好みというものは
今、わが家での一番人気は、施川ユウキ『サナギさん』4巻(2007年秋田書店、390円+税、amazon、bk1)であります。中学生女子のサナギさんとその友達が、ただただ言葉遊びをしまくる、というマンガ。マンガで描かれた漫才、みたいなものですね。
これがウチの中学生(♀)にオオウケ。何度もくりかえし読んで、けらけらと声を出して笑っているのを見ますと、うーむこれぞマンガの正しい受け入れられかただなあと感心します。
ところが小学生に言わせると、確かにおもしろいけど、すっごく好きなわけではない、と。おそらく、小学生にはわかんないギャグがあるのじゃないか。世代の差なのか個人の受け取り方の違いなのか、好みというのは違うものです。
わたしはどうかといいますと、おもしろいし、作者は言葉を扱わせるとたいした才能の持ち主だとは思うのですが、さすがに声に出して笑うほどではありません。同じパターンのくりかえしに、ちょっと飽きてきたところではあります。
ただしこのマンガ、わたしのようなオッサン読者に合わせて描かれてるわけではけっしてないのですから、中学生のほうが正しい読み手なのでしょう。
で、さらに年上のオバサン読者が大声出して笑ってるマンガが、ケイケイ『ワンダフルライフ?』1巻(2007年講談社、667円+税、amazon、bk1)であります。
主人公は28歳独身OL、彼氏なし。彼女と友人たちのまったく劇的じゃない日常、というより心情を描いた作品。こっちもひたすら友人との会話でお話が進行するマンガです。
たとえば、彼氏いない歴2年の主人公に、彼氏ができた。でも3回デートしただけで、ふられそうな気がする。話しかけてもシラーッとしてるし、メールの返事も送ってこない。黙ってふられるを待つのはくやしいから、自分からふってやろうかしら。しかし、もったいないことに彼は「正社員」といういい条件。さあどうしよう、という相談が友人に持ちかけられ、ふたりの会話が延々と続くわけです。会話劇ですな。
登場人物の目は点で表現され、鼻なし口なしの顔です。すぐれているのはリアルな表現のダイアログ。これを読んでオバサン読者が笑う笑う。まず、登場人物の心情に共感できるらしいです。
さて、オッサン読者であるわたしは、このマンガがおもしろいかといいますと、もちろんおもしろい。でも声を出してまでは笑いません。それを言うと、アンタはわかっとらんっ、と言われてしまうのですが、そりゃわたしは28歳独身OLであったことなど生涯一度もないですからね。
主人公の悩みが男女問わず普遍性を持つものではないようですし、男性読者にとってこれが迫ってはこないのはしょうがないでしょう。このマンガも読み手を選ぶのかもしれません。
で、オッサンのわたしが今、これはよかったと思ってるのが、湯浅ヒトシ『耳かきお蝶』3巻(2007年双葉社、600円+税、amazon、bk1)。
耳かきを商売にしてる女性を主人公にした時代劇です。絵はうまいし、のほほんとした雰囲気はいいし、なんつってもキャラクターがたいへんよろしい。
今ならこれがオッサンのイチオシなのですが、これがわが家では、まず家族の手にとってもらえないというところが大きな問題なのですね。
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