二次使用であるという理由もあります。
しかし、雑誌そのものの価格が安く、かつ雑誌掲載時のマンガ原稿料が低く抑えられている現状で、さらに雑誌が売れなくなってるそうですから、この単行本の価格も将来どうなっていくのか不明です。安価なマンガに慣れた日本人読者は、価格が上昇したとき、どの程度までなら買ってくれるのか、まだまだよくわかっていませんし。
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鈴木志保の旧作が、再編集されて新しく出版されてます。『船を建てる』上巻(2007年秋田書店、1100円+税、amazon、bk1)。
これも長らく入手困難だった作品です。これがあなた、一冊412ページでもってこの値段ですから、すごく安いという感覚があります。
一昨年末に発売された鈴木志保の『ヘブン…』(2006年秋田書店、実際の発売は2005年末、amazon、bk1)は、194ページで670円+税でした。口絵にカラーページが1枚。
で、新作の『ちむちむ☆パレード』(2007年秋田書店、amazon、bk1)になりますと、同じ194ページで900円+税です。
判型も『ヘブン…』と同じで、カラーページも1枚といっしょ。とくに豪華なつくりでもありません。
内容のほうは、いつもの短編連作じゃなくて、長編でもなくて、ページ数の多い中編といった感じ。実は『ヘブン…』は雑誌連載作品でしたが、『ちむちむ☆パレード』、描き下ろし単行本です。くりかえし登場する同じ構図やコピー、思いきり大きなタイポグラフィなど、短編や連載ではできない表現が選択されています。いつもの絵本のような趣が、より強くあらわれています。
『ヘブン…』と『ちむちむ☆パレード』の価格差は、おそらく、後者が描き下ろしであることによるのでしょう。描き下ろし作品は雑誌掲載時の原稿料が発生しないわけですから、当然高価になってしかるべし。
『ちむちむ☆パレード』では、鈴木志保の固定ファンならこの価格なら買うだろうという、販売におけるある種の実験がされてるのじゃないかと思うのですが、どんなもんでしょ。
Comments
鈴木志保。
懐かしいですね。
でも、ぼくは一冊しか読まなかった…。
これは買いです。
Posted by: 長谷邦夫 | August 21, 2007 11:05 PM