ちょっとひと休み
6月17日本日、気分転換に日帰りで京都に行ってきました。
お目当ては、京都国際マンガミュージアムで開かれた、日本マンガ学会のシンポジウム。わたしは学会員じゃないんですが、一般にも公開されてたので、京都国際マンガミュージアムの見学がてらシンポジウムに参加してきました。
昨年の11月に開館したマンガミュージアムの現在は、みんなゆかに座り込んでマンガを読んでる、というご近所のかたのマンガ喫茶状態になってるみたいです。エアコンも効いてて根性入れればかなり量のマンガが読めるはず。
今やってる特別展の「海洋堂フィギュアミュージアム展」はかなり見ごたえがありましたよ。フィギュアを眺めてるとにこにこしてしまうのは何なんでしょうね。こっちも含めれば千円の入館料でした。
京都国際マンガミュージアムは小学校の建物を改装して使用しているのですが、シンポジウムはもと講堂だと思われる多目的映像ホールで開かれました。体育館、というわけでもなく、以前は学芸会とかが開かれてたスペースなんでしょう。最近はこういうスペースは学校からなくなってますよね。
シンポジウムのテーマは事前には「世界のマンガ事情」でしたが、直前に「世界の日本マンガ事情」に変更されたようです。第一部が「ヨーロッパ(フランス、スペイン、イタリア)」、第二部が「アメリカ」、第三部が「東アジア(韓国、台湾、中国)」。
わたしは時間の都合で、第三部の途中で中座しましたが、なかなかおもしろいシンポジウムでした。パネラーはこちらのかたがた。
第一部のヨーロッパについては、フランス事情についてはこれまでもけっこう情報があったのでそれなりの知識がありましたが、スペインやイタリアについては初耳の話が多かったです。あとはドイツについても知りたかったなあ、ドイツにはTOKYOPOPドイツもあることだし。
第二部のアメリカはいちばん興味のあるところ。ライバル会社であるVizの成田兵衛氏とTOKYOPOPの松橋祥司氏が並んでるところなんか、なかなか目撃できないんじゃないかしら。ふたりとも、学会のシンポジウムのパネラーというより企業向けプレゼンを見てるよう。
TOKYOPOPは、シンポジウム参加者に自社単行本を無料で200冊配ってて、わたしがもらったのは Kaori Ozaki著『IMMORTAL RAIN』4巻、9.99ドルです。シンポジウム参加費五百円のもとがとれてしまった。こんなところでも営業してるとは。
興味深かったのは、複数の演者から日本マンガの翻訳と翻訳料の問題を指摘されたこと。今まで気づかなかった話題で、ちょっとびっくり。
フェデリコ・コルピ「現在のマンガからのイタリア語訳は1本2万円、大学一、二年生のアルバイトで誤訳ばかり」
マット・ソーン「わたしが90年代にマンガの英訳をしていたとき1ページ17ドル、これが最高」「現在、TOKYOPOPで1ページ3~5ドルだろう。これでは生活できない」「Del Reyが出版している『のだめ』の翻訳はクソです」
マット・ソーン氏によりますと、2002年にTOKYOPOPが、マンガを日本と同様に右開きにして、単行本の値段を10ドル以下にするという大改革をおこなった結果、現在アメリカでの日本マンガの隆盛につながったのは確かですが、コストダウンの結果、翻訳料にしわよせがきていると。欧米で『のだめ』がブレイクしないのは、翻訳の問題が大きいという指摘です。こりゃ日本人にはわからないよなあ。
あと、気になった話題を羅列。
・欧米のコミックが邦訳されるとき、部数は一巻3000部程度。
・フランスでは「漫符の解説本」が出版されている。
・イタリアではテレビ局開設を規制する法律がなく、1980年代には600から800のテレビ局があった。そのため、日本で1980年代までに制作されたアニメの「すべて」を5年間で放映しつくしてしまった。
・欧米で最初に翻訳された日本マンガは、イタリアでの『グレートマジンガー』。
・『キャンディ・キャンディ』はイタリアで200万部の大ヒット。このためイタリアで講談社および作者公認の続編マンガが制作された。作者はイタリア人女性で、手塚治虫のアシスタント経験者(!?)。
・『西洋骨董洋菓子店』が韓国で映画化進行中(!)。
Comments
長谷先生ごくろうさまでした。勉強になってしかもおもしろいシンポジウムでした。松山開催だったら来年も行きたいですね。
Posted by: 漫棚通信 | June 22, 2007 01:28 PM
いらっしゃっておられたんですか!!
お目にかかりたかったです。
来年は松山の某大学を予定しております。
Posted by: 長谷邦夫 | June 21, 2007 10:13 PM
そうでしたか。書影はamazonなんかが著作権をクリアしていると聞いています(自分で撮影して載せるのも可だったはず)。
Posted by: 老婆心 | June 20, 2007 11:59 AM
えー、あれは三点とも小学館が読者プレゼント用に作ったグッズです。懸賞で当たったもので、わたしの所有物です。著作権的に問題があると思われる関係者のかたがいらっしゃいましたらご一報ください。
Posted by: 漫棚通信 | June 20, 2007 10:44 AM
総本家のトップ頁の「唐沢なおき」風造形は、唐沢なおきさんに許可をもらって掲載しているのでしょうか。無断使用ではありませんよね? つまらない揚げ足取りをされないようにしたほうが賢明だと思ったので一言(無断使用なら、謝罪すべきです。削除して頬かむりでは同罪になっちまいますから)。
Posted by: 老婆心 | June 20, 2007 09:37 AM