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June 27, 2007

『ライアーゲーム』敗者復活戦はちょっとヘンだ

 引き続き、甲斐谷忍『ライアーゲーム』(2005年~2007年集英社、4巻まで、505円+税)のお話。

 3巻で語られているのが敗者復活戦です。この架空ゲームは、きっとずいぶん時間をかけて考えられたものなのでしょうが、残念ながらこれ、奇妙なゲームになってしまいました。

     ◆

 敗者復活戦は名付けて「リストラゲーム」。参加者は9人。敗者はひとりだけで、8人が勝ち抜けます。参加者どうしの投票で得票数がいちばん少なかった者が負けというルール。

 これとは別に、参加者には開催者から1億円分の小切手が渡され、参加者間のやりとりに使用します。最終的に参加者は場代の1億円を開催者に返却して終了。

 まず、何がヘンか。オープニングで開催者がこんな事を宣言しちゃったのがヘン。

「敗者は場に1億を置いていってもらいます」
「その1億を8人の勝者で分ける」
「それが賞金です」

 計算すると、ひとり1250万円の賞金になります。主催者はその後、

「1250万円の賞金」

 と、二回もくり返して言ってますし、参加者もそのつもりで行動することになります。

 よく考えるとこれがヘンな設定の第一でした。

 次に、このゲームの勝敗を最終的な持ち金の金額ではなく、それとはまったく関係ない、票のやりとりで勝敗が決まることにしちゃったこと。これもちょっとアレでした。

 以下、参加者のうち、カンザキナオとキシダの名を借りてご説明しましょう。

     ◆

 第1例:カンザキナオがキシダから1億円をゲット。他の人間は金のやりとりをしない。そしてキシダが負けて終了。

 この場合、キシダは場代を払えず1億の借金となり、負け抜けとなります。さて、そのキシダの払った1億の場代はどこへ行くのか。主催者の言うように「8人の勝者で分ける」はずもなく、当然これはカンザキナオの儲けになっています。

 じゃあ、ひとりあたま1250万円の勝ち抜け賞金は誰が払ってくれるのか。主催者が払うしかありません。

     ◆

 第2例:カンザキナオがキシダから1億円をゲット。他の人間は金のやりとりをしない。そしてカンザキナオが負けて終了。

 ゲットした金額の多寡と無関係に、投票で勝ち負けが決まるのですから、こういうこともありえます。

 カンザキナオは手もとに2億円持っていて、1億の場代を払って負け抜け。負けたのに1億円も儲かっちゃって、なんかヘンだけどこれはこれで悪くない結果です。

 かわいそうなのは、キシダ。カンザキナオに1億とられ、賞金の1250万円をもらっても8750万円の借金。さらに三回戦に進むのはもともと自分の希望だったとはいえ、借金は増えるばかりですしねえ。

     ◆

 第3例:参加者同士では金のやりとりはまったくない。カンザキナオが投票で負けて終了。

 この場合、全員が1億円の小切手をそのまま主催者に返して終了です。カンザキナオは負け抜けですが、儲けも損もなし。

 他の勝ち抜け8人は1250万円ずつの賞金を得ることになってますが、もちろんこれを出してくれるのは主催者以外にはありえません。

     ◆

 第4例:カンザキナオが、全員から1億円小切手をかっぱいで、手もとに9億円持っている。投票でカンザキナオが負けて終了。

 これだと、カンザキナオは場代の1億円を払っても、手もとに8億円残ります。大儲けして、しかも負け抜けできる。残りの8人はそれぞれ8750万円の借金を背負って三回戦に進出することになります。

     ◆

 現在自分が必要とする金額が8億円以上でないかぎり、第4例がいちばんお得な選択肢でしょう。つまり、ほとんどの参加者がこの敗者復活戦でめざすべきは、できるだけの多額の金を稼いで負け抜けすること、ということになります。

 ただし、カンザキナオに限っていうと、本来彼女が敗者復活戦にエントリーしたのは、賞金を得て秋山をドロップアウトさせるためだったのですから、8億円では不足です。彼女だけは、できるだけ多くの金を稼いだうえ、勝ち抜けすることが必要になるはずですが、彼女がそこまで考えていたのかどうかよくわかりませんね。

 この「リストラゲーム」は、負けることをめざすゲーム、というより、勝つことを目的としないゲーム、というべきでしょうか。これってゲームとして成立してるのかしら。

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Comments

負けて1億払えない時は主催者への借金になるんじゃないでしょうか?ですので、キシダの例では借金は8750万円ではなく1億8750万円になると思います。

Posted by: J | June 29, 2007 12:38 PM

私はドラマとコミック両方見たのでややごっちゃになってるかもしれませんが、、、

「ほとんどの参加者がこの敗者復活戦でめざすべきは、できるだけの多額の金を稼いで負け抜けすること」
まさにおっしゃる通りじゃないですか?コミックの密輸ゲームでもそういう似たような結論に至ってましたし。
ゲームの目的は勝ち負けではなく、「借金を残さず、儲けて、かつゲームから抜けること」
ゲームとして成り立っているかどうかは別問題でしょう。このルールじゃありえなくね?とか、そういう設定に対しつっこむことがナンセンスです。それを言ってしまえばそもそも主催者ありえなくね?ってなって話が始まりませんし。
映画CUBEのように押し付けられた現実をわけも分からず傍観するのも楽しみです。(逆にそれが明かされると冷めてしまったり)

Posted by: 名無し | June 30, 2007 11:53 AM

現実世界の理屈のみでもっての「ここがおかしい」というツッコミは
空想科学○○シリーズと大差なく感じられます。
その漫画を成り立たせている、空気・世界がまずありきだと思うんですよ。
それ脇に置いといてツッコミいれだしたら、ほとんど全ての漫画は成立しなくなると思いますね。
#演出を排除したノンフィクション、ドキュメントの漫画であるとクレジットされているなら別でしょうけど・・・

Posted by: 賭博師ハイジ | June 30, 2007 02:47 PM

コメントありがとうございます。
ツッコミじゃないんですけどね。ああでもない、こうでもないと、少なくとも数日間、ライアーゲームの作者に次ぐくらいはこのゲームの事を考えてました。その時期、わたしほどこのマンガで楽しんでた人間はいなかったでしょう。このエントリはその楽しさをおすそわけするために書いたものなのです。

Posted by: 漫棚通信 | June 30, 2007 04:10 PM

私も敗者復活戦はおかしいと思っていました
特に9回戦の開票が終わった後、
なぜ神崎から票を買わなければいけないのかという点が気になります
最初のエダ・キタムラは良いとして、その他の人について

フクナガの場合、7人から500万ずつ(計3500万)を得、
さらに神崎とのカードゲームで3000万取っているから、
事務局から借りた1億を併せて16500万持っていたことになります

ここで秋山は最下位になったフクナガに8000万で票を売ったので、
残り8500万になりました
もしもこれで最下位を免れて1250万を得ても、
合計9750億で、1億を事務局に返したら250万の負債です
一方フクナガが秋山から票を買わずに負け抜けしたら、
1億払っても6500万の利益になります

フクナガが最下位で負け抜けを決めた時点で、
他の7人は票の購入をやめますから、
すでに債権が消滅していたエダ・キタムラの分を除いても、
神崎は5人に7000万ずつ(合計35000万)支払わないといけません

この時点で神崎は残金7000万で、
神崎の2回戦の賞金4375万と、
秋山の2回戦の賞金8750万を加えても、
15000万近く赤字となり、3人分は契約不履行で、
事務局から1億×3=3億のペナルティを課されることになります
となると、負債は合計45000万近くとなります

フクナガが8000万払ったとしても、
後の5人は1億で票を買うメリットはあったのでしょうか
彼らはフクナガに500万払って手持ち9500万と、
神崎に7000万の債権を持っていました

特に5人中で初めに票を買った2人の場合、
票を1億で買って最下位を抜けたら、
手持ちの6500万と賞金の1250万を得て、
事務局に1億返すことになりますから、2250万の赤字です

一方で1億払わずに最下位になれば、
神崎から7000万回収できずに手持ちは9500万となり、
事務局に1億返して500万の赤字です

さらに最後の3人の場合、
神崎はすでにフクナガから8000万を得、
エダ・キタムラから7000万ずつ、
その他2人から1億ずつ得ていますから、
手持ちの7000万と併せて、すでに49000万を持っていることになります
これで7人への負債各7000万(計49000万)の支払いは確実ですから、
3人は票を買わなくても7000万は回収できることになります

では秋山はいくらならば確実に票が売れるのかといえば、
フクナガに対しては1250万以内となります
フクナガとしてはこれを超える額で最下位を免れても、
得られるものは賞金の1250万だけですから

5人については、エダ・キタムラのジレンマと同様に、
ある程度の額を払わなければ神崎が破産し、
神崎の債権7000万が回収できません
しかし神崎の手持ち(7000万)と、
フクナガの支払額(1250万未満)を考えれば、
最大でも一人5600万を払えば良いはずです
エダ・キタムラも、同様に7000万払う必要はありません

さらに追加売却については、
最下位を免れた場合の賞金1250万以上の意味はないわけですから、
票の値段は1250万以上つけることはできません

フクナガたちはこのことに気付いていなかったのでしょうが、
もし気付いていたら秋山の作戦は崩壊することになったはずで、
つめが甘い気がしました
長文すいません

Posted by: 名無し | July 02, 2007 10:15 AM

↑の人は、なんかカンザキ以外のプレイヤーは最初から1億の負債を背負ってゲームに臨んでいることを忘れているような。
というか、そのための敗者復活戦ですし。

フクナガは、彼の票数が最下位になった時点でなんとか票を手に入れないといけません。
もしこのまま最下位のままなら、ゲーム終了と共に負債を背負い、次のゲームにも参加出来ずじまいだからです。
2回戦で背負った負債1億、今回のゲームで貸し付けられ、あとで返却する1億、ゲーム中儲けた6500万。
すべての収支はー3500万になりますよね。(←しかも、もうゲームに参加できない)

他のメンバーについても同じです。
とにかく、最下位になって収支プラスでゲームを離脱できるプレイヤーはいません。

↑のほうでゲームの目的云々の話がありますが、この敗者復活戦は、密輸ゲームのように収支プラスでかつゲームには負けて離脱する、という考え方と言うよりは、なんとかビリにならずに3回戦に進む、というほうが本質のような気がします。
少なくとも、カンザキ(アキヤマ、あるいはヨコヤ)以外のプレイヤーは、このような思考でプレイしていたかと。

難しいこともなければ、矛盾することもありません。

Posted by: ロク | December 26, 2007 08:24 PM

映画、面白かったですけど・・・純金のりんごが燃えるって・・・おかしいですよね・・・関係者も出演者も気づかなかったんでしょうか・・・

Posted by: Mero | March 09, 2010 03:12 AM

「ICチップでも埋め込んであるんだろう」ということで、シルバーのりんご(見た目)であっても真実のりんごとカウントするのだそうですけれど、誰の焼き印であるかは目視で確認しなければならないので、ここで矛盾が生じますね。何か変。

Posted by: 匿名希望 | February 13, 2011 02:46 PM

>純金のリンゴが燃えるのはおかしい
目的は金のリンゴを投票できなくすること、燃えるかどうかはどうでもいい。煙を出る何かを用意してもらったかもしれない(そうしないと誰も駆けつけない)。火の中に入ったものを取り出すことがあなたにはできますか?
>銀のリンゴか赤のリンゴかについて
銀のリンゴは本物(純銀)だから赤のリンゴに樹皮+銀+何か適当の物で十分2つの判別はできます。焼印を確認するときに、リンゴに触れないことはありえないので重さに違和感があれば
銀ではない→赤のリンゴと判断される可能性は高い。
その証拠にアキヤマはセンドウに(第12ゲームで)「お前は確かめもせず赤を投票した。馬鹿丸出しの行動だな。」と言っている。

Posted by: 名無しのマニア | November 23, 2013 03:21 PM

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